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第21話 その兵器は、もっと大きな敵を呼びます

 軍用炉は、砦へ向けていた。

 太い管の下に、鉄の枠が二重に組まれている。

 中央の第三環は、縁へ黒い板を足され、元の流路を塞がれていた。

 俺は壁から見た形を紙へ描いた。

 触っていないので、診断はできない。

 それでも、何を塞いだかは、砦の図と比べればわかった。


「戻す道を、閉じている」


 アイナさんが低く言う。

 浄化して地中へ戻すはずの環を、魔力を閉じ込めるために使っていた。


 エステルさんが角笛を持った。

 撃つのを止めるよう、外へ声を飛ばす。

 ヴァレスは、こちらの声を聞いたようだった。

 なのに、炉へ魔石を追加させた。


 父が彼へ近づく。

 身振りは大きかったが、声までは届かない。

 兄が父の前へ立ち、何か説明していた。


 炉の管が、青く光る。


「下りて!」


 俺が叫んだ。

 壁の上から皆を下ろし、自分も階段を駆ける。

 背後で、重い音がした。


 光が門の脇へ当たった。

 石が削れ、広場へ欠片が落ちる。

 水の出ていた管が裂け、噴き出した水で地面が濡れた。

 厚い門を一度で抜けたわけではない。それでも、二発目が同じ場所へ来れば危ない。


 俺は主炉へ走ろうとした。

 二環でも、壁の守りを短時間使える。

 ただ、それは最後に時間を稼ぐための手段だ。

 ここで使い切れば、次がない。


 外で、別の音がした。

 地面の深いところから、何かを引きずるような音だった。

 食堂のカップが揺れる。

 ハチが広場の真ん中で止まり、門の向こうを見た。


『外部、異常』


 山の稜線に、黒いものが現れた。

 最初は雲だと思った。

 だが雲は、木を押し倒しながら尾根を越えない。

 黒い影が大きく広がり、空へ持ち上がる。

 薄い膜のような翼。

 その下に、何本もの長い脚がぶら下がっていた。


 地下の記録板と、同じ姿だった。

 虚食獣。


 外の兵たちが、砦への突撃を忘れたように山を見る。

 誰かが攻撃魔法を放った。

 小さな光が黒い膜へ入る。

 光は砕けず、吸い込まれた。

 翼の縁が、さらに厚くなった。


「撃たないで! 魔力を与えています!」


 アイナさんが壁の階段から叫ぶ。

 兄も炎の槍を構えていた。

 俺は彼の名前を呼んだ。


「カイル兄さん、やめてください!」


 兄の腕が止まった。

 こちらを見た一瞬の間に、虚食獣が地面の滓を吸い上げる。

 古い黒い筋が、煙のように空へ浮いた。

 狼のときとは、比べものにならない量だった。


 ヴァレスは管の角度を上げた。

 砦ではなく、魔獣へ向けている。

 父が彼の腕をつかんだ。

 局長が振り払い、傭兵へ命令する。


 軍用炉が、もう一度光った。

 今度は細い光だけが管から漏れ、枠の隙間に火花が散った。

 正常に撃てていない。

 溜めた魔力が、内部へ戻っているのだろう。


 俺は、はっきり見えた第三環の輪郭を思い出した。

 あれを動かしている限り、滓は出続ける。

 砦を守るだけでは、終わらない。


「門を開けます」


 俺が言うと、エステルさんが振り向いた。


「今ですか」

「向こうの炉を止めます。あれを止めなければ、こちらの壁を直しても間に合わない」


 彼女は門と、俺と、黒い翼を順に見た。

 そのあと剣を抜き、腰へ戻した。


「護衛は、私がします」

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