……えっと、誰?
【前回のあらすじ】
切迫
果たして吹き抜けの二階の通路から二人を見下ろしていたのは、ななちゃんであった。
「まだ居たんですか。リクコがあらかた倒したはずなのに」
キューは身構え、尻尾を高く蠍のように上げ、姿勢を低くし臨戦態勢に入る。
「きゅーちゃん! 待って。違う……あれは、ななちゃんじゃないっ!」
そう言われてキューはもう一度仰ぐ。しかし、見えるのは確かにななちゃんであると自分に言い聞かせる。小鹿の姿をした人工生命体――。
――見間違うはずがない。
「お面をよく見て……アレは被っているお面が違うのよ。饕餮紋の刻まれたお面じゃない。方相氏の面をしてる。てことはアレ……」
言われてみれば確かに違うような気がしないでもないが、被っているお面が違うからといって、そこまでの相違があるとは到底思えない。
――それにどちらも趣味が悪い。
「ねえ、リクコ。なぞなぞはもう沢山ですよ。正直に言ってください。怒りませんから」
「なぞなぞをしてるつもりはないんだけど。……ああ、そうだよね、らしくないよね。キューちゃん諭されるなんて私もまだまだということかしらん。んじゃお言葉に甘えまして――正解はそんなダサいお面私の趣味じゃない、でしたあ。はいドンパフ」
平素の酔狂なリクコの調子に戻ったことに嬉しさの反面若干の煩わしさをキューは感じていた。
またあのとんでも破天荒に付き合わされるのかという嘆きと、ユキノを助けられなかったことはやるせないかもしれないが、きっとどこかで踏ん切りをつけなければならないのだから、仕様がないとするのが後腐れのなく最良の選択なのだ、という重苦しい心のうねりが撹拌され汚泥となっていた。
そうして、その全てに留意した結果、キューから表情が消えた。
――お得意の鉄仮面である。
それは感情の渦に飲み込まれないようにする彼女なりの防衛手段であるのだが、それを見て凡その経緯を察したリクコはクスクス笑った。
そうこうしていると、ななちゃんは颯爽と跳躍し二人とオリジンの間に音もなく着地すると、二三回ぐるぐるとその場で回ってからこちらに向き直り、抑揚のない機械音で以ってこう言った。
「――六号の趣味じゃないねえ、確かに」
無機質な機械音の奥にある猛々しさが暗に示唆されているかのように、方相氏の面が二人を見据えていた。
「目が多すぎるわ。六つもいらないでしょ」
「一つよりはいいんじゃない?」
「ああん?」
そうして、リクコとななちゃんは堰を切ったようにげらげらと互いに笑い出した。
唖然とする鉄仮面状態のキューは、機械音じみた抑揚のなさでリクコに尋ねた。
「……えっと、どちらさま?」




