やだよ、一つ目モンスター
【前回のあらすじ】
ピンチ
「瞬殺……か。ちょっとは戦いになると思ったのに、役立たずじゃん小鹿のバケモノさん」
「彼我の力量さを理解してるなんてアッタマいいんだね。ななちゃんとモルモットがいくら束になっても私には勝てないヨー。分かったなら盗んだ例のモノちょーだいっ」
「やだよ、一つ目モンスター。気色悪いんだよ」
「…………」
――まずいことになった。
ユキノがこれ以上煽りでもしてリクコの逆鱗に触れようものなら、おそらくユキノはさっきのななちゃんと同じように――。
それだけは避けなければならない。
まだ平素のおちゃらけた風のリクコであれば宥めることも可能だろうが、今の彼女にはかえって薮蛇を突くハメになるだろう。
そうならないためにユキノを説得する。それが非力なノリにできる唯一のことだった。
「ユキノ……そういえば、小さい頃から一緒だったよなぁ。他に友達のいない僕にたった一人優しくしてくれたのはお前だった。そう、これはきっと――なんかの間違いなんだ。お前はそんなことするような人間じゃない。だから――」
しかし、ノリの思惑は初っ端から打ち砕かれた。
ユキノが嘲笑するように鼻を鳴らし、次いでケラケラと大声で笑い出したのだ。
「あー、そういうのいいから。ホント。私が好んであんな陰険なところ、行くわけないじゃない。あんなの方便に決まってんでしょ? アンタ誘ったのは単なる気まぐれよ。バカでお人好しだから世界を取り戻す手伝いくらいしてくれそうだったし――。
……あー、そうそう。贋造って言葉、知ってる? 造りモノ、紛い物って意味よ。そして――この世界のことでもあるわ。よく似てるけど私のいた世界とは別の世界なの。だからどうなったってかまやしない。居るのはマネキンと化物だけ」
「別の世界なんて、そんなっ譫妄――」
「記憶だってあるわ。こんな世界の紛い物の記憶じゃなくて。……第一何よあのマネキン。あんな子供騙しに引っかかるなんてアホだけよ。ご丁寧に中に血まで入ってるし」
ノリには一つ心当たりがあり、隣の単眼娘の方に視線を移すと、わざとらしくそっぽを向いて「デミソースだっての……」と嘯いていた。
そんな中、今まで大人しくしていたキューが僕の服の袖を掴んで不安げに言った。
「ノリ……逃げましょう。厭な予感がします。ここに居たら危険ですっ!」
「えっ、何言って……っ!」
瞬間、キューの姿が忽然と消えてしまった。
――否。
薙ぎ払われたのだ。
気づいた時にはキューの体は壁に叩きつけられ、あらぬ方向に肢体が曲がっていた。
そうしてノリたちの眼前に現れたのはななちゃんよりも一回り大きい、立派な角を生やしたななちゃんであった。
なんか登場するの化物ばっかだな




