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人外少女と終末世界  作者: umt.s5
二章「ナンバーズ」
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え、ダメぇ? さいですかぁ

 満点の星空であった。

 標高の低い山々からの青い匂いの風や、小さな虫の遠慮がちに鳴く途切れ途切れの声が、自然光のみで電灯の灯りの乏しく薄暗い中を、ぼうと揺らめいては消えていくを繰り返していた。


 その只中を重い足取りで歩一歩と進む影が一つあった。


 俯き加減に背を曲げ、だらんと腕を下げて力なく左右に揺れている。


 その影は臀部の付け根辺りから後ろに細く長く伸びる尾のようなモノが垂れており、それが地面を引きずる鈍く乾いた音がこだましていた。


 畦道に毛が生えた程度の幅しかない道の両端はそれぞれ石垣と廃墟であって、その廃墟側に設置せられた電信柱に未造作に掛けられた電灯が、薄ぼんやりと光の円を足元に描いている。


 影がのそりのそり、と円の中に入って来、正体が露わになった。

 果たしてそれは十を少し過ぎたばかりの少女であった。青白い生地の患者衣を着て、サイズの合っていない大きめの紺のキャスケット帽を被っている。更に、外にも関わらず裸足で歩き回っており、土や泥で汚れていた。


 少女は円の中心まで来ると足を止め、上を仰ぎ、頼りなげに光る電灯の灯りを虚な目で以て見据え、そうして顔をしかめると帽子のつばを手に取ってより深く帽子を被った。


『キューちゃん、その帽子オキニだよね。私がサインしてしんぜようかね? え、ダメぇ? さいですかぁ」


 ふと、そんな台詞が思い出された。


 言ったのは振袖を着た一つ目の少女であって、名をリクコといった。


 リクコは妙ちきりんな言動でみんなを困らせては笑って道化に徹し、決してその心の内を他人に悟られたりはしないある種の薄気味悪さを持っていて、それがこのキューという少女にとっては目の上のたんこぶのように付いて回り、派生した懸念は消えることは終ぞなかった。


「ノリ……」


 キューは兄の名を呼んだ。何度も何度も、何かに訴えかけるように呼んだのだ。


 それはほとんど無意識のことであった。

 もう戻って来ないであろう最愛の兄を思うと涙で視界がぐにゃと歪み、やるせなさと情けなさで自然と嗚咽が止まらなくなる。


 濃い青紫に変色した手で乱暴に顔を拭う。


 こんなもの、ヒトの手ではない。尖った耳もそうだ。尾に至っては元より付いてなどいない。


 ーー足はもう動かなくなっていた。

 次第に力が抜け、遂には膝から崩れ落ちるように倒れてしまった。


 反動であった。

 自己再生、だなんて大仰な能力を持っていても使いこなせなければ意味がない。


 ーー無能と罵られようと構わない。だからみんなのところに。


「助けて…………」

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