まったく、バレバレだぜ
ミレイの居なくなった病室で二人、重い沈黙が場を漂うこと数分、キューがあからさまに明るく努めて市内観光の計画のあれこれを話すので、ノリはどうにもいたたまれなくなって若干強く彼女の名を呼んだ。
ーー無理をさせすぎただろうか。まだ病み上がりであるのに、起きて雑談などをしていられる状態ではなかったのかもしれない。仲の良いミレイが行ってしまって心細いのは理解できるが、今は体を休めなければならない。
肩に触れ横になるように促し、背中を支えて姿勢を変えるのを手伝う。恥ずかしそうに「自分でできるから」と何度も訴えるキューを半ば無視する形で介護を続け、彼女が目を瞑り、しばらくして寝息とともに胸が膨らんだり萎んだりするのを認めると、ノリは病室を出て行った。
長く続く廊下の先、少し開けた空間と掲げられた『ナースステーション』の文字。それを横目に進み、突き当たった先に非常階段はある。
現在の階は六階。あと幾つか階を登れば屋上への扉が見えてくる。
ーーノリには一つ、不可思議でならないことがあった。
街中にあれ程居るマネキンが、病院内には全くと言っていいほど置かれていないのだ。
寂しいから賑やかしがほしいなどとのたまい、市中の至る所にマネキンを置いてふざけているのはリクコだけだ。
それの姿が見えないということは、この病院内はリクコの手の及ばない場所という証左にあたる。
更に。
ーー誰かが尾けている。
ノリにさえ分かってしまうほど未熟な尾行であるが、確かに病院内をうろついている最中、常に誰かの気配を感じるのだ。しかし、索敵能力の尋常でないミレイがそれを見逃すはずがない。
とすれば、別段脅威にはならないか無視しても構わないということで、我関せずに徹していればよいのだが、彼はどんな小さな脅威でもキューに近づけたくはないと決意し、わざと開けた場所に誘い出したのだった。
空気の抵抗も相まってすこぶる重い鉄扉を全体重で以て力の限り押し、ギイィと鳴ってゆっくりと開くとその間隙を縫うようにノリは外に出た。
そうして、鉄扉から少し離れた位置まで来ると反転し向かい合う形をとった。
「まったく、バレバレだぜ。そんな下手くそな尾行に気づかない僕じゃあない! さあ、いい加減姿を現したらどうだ。それとも、僕に怖気づいて出てこられないのか?」
ノリの安っぽい口上も挑発としての効果はなく、いっこうに誰かが入ってくる気配はせず、轟と鳴る風の音だけがその場を支配していた。
気のせいだったのかと首をかしげ、そうして先刻までの勇ましくも堂々とした口上が途端に恥ずかしくなって、誰にも見られていなかっただろうかと周囲を見渡し、安堵のため息をついた。
ノリは来た道を引き返し、建物の中に入るべく鉄扉を開けた。
そこには一人の少女が立っていた。
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