最後に美少女をつけなさい
【前回のあらすじ】
主人公逃走
これでよかったんだよね、とリクコは独りごちる。
ノリがあのまま殺されでもしたらキューに示しがつかない。
そうして、守りきれなかった私を許しはしないだろう――。
みるも無残な姿の彼女の方をリクコはちらと一瞥し、無事を祈ると目下対峙中の化物の方に視線を戻した。
「七号オリジンまで引っ張り出してくるなんてどういうおつもり? お尻ぺんぺんされたいの?」
「もしもの為の保険よ。備えあれば憂いなしって諺ご存じないかしら? 一つ目ちゃん」
「最後に美少女をつけなさい」
リクコの左手にはオリジンの胴体正面にある縦割れの口から伸びた細長い触手の先端が握られている。この触手は武器であると同時に最大の弱点でもあるのだ。
喉元にナイフを突きつけられたかのように動きを封じ、これにより膠着状態に持ち込んでいた。
基本的にキューの尻尾と同じものだが、オリジンの持つそれはより太く硬く、破壊に特化した造りとなっている。
これを相手にしながらノリを守り、キューを助けに行くのはあまりにも現実的ではないとリクコは判断したのだった。
オリジンの向こうにいる対象――ユキノがドクターのラボから盗みを働いたと報せを受けた時には、こうなることはある程度覚悟していた。
彼女がこの街が張りぼてだと薄々気づいているようだと知った上で、暗示し直さず放置していたのは、そんな非人道的な行いを悔いる気持ちなどではなく、ただ単に彼女がどう行動するのかを観察したかったからに他ならない。
自分が実は別世界から転移してしまった存在だなんて妄想をしたヒトは、リクコにとって格好の観察対象だったのだ。
――だからそのケジメはしっかりと責任者が取るのが道理だ。
リクコは深く内省しつつ、左手に力を込めた。
必死に抵抗するオリジンがギィと苦しげな声を上げ、脚をばたつかせる。
そう簡単に千切れるような代物ではないが、痛覚が通っているのを承知しているので、リクコは更に力を強め爪を喰い込ませる。
「ギィィ……ィェ」
「クソがあああああああっ! こいつさえ――六号さえ倒してしまえばこの世界を救う大きな一歩になるのよ。このっ! 早くっ! 諦めてっ! くたばりなさいよ!」
ユキノが叫ぶたびにオリジンが抵抗を強めていく。まるでユキノの意思で動いているかのように――。
「マニュアル操作……? そう、ナノマシンは体内にあるのね。こっそり盗ろうと思ってたのに、残念だわあ。……じゃあ研究データのチップは脳に埋めこんじゃったのかなあ?」
「くっ……なんで、そんなことまで分かるのよ!」
「知りたい? ねぇ、知りたいの? ユキノちゃん――それはねーそれはねー」
――私がソレ、造ったからよ。




