第5話
ワカはレギンスやショートパンツ、トップスと言ったスポーツウェアの上からジャケットを羽織るという服装だった。
私達は本土の北方青森に着いた。ここはそこそこ大きめの駅があるので、都会とまでは言えなくともそこそこ発展していたが、深夜帯なので人は少なかった。
ミレイとの待ち合わせはこの駅だ。事前に聞いていた容姿を元に彼女を探す。
流石北の地の冬というだけあって、雪が積もっていた。息を吐くと白くなり、私は薄着で来てしまった事を後悔した。ワカは背負うリュックから防寒具を取り出し、手を擦り合わせて暖かそうにしていた。しかし、足を守る防寒具は持っていないらしく、足の小刻みな震えで彼女のツインテールが微かに揺れていた。
私も寒さに身を震わせながら、ミレイを探した。
丁度タクシー乗り場付近にそれらしき姿が見えた。私やワカと同じ程の身長。コートを着、マフラーを巻いていて暖かそうだった。
こちらを見た瞬間に手を振ってきたので確定だろう。ワカもそれに振り返していた、
何とか短時間で発見できたので助かった。
「ワカ、ちゃんと会えてよかった。」
そうミレイが言った。その後「それと…」繋げた。
「シアさん、こっちで会うのは初めてだね。よろしく。」
彼女は手を差し出してきた。
私はその手を取り、「よろしく。」と短く返した。その手袋が暖かく、ため息をついて堪能していると、気づけば数秒の間両手で握ってしまっていた。ミレイは少し気恥ずかしそうにしていたので、慌ててごめんと言い手を離すと、ミレイは「大丈夫だよ。」と答えた。
気を使わせてしまったなと反省していると、ミレイは事前に止めておいたタクシーの扉を開き、「ささ、早く行こう。」と言った。
頭と肩に乗った雪をはらってタクシーに乗る。ワカはミレイに雪をはらってもらい、ワカは私と後ろに、ミレイは前の助手席に乗った。
それを見て、烏滸がましいが何とも言えない感情を抱いた。
タクシーの中は基本無言だった。夜の街の静けさにつられたのもあるだろうが、それ以前に話すことがあまりなかった。
数分でミレイの家に着いた。そこは小綺麗なアパート群だった。
ミレイは例のカードで支払い、一番最後にタクシーから降りた。ミレイは少しの間発進したタクシーの後ろ姿を眺めていた。雪が降っているせいかその背中が少し寂しそうに見えた。
すぐにミレイは私たちを促すように歩き始めた。
ミレイの部屋は二階の角部屋だった。部屋の中はワカと同じく小綺麗にされてて、雑貨などが飾られていた。
「とりあえず、お風呂沸かすね。」
そうミレイが言った。正直もうそろそろ限界だったので嬉しかった。それにワカは「サンキュー」と短く返し、私もありがとうと返した。
ミレイは暖房をつけてくれた。寒さで真っ赤になっていた私の鼻と耳に先刻まで主張していた痛みが、一気に薄れた。
お風呂が沸くまで、私達は作戦の確認をすることにした。と言っても明日この東北にいる相手を倒しに行くのだが、それを踏まえての行動確認と言ったところだ。
話はすぐに終わった。朝一で相手を確認し、そこに向かう。実に無難な作戦だ。しかし、この状況ではそれしかないだろう。
基本的にこのゲームでの立ち回りは、攻めか待ちだ。銃火器を扱うこのゲームにとって、守りというのは無きに等しい。それが常識だ。
確認が終わった私達は、各々に過ごし始めた。ワカはミレイとテレビを見始め、私はその後ろのソファから静かにそれを眺めた。
数分もしないうちに風呂の時間になった。ミレイのかけたタイマーの音がその時間を表していた。蛇口からお湯を出すタイプなので先に入る方がそれを閉めることになった。
ミレイはすでに入っていたらしく、私とワカだけが風呂の客となった。
私はワカに、どうぞと一番風呂を譲った。世話になる側なのでそれくらいは当たり前だろう。「いいの、ありがと!」と言ってワカは風呂場に向かっていった。
そして部屋には、ミレイと私の二人だけが残った。




