彼らは自ら進んで滅んでいったのよ
「私ね、時々思うのよ。ドクターのしていることって実はとても烏滸がましくて、許されざる行為なんじゃないかって。確かにヒトという種族は絶滅したわ。彼らは自ら進んで滅んでいったのよ。それに対し同情も憐憫も湧かないけれど、ホントならそれでおしまいであるはずなのに、わざわざ精緻に再現した街を造ってクローンやキメラを遊ばせている。もうこれはお巫山戯を通り越して単なる冒涜でしかないわ」
ミレイは語尾を荒らげてそう言った。
そこにはドクターに対する忠誠心など微塵も感じられなかった。
「ミレイさん……あなたはーー」
「もしかしたら、この反駁の精神ですらドクターには筒抜けで、意図的に作り出されたものなのかもしれない。言っておくけど、決してあなたも例外というわけではないのよ。ノリ」
「えっーー」
頭上から糸が垂れているのは、決してミレイだけではない。
ノリは自身の手を見やった。
人差し指から順に折り曲げていき、握り拳を作る。ぎゅう、と力を込め暫くの後、再び手を広げた。
ーーこれは、僕の意思だ。
ユキノを追うより怪我をしたキューを助ける道を選んだことも、逃げ惑ってここにたどり着いたのも、全てが僕の意思で決めたことだ。
それを造られたモノだと頭ごなしに否定されるのは、腹立たしく口惜しい。
僕の軌跡は間違いでなかったと、僕の自身が認められなかったら、そんな虚しいことはない。
「ミレイさん、教えてほしい。あなたなら知っているはずだ。僕が一体何者なのかを。だからーー」
ミレイは真一文字に口を閉じ、しばし思案した後応えた。
「後悔しない?」
「ええ」
僕は、自分と向き合わなければならない。この世界ともーー。
「そう……だったら、構わないわね。ーーあなたは被験体四九九三六七号。ドクタークローンのジャンク品。つまり、失敗作ね」
ーーこのヒトは今なんて言った?
「あの……よく聞き取れなかったのですが」
「何度でも言うわ。あなたが真実に目を逸らし続ける限りね。……あなたは、被験体の最低水準すらパスできなかった失敗作。本来処分命令が出ていた個体が生きながらえることはあり得ないのよ」
ノリはミレイの発する一語一句を何度も何度も反芻していた。
ドクタークローン、ジャンク品、失敗作、処分命令ーー。
聞き慣れないその単語は、それぞれがジグソーのピースのように合わさり、次第に形を成していく。
「それじゃあ僕がモノみたいじゃないですか」
「そう。……モノよ」
「ーー!」
即答であった。そうして、ミレイはこう続ける
「でもね……それは私たち寄生体ーーナンバーズも例外じゃないわ。ドクターに造られた存在であることに変わりはない。あなたも、私も……」




