↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
22/30

第22話 敵の兵器を、味方の工具で開けます

 通用口から外へ出た。

 俺とエステルさん、ハチと作業ゴーレム一体。

 ハチの荷台には、水と工具、厚い布を積んだ。

 壁の上では、ダンさんがこちらを見ている。

 俺が炉へ近づくまでは、外の兵を必要以上に刺激しないと決めていた。


 野営地は、すでに半分崩れていた。

 荷車を捨てて走る人。魔獣へ剣を向ける人。

 命令を待って立ったままの人。

 俺は炉の位置へ向かって走った。


「戻れ!」


 父が俺を見つけ、馬から下りた。

 その横で、兄が第三環を押さえている。

 光が漏れないよう、何かの弁を閉じようとしていた。


「触らないでください!」


 俺は兄へ叫んだ。

 兄が振り向く。

 その瞬間、枠の中から青い火花が飛んだ。

 エステルさんが盾を差し込み、俺の前を塞ぐ。

 兄は腕を引き、地面へ尻をついた。


 ヴァレスが、俺を指した。


「この青年に直させればいい。局の器材だ。今すぐ従事させろ」


 父が一歩、彼の前へ出た。


「砦を調べる話だった。住人を害する命令には、同意していない」

「国防のためだと言ったはずだ」

「国防の炉で、国民の住む壁を撃った」


 父は兵へ手を上げた。

 ヴァルト家の兵だけが、父の周りへ集まる。

 専売局の傭兵は、局長を見たままだった。

 だが、次の発射の命令を聞いても、炉へ寄ろうとする者はいなかった。


 俺はハチに指示して、外側の鉄板を支えてもらった。

 ここで炉全体を壊せば、溜まった魔力がどうなるかわからない。

 まず、何が起きているか見る。

 厚い手袋を着け、外から露出している制御板へ触れた。


 二十呼吸が、とても長かった。

 上の空で黒い翼が動く。

 細かい砂が顔へ落ちた。

 エステルさんが、盾を俺の頭の上へ持ち上げた。


 青い見取り図が現れた。


〈放出経路 閉塞〉

〈循環環 用途外接続〉

〈内圧上昇〉


 壊れた弁だけを直しても駄目だった。

 元の設計と、後から加えた枠が噛み合っていない。

 第三環を止めるための解除器も、動力の裏に隠されている。


「蓋を外します。この石へ、魔力を足さないでください」


 俺が言うと、父が兵へ指示を繰り返した。

 補助の魔石が取り外される。

 だが炉の光は、まだ強い。

 すでに溜まった分が残っている。


 ハチが鉄板を持ち上げ、作業ゴーレムが重さを受ける。

 俺は体を低くして、内側へ入った。

 接合された金具を切り、手動の放出器を探す。

 工具が一本、指から落ちた。

 拾おうとして、別の手が先に取った。


 兄だった。

 彼は工具を俺へ返した。

 何か言いかけ、やめた。


「そこの灯りを、持っていてください」


 俺が頼むと、兄は灯りを持った。

 攻撃魔法ではない、ごく小さな光だ。

 それで、枠の奥の留め具が見えた。


 ヴァレスは後ろへ下がり、鞄を抱えた。

 ミレイユさんが付き添いの兵と追いつき、彼の前へ立った。


「今、器材を離れる前に、操作記録を渡してください」


 局長は返事をしなかった。

 父の兵が一人、出口側へ回る。

 俺はそれ以上見なかった。

 見ている余裕がなかった。


 放出器の前には、異なる金属の板がねじ込まれていた。

 俺は留め具を外し、板を引いた。

 動かない。

 熱で歪んで、溝へ食い込んでいる。


「ハチ。ここを、少しだけ広げて」


 石の指が枠を押した。

 板が、わずかに浮く。

 俺はその隙間へ、平たい工具を差し込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。