消耗品が夢見てんじゃねえよダボハゼ
二連悪口副題
「ここはなんだというのですか?」
抑揚のなく機微の感じられないはずの少女の声が、やけに重く、そうして鈍い敵意の塊のような印象を伴ってノリに突きつけられる。
額の縫い目は微妙に蠢いていて、今にも中のモノが飛び出でてきそうである。
「リクコの管理外なんじゃないのか?」
「それをあなたにお答えする必要があって?」
「あんたも被験体……なんだよな? だったらお仲間じゃないか。教えてくれたってーー」
ノリがそう言いかけた瞬間、耳をつんざくけたたましい笑い声が少女のーー口ではなく、額から聞こえてきた。彼女の額縫い目は解け、縁の皮がめくれ上がると規則性のない歪で真白い歯、それも鋭い牙のようなモノが露わになった。
中はどす黒い闇で埋め尽くされていて、声はその闇から聞こえてきているようであった。
「廃棄予定の出来損ないにそんなこと言われる日がくるなんて思っても見なかったぜ。生きててよかったなオレ! 最高だカカカカカーーッ」
「なっ……」
「おやおや、オレにビビって声も出ねえってか? お漏らししちゃいましたかぁ? うん? 笑えるなあ笑える、最高ォオオオ! オレだったらなあっ! オレだったらーーあのクソ老獪、おっと……もといドクターのスペアボディにされるくらいなら街の外でクソッタレどもと戯れてたほうが百万倍マシよ。オレはそうする。みぃんなそうする。そうしねぇのは、テメェがクソだからだぜクソ」
「デンタータ、ちょっと黙っててくれるかしら」
「事実じゃねえかミーナさんよぉ。なんの力も与えられなかったウジムシ野郎は、恐れ多くもナンバーズである九号様の世話をしてくださるらしいじゃねえか! ハッ! 消耗品が夢見てんじゃねえよダボハゼ」
少女ーーミナの額に現れた口のようなソレはデンタータと呼ばれて、下品な言葉遣いでノリを罵り蔑んだ。
ノリは思い違いをしていた。
被験体というのは、自分やユキノのようにヒトのままであって、そこから逸脱した能力や姿を付与された存在ではないと、そう思い込んでいたのだ。
しかし、ミナは明らかにリクコらと同じ「範疇外」に属している。
デンタータはミナの忠告を無視し、更に続ける。
「テメェにできることはねぇ。いいか? テメェが生き恥を晒してのほほんとしていられるのはなあ、リクコ様がドクターに直談判したからだぜ。ほんとは生産性もクソもねえ廃棄物を飼う余裕なんてないよによお。慈悲深えお方だなあオイ」
「デンタータ喋りすぎです。自重して」
ノリは足がすくんで立ち上がることができなくなっていた。
「ちがう……僕は……」
「おおっ! 廃棄物が何か言うようだぜ? 皆のもの傾注ゥ! さあ何々、言ってごらあん? 聞いてあげるからよお」
「…………」
その時だった。
入り口の鉄扉が勢いよく開け放たれた。




