第8話
彼女のもつ拳銃の銃口から光が迸った。
それが彼女が引き金を引いたことによる発砲ということに気付いたのは、それのすぐ後だった。しかしその一瞬は確実にその弾を大手に進めさせた。いつの間にか増えた人混みの間をそれは正確に縫って私の元に迫る。
だめだ反応できない。終わった。
その弾は真正面に位置し、その遠近感は掴めなかった。私はただ、その奥にいるなも知らない彼女を見つめていた。その頬には一筋の汗が滴っていた。銃を構えるその両手には力がこもっていた。
半端な構えだった。動揺が見られる。息も切れている。見るからに異常自体だ。『何がそうさせた?』という疑問が頭に浮かんだが、それを差し置いて、今の状況は私にとって好都合だった。
私は動かなかった。ただそれを見るだけで何もしなかった。銃も出さない。回避もしない。ただ次のことを考えていた。
おそらく私の約一メートル前。その銃弾は突如としてその軌道を変えた。無回転のボールがぶれるようにそれは起こった。そして次の瞬間、彼女のは私のすぐ右を通り抜けた。
「クソが…!」
そう言った彼女は踵を返しすぐに逃走に移り、私は追跡に移った。それと同時に弾が行ったであろう方向から「いた…!」という声が聞こえた。そこには軽く後頭部を押さえる女性がいて、その足元には銃弾が落ちていた。流血はない。まぁそれもそうかと私は後ろ目に見ていたのを前に戻した。
彼女はその大通りを真っ直ぐに走った。途中人にぶつかりながらも私から逃げていた。既にチャットで二人には連絡した。直に到着するだろう。それまで私は彼女を逃せない。私は走る速度を上げた。彼女は限界が来ているのか、その距離は瞬く間に狭まっていった。先程から息切れをしているので、そう長くは持たないだろうと私は予想した。
彼女がこちらを必死の形相で睨んできた。すると不意にこちらに向かってその手に持つ拳銃の引き金を引いた。しかしその不安定な態勢で放ったその弾は大きく外れ、私の後方へ流れていった。またしても聞こえた、弾が当たったことによる小さな悲鳴の発生源を後ろ目で見た後視線を戻すと、裏路地に入っていく彼女が見えた。
そこで私はその足を止めた。
彼女はこの周辺に拠点を構えている。そして先ほどからの彼女の進み方から見て、その進行方向にそれがあると見ていいだろう。ならば先回りすればいい。この周辺の土地勘は先の捜索で把握している。
私は来た道を引き返した。




