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人外少女と終末世界  作者: umt.s5
二章「ナンバーズ」
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ゴミムシフナムシゾウリムシ〜

「うへおわぁっ!」


 ノリは素っ頓狂な声を上げて尻餅をつき、突然の邂逅に面食らってしまった。

 少女は二三歩歩き屋内の暗がりから出、その姿を露わにする。


 彩度の高い赤の髪と看護服。虚な目をしていて、ノリよりも高い身長からじっと彼を見据えている。


 感情のない目ーー。


「だ、誰なんだアンタ!」

「…………」


 反応はない。これでは外に居るマネキンと変わらない。

 ノリはきっ、と彼女を睨みつける。


 すらりと伸びた青白い肌の肢体は陶器のようで、僅かに赤らんだ端々がその造り物感を増幅させている。


「何か言ったらどうなんだよ。もしキューに危害を加えるつもりなら、僕が許さない」

「……あなたにならいざ知らず、ワタシがキュー様に危害を加えるだなんて、とんでもない」


「様だって!?」

「少なくともあなたよりかは様と敬称するに相応しいお方かと思います」


 煌びやかな赤髪が風に揺らめいては縦に横にと駆け回る。それを少女は手繰り寄せ、一部を耳にかける。


 露出の多くなった額を見てノリは内心ギョッとした。額の中央。真一文字を書くように太い糸で縫われた痛々しい跡があったからである。

 その縫い目と青白い肌が絶妙にミスマッチしており、異質さを際立たせていた。


 ノリは強い既視感に襲われた。

 ーーどこかであれを見たことがある。

 ……七号。


 そうだ、あの縫い目が口のように広がって中から触手を伸ばすのだ。

 ヒトの範疇にあって強靭で強固な武器足り得る代物であると、ノリはこれまでの経験から身をもって認識していた。


 自然とノリの鼓動が早くなる。しかし、たじろぐのを悟られては相手の思う壺である。


 ノリは平生を装って会話を続けた。


「……どういう意味だよ」

「どうお受け取りになられても構いませんが、あなたが畜生である事実だけは声を大にして言わせていただきます」


 仏頂面で毒を吐く少女は更に距離を縮め、一歩ほどのところまで近づいてきた。ヒールのカツカツとなる音が風の強い中を縫って主張していた。

 虚無の目が静かに、けれども確かな荘厳さをもって見下ろしてきた。


「ゴミムシフナムシゾウリムシ〜」

「はあ?」


 少女は抑揚のなく感情が篭っていない声色で頓狂なことを言い出し、満足げにまた少し乱れた髪を手櫛で直した。


「これは、リクコ様に教えていただいた最高級の侮蔑の言葉です」


 ーーまたか、とノリは思った。


「あいつの手先がなんでここに居る?」

「仰っている意味が分かりません」

「ーーだってここは」


 少女が笑った、ような気がした。

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