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第26話 外れスキルの証言を、誰も笑いませんでした

 数日後、王国の部隊が砦へ到着した。

 運ばれていったのは、砦の主炉ではなかった。

 壊れた軍用炉と、専売局の操作記録、それから拘束されたヴァレスだった。


 父と兄も、調査を受けるため王都へ向かった。

 母は二人を見送ったあと、砦へ残った。

 リーネは食堂で、預かった兵の名を帳面へ写している。

 負傷した人たちは、歩けるようになるまで砦で治療を続けた。

 敵だったからと、水や食事を別にする理由はなかった。


 門の外から、ハチの腕を回収した。

 ボルドさんは砕けた石を一つずつ合わせ、内部の切れた線を取り替える。

 魔力の芯は無事だった。

 俺は顔を拭いてから、接合を使った。


 動き始めた右腕が、少しだけ上がる。

 ハチはトトから受け取った布を、今度は自分の肩へ当てた。


『作業、再開』


 広場にいた人たちが、笑った。

 拍手はしなかった。あれをすると、ハチが頭を下げて仕事を止めるからだ。

 代わりにミナさんが、運んでほしい箱をそっと前へ置いた。


 俺が王都へ呼ばれたのは、それから二週間後だった。

 エステルさんとアイナさん、ミレイユさんも証言する。

 王国の審理室には、軍と領政院、それぞれの担当者がいた。


 ヴァレスは、最初に俺の授能証を求めた。


「この青年は、古代技術の資格を持っていない。未知の固有スキルだけで判断している」


 俺は授能証を出した。

 故障診断。

 父の書斎で、使用人にもできると言われた力だ。


 審理官は、証を見てから軍用炉の破片を示した。


「どこが正常な設計と異なっていましたか」


 俺は、第三環に追加されていた板を指した。

 環の古い流路と、後から塞いだ箇所を図へ写す。

 誰が見ても照合できるよう、現物へ同じ番号を付けた。


「この板が、滓を戻す道を塞いでいました。解除器も裏へ隠されていて、通常の停止だけでは溜まった魔力を逃がせませんでした」


 王国の技師が、俺の図と現物を比べた。

 何度か質問され、俺は答えた。

 わからない材質については、わからないと答える。

 そこは、アイナさんの資料と、別の技師の検査で確かめられた。


 第三環の番号は、砦の記録と一致した。

 貸出帳と局の帳面には、矛盾がある。

 試験の安全記録には、虚食獣の危険が書かれていなかった。

 だがヴァレス自身が所持していた古い研究写しには、同じ影と警告が残っていた。

 知らなかったとは、もう言えなかった。


 ミレイユさんは、保全書が受領された時刻を述べた。

 そのあとも接収命令が出され、軍用炉が砦へ撃たれたことを、兵士たちも証言した。

 俺一人の話ではなかった。


 最後に、兄が立った。

 接収の署名は自分のものだと認める。

 砦へ戻れと俺を説得できれば、局から新しい軍用装備を提供される約束だったという。

 兄は俺を一度見て、目を下げた。


「弟なら、炉も直せると思いました」


 審理官が、静かに聞き返した。


「直せる者だから、本人の承諾なく働かせてよいと?」


 兄は答えられなかった。


 審理はその日だけで終わらず、資料の確認が続いた。

 俺たちは先に砦へ戻り、壁を直した。

 主炉の点検は、王国の技師と一緒に行った。

 こちらの設備にも誤りがないか、同じように見てもらう必要があった。


 冬の入口に、判決が届いた。

 ヴァレスは局長を解任され、禁固十五年と賠償を命じられた。

 隠された記録の整理と、他の試験設備の停止も行われる。

 父は伯爵の地位を退き、家の統治権は王国の監督下へ置かれた。接収に使った兵と資金についても責任を認め、修繕費の一部を支払う。

 兄は軍の地位と家督継承の資格を失い、監督下で三年間、被害地域の復旧作業に従事することになった。


 俺は紙を読み終えて、窓の外を見た。

 ハチが薪を運んでいる。

 誰かが、その横で明日の天気を話していた。

 審理のために離れていたこの声の中へ、ようやく戻れた気がした。

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