まったく……やってくれましたね
【前回のあらすじ】
回顧
――低彩度で統一された落ち着いた色調の床の模様は不規則な幾何学模様を描いて、ショッピングモールを彩っている。
目下行動不能に陥って倒れている寄生体七号――ななちゃんの数は数十にも及び、床の幾何学模様が見えなくなる程であった。
怪訝な面持ちでリクコと対峙するユキノは、ひょうきんで思わせぶりな彼女の、そんな態度にいい加減辟易しているようで、語調を荒らげながら叫んだ。
「クソ異世界人が図に乗るんじゃねえっ! 私の力に恐れ戦いてひれふせやっ!」
「おーおー、くわばらくわばら。ダメだよユキノちゃん! あの優しかった頃に戻ってほしいな私。夜散歩中に間違って踏んだカナブンのお墓を泣きながら作ってあげる優しいユキノちゃんっ」
「な、なんでそれを――! クソッ、私を……私をおちょくるなあああああああっ!!」
ユキノは激昂して手に持った銃をリクコに向かって撃った。
鈍い銃声がモール内に響き渡る。
――狙いは正確。その弾は全弾リクコの頭部へと命中する――はずだった。
「な……んで?」
撃たれた銃弾は全てリクコの右の掌に受け止められ、握り潰されていた。
「いきなり撃つなんてひどいじゃあないの。まあ撃たれても死にゃしないけどさ。諦めたら? 楽になるよぉ」
「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れだまれええええっ!!!! お前に何が分かるっ! お前なんかに訳もわからないこんなクソみたいな異世界に飛ばされて、帰る方法も来た目的も分からない――あるのは巫山戯たマネキンと狂った化物が支配する街に、味方も強い武器もないまま放り出された者の気持ちが手前に分かるっての!?」
「その、さっきから言ってる異世界ってのはよく分からないけどさ、そんなもんじゃない? 味方ならこれから作ればいいし、武器なんかなくたって暮らしていける。いーじゃん、私なってあげるよ味方……あー、友達の方がよき?」
「巫山戯んなっ! 私アンタのお仲間殺してんのよ、バカじゃないの?」
それを聞いてリクコが抑えきれずに吹き出した――。
「殺した? ほほーん。いいねえ面白いねぇ、ますますお友達になりたくなってきたわ。だって――」
――すっと風を切る音がした。
瞬間、ユキノの持っていた銃は細切れに分解され、重力によってパラパラと床に落ちていった。
そしてユキノが次に見たのは、オリジンの頭上に乗り、帽子の位置を調整しているキューの姿だった。
「まったく……やってくれましたね」




