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第12話 地下遺跡の攻略法は、まず電源を切ること

 地下の扉を開ける日は、人数を決めた。

 俺とエステルさん、ダンさん、兵士二人。

 ボルドさんは入口で待つ。ハチは日光を十分取り込ませてから連れてきた。

 トトが自分もと言ったが、ミナさんが首を横に振った。


「今日は水桶を洗う係。地下は大人の仕事」


 彼女は不満そうだったが、ハチへ布を渡してくれた。


「顔、また汚れるでしょう」


 ハチは胸の隙間へ布をしまった。

 そんな場所に入れていいのかと思ったが、道具を収めるための箱だった。

 古代の設計者は、そこまで考えていたらしい。


 鍵を回すと、扉が内側へ開いた。

 乾いた空気が流れてくる。

 奥に、横たわった大きな石人形がいた。

 ハチより細く、両腕に刃を付けている。


 俺が一歩入った瞬間、頭の光が赤く点った。


『侵入者』


「下がれ!」


 エステルさんが俺の襟を引いた。

 刃が通路の石を削る。

 彼女が剣で受け、ダンさんが槍で脚を突いたが、守衛は止まらなかった。


 外から触って診断する余裕はない。

 二十呼吸も、あの刃のそばに立っていられない。

 俺は壁を見た。

 通路を塞ぐ守衛なら、点検するための方法もあるはずだった。


 ハチの胸には、手で切れる遮断器がある。

 この守衛にもあるかもしれないが、同じ位置とは限らない。

 むやみに近づくより、先に部屋の供給を探す。


 壁の上に、太い管が走っていた。

 守衛が立ち上がった場所へつながっている。

 俺は管の脇にある金属箱へ手を置いた。


 十呼吸。

 通路で剣が鳴る。

 十五。

 ダンさんが盾を弾かれ、壁へぶつかった。

 二十。


〈整備区画 供給遮断箱〉


 蓋の留めを外すと、手で下げる長い把手が見えた。

 ただし錆びて動かない。

 俺が工具で押す間に、ハチが前へ出た。


『居住者、危険』


 守衛の腕をつかむ。

 ハチの肩で石が欠けた。

 力比べには勝っているが、刃は止めきれていない。


「もう少し、お願いします!」


 俺は把手の軸へ油を落とし、ダンさんに棒を渡した。

 横から押してもらいながら、自分は錆を削る。

 金属が、わずかに動いた。

 把手が下がる。


 守衛の赤い光が、消えた。

 巨体はハチにもたれかかるように止まった。


 エステルさんが剣を下ろした。

 肩で息をしている。

 俺も壁へ背をつけ、しばらく立ち上がれなかった。


「今度から、扉を開ける前に壁を見ます」

「ぜひ、そうしてください」


 彼女は怒っていた。

 言い訳できるようなことでもなかった。

 壊れた物ばかり見て、動くものがいる可能性を小さく考えていた。


 守衛を外へ出してから、ようやく診断した。

 内部の識別盤が割れている。

 正しい通行証の形を読み取れず、全員を侵入者と見なしていたらしい。

 手動の通行鍵をボルドさんに作ってもらい、刃を外す。

 欠けた盤は、同じ材質が見つかるまで交換できなかった。

 今日は停止させたままだ。


 地下には、工房と倉庫が残っていた。

 棚の中に、古い記録板が何枚もある。

 三つの環の図と、山の断面。

 別の板には、大きな黒い影が描かれていた。

 砦の絵の上に覆いかぶさる、翼のような形だ。


「鳥でしょうか」


 ダンさんが言った。

 エステルさんは頷かなかった。


 俺たちは触ってはいけない品を分け、持ち出せる記録だけ箱に収めた。

 帰る途中、ハチが肩へ布を当てた。

 トトに渡された布だった。


「その傷は、あとで直すよ」


 俺が言うと、ハチは少し間を置いて答えた。


『作業、継続可能』

「それでも。今日は、助けてもらったから」


 俺は欠けた石を拾い、工具箱へ入れた。

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