だったら少し、黙っててほしいなあ
【前回のあらすじ】
回顧
覚束ないオリジンの足取りは着実にこちらに近づいてきている。
元々が不安定な存在であるので、その巨躯を支えきれず自重により脚部は損壊し、動くことすらままならなくなる。
さらに暴走モードにより放たれた熱は諸刃の剣となって皮膚を焼き肉を燃やし、その躰がすべて灰と化すまでまとわり続ける。
「どうせ、放っておいても勝手に死ぬよアレは」
認めたくないのだ。現実から目を逸らして打開策を講じようともしない。
いつからそんな怠惰になってしまったのだろう――。
私も結局同じなのだ、とリクコは呟く。
街のあちこちに分散して設置した被験体と今の私は何も変わらない。見ようとしない知ろうとしない、なるがままされるがままでどこまでも受動的な――人形。
「……どうしようもないじゃない。いくら慎重になってもきっとどこかで綻びはできちゃうもの。失敗よ失敗――。はあ、やってらんなぁい」
砕けた口調でそう言ってオリジンの方にゆっくりと歩み寄るリクコをキューは制することができなかった。
「どうしても助けられないんですか? 本当に?」
リクコの歩みが止まった。
「ムリだって……言ってるでしょ。私がそう言ってんだから間違いないの。なんせアレを作った張本人なんだから」
「でも、まだ何か策が残ってるかもしれません。リクコならきっと――」
「ねえ、キューちゃん。ムリって言葉の意味知ってるよね? だったら少し、黙っててほしいなあ……私キューちゃんに嫌われたくないのよ」
「っ! ――ごめん……なさい」
再び歩一歩とオリジンに近づいていくリクコの後にキューもついていく。
もう既にオリジンの脚は崩壊し、ひしゃげた脚部と胴や首が燃えながら床をじたばたと転げ回っている。
未だ残るユキノの敵意の欠片は、剥き出しの切っ先で自らを害しながら殺すべき対象を探している。
強い――凄まじく強い怨念だ、とキューは生唾を飲み込む。
この世界は異世界で自分はそれを救う勇者である、という拠り所を失ったばかりか存在そのものを貶され笑いものにされたと感じた彼女の憤怒が、揺らめく炎と同化してパチパチと音を立てている。
「彼女は、ユキノは居場所を求めただけ。ただそれだけ……。私は私なりに提供してきたつもりよ。ドクターと違ってね。まあ、ちょっと巫山戯ることはあっても、被験体だからって侮った覚えはない。でもね、今目の前に見える光景が答えだとしたら、私は今まで一体何をしてきたのかしら」
「あっ……リ、リクコッ! あれ。あれを見てください」
「――あれ、は」




