信用されてないのね、私
「いいよっしゃあああ! 次、行ってみよおおおおおおおお!」
珍妙な声を上げ、繁華街のネオンの眩しい中をふらふらと覚束ない足取りで歩くのは、リクコとミレイの二人である。
「リクコ、あんた水しか飲んでないでしょ? 素面じゃないの」
「ノンノン。私はヒトの温もりという銘酒をいただいたのだよ。実に美味であった」
「ちょっと何言ってるか分からない」
彼女らはユキノの快復祝いでさんざどんちゃん騒ぎした後、疲れて眠りこけるユキノを置いて夜の街に繰り出していた。
実に四軒目である。
盛場といってもその雰囲気を楽しむためだけにリクコが造った区域で、店の戸を開いて中に入ると、決まって頭にコック帽を被った七号と、作務衣を着込んだマネキンのコンビがお出迎えをしてくれるのだ。
そして、マネキンの頭にはセンサーが取り付けられていて、お客の方を常に注視するように設定されている。
「まだまだ夜は始まったばかりだせぇぃミレイさんよお」
「……まったく」
街は楽しげな喧騒が各所備え付けのスピーカーから流れてきていて、通りには多彩な格好をしたマネキンがそれぞれのドラマをもって集り、贋造の街を賑わせている。
そのマネキンらの合間合間を縫うように進みながら駄弁っていると、ふとリクコがこんなことを言った。
「今度はキューちゃんとノリノリも呼んで盛大に遊びましょ」
「……あ、ああ。そうだな」
「なんだねその腑抜けた返事は? おお、そうかいミレイさんはキューちゃんが快復したのが嬉しくないってのかい。ああ〜やだやだ」
「リクコ」
先行して歩くリクコの足が少し、速まった。
「まあ、今は兄妹水入らずで楽しんでるだろうから。いくら私でも邪魔するなんて野暮なマネとてもじゃないができないね」
「リクコッ!」
ミレイの怒声に時間が止まる。ネオンのちかちかする点滅の灯りだけが、無遠慮に瞬いていた。
「本心を聞かせてくれないかしら」
「……ミレイ、私はいつも本心から喋ってるよ」
「信用されてないのね、私」
リクコはゆっくりと振り向き、ミレイを睨め付ける。先ほどとは打って変わり、冷徹で無慈悲な眼差しでミレイを見据えていた。
「それはこっちの台詞」
「リクコ……あなたはーー」
味方なの? そう言いかけてミレイは口をつぐんだ。
時宜ではない。
少なくともキューの体力が戻ってから事に当たるべきだろう。
「ねえ、一つ教えてくれない?」
リクコが言う。感情は読み取れない。
「何……かしら」
「もしさあ、ドクターを斃そう、なんて莫迦な事考えているのなら私……ミレイだろうと容赦なく、殺すよ」




