第16話
門をくぐると外から見た時より一層その屋敷が大きく見えた。格子のせいで外からは見えにくかった大きく綺麗な庭が道の両側に広がっていた。
小さな衝撃と胸の高鳴りを抱えながら、私は車を降りた。
屋敷の中も庭に負けない優雅さだった。木造で少し高めの天井に奥行きのある、正面から見た以上に見た目だけではなかった。細かな彫刻が施された柱があり、それと言って派手なわけでもなく、シックな雰囲気に包まれていた。私はよくわからないがその雰囲気に圧倒されて、呆然としていた。
「部屋は二階の角を使うといい。」
そう声をかけられて、私は小さくビクッとした。声の方を向くとメアリが立っていた。ありがとうと短く返すと、メアリは満足したように私の横を通り抜けて階段を登って行った。
いつのまにかみんなは自分の部屋に入っており、玄関には私一人だった。静けさと季節に合わない寒気を感じて、メアリの後に続くように私の部屋に向かった。
部屋の扉にも綺麗な彫刻が施されていて、廊下の奥にある窓も相まって幻想時にその空間が見えた。部屋の中には窓が二つあって、光に満ちていた。そのどこか別世界のような雰囲気の部屋に私は数分、立ち尽くした。外の暑さでジャケットの中はぐしょぐしょになっていることに初めて気づいた。そのあまりの気持ち悪さに、
思わず私はジャケットも靴もタンクトップもパンツまで脱ぎ捨てた。体の開放感が一息に体を駆け巡り、私は爽快感と共にベットに倒れ込んだ。シールに汗が軽く染み込んでいくのを全身で感じる。
何とも言えない感覚だった。何も感じていないはずなのに、何かを感じる。それはクロエなる少女のせいかもしれないしそうじゃないかもしれない。はたまた… 何か、焦燥感とも言える感覚を全身を襲っている。何かが消えた気がしている。
ゲームの特性上、それは致し方ないことなのだが、それでも穴は埋まらない。事実では空白はなくならない。
陽の光が私をじわじわと温め、気づけば深い眠りに入っていた。




