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パラレル・ワールド ~ 嗚呼、なんてロジカルな魔法の世界! ~  作者: 初美陽一


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第6話 〝魔法〟を〝科学〟で進化せよ!

 この城塞都市を囲うように覆う壁は、高く厚い。魔物の侵入を防ぐためであることが、分かりやすく伝わってくるほどだ。

 が、猫メイド・アビィが伝えてきた〝魔王軍の最高戦力〟とやらは、そんな人間側の努力を嘲笑あざわらう存在だった。


「あ、ああ……〝雷龍〟が……まさか〝雷龍〟が来るなんて……」

「も、もう終わりだ……どうしようもねぇ……」

「に、逃げるしか……えっ〝雷龍〟だけでなく、都市の外も魔物に囲まれて逃げられない? フフッ、敵多すぎて終わったわ★」


(フム、何やら民衆は絶望している模様。大変であるな)


 同情はするが、早々にロジカルを投げ捨てて諦める姿は、受け入れがたい。


 しかし〝雷龍〟とやらの威容いようの当たりにすれば、仕方ないだろうか。塔のように長大な胴体が大蛇の如く波うち、しかもそれが()()()()など、〝魔法〟を知らねばロジカルに馬鹿馬鹿しくてやっていられない。


 防衛のための城壁もあっさりと飛び越され、今まさに危難に直面する国に――その最高支配権を持つエメリナ姫とて、愕然がくぜんとしていた。


「そ、そんな……まさか〝雷龍〟が、本当に魔王にくだっていたなんて……噂ではなかったとは……このままでは、国が……滅びてしまう……!」


「フム。……エメリナ姫、つかぬことを尋ねるが……あの雷龍とかいうのだけでなく、空を飛ぶ魔物などは他にも存在するのでは? であれば対空の手段もあると推察するが、にも関わらず、それほど危機感を抱くのは何故なぜだろう?」


「は、はい、仰る通り……むしろ空から襲い来る魔物など〝魔法〟の前では格好の獲物……のはずなのです、が。その……対空に無敵を誇る〝魔法〟というのが」


 何か問題あるのだろう、かんばしくない表情で、エメリナ姫は告げる。


「〝雷よ(サンダァ)〟――即ち天から()を呼び寄せる魔法、でして……」


「フム。なるほど、()龍……には、効果が薄そうであるな。ロジカルだ。が、それならそれで、地上から効果のある魔法を放っては?」


「っ。そ、それは……どれほど威力を高めても、着弾までには大いに威力ががれますし……そもそも空を舞う相手に、どれほど正確な術者でも、着弾させるのは困難です。大抵の魔法は、雷魔法より速度もゆるやかですし……」


「フム。……なるほど、ならば……」


 エメリナ姫から概要を聞き、条件を揃え――私は天才的頭脳をフル回転させる。

 その間に魔王軍の最高戦力たる〝雷龍〟が、その大口から牙を剥きだし、異形いぎょうの重低音で声を発した。


『オオオ……愚かなる人間共よ……その最たる存在、無意味な抵抗を続けるマジカリア国の姫よ……魔王軍の幹部を葬った報い、今こそ与えてくれよう……!』


「……へっ!? 幹部……? そ、そのような覚えはありませんが!?」


とぼけるな……牛鬼の魔物ミノタウルスが〝炎の魔法〟によって打ち倒された事実は、その直属の配下から聞き及んでおるわ!』


「そ、それはっ! ……え、そんなこと、ありましたっけ……?」


『おのれ、あくまでもしらばっくれるか! 奴は、奴は魔王様の……遠縁の親戚の子息として魔王軍に入り、特に実力は高くないが魔王様の血縁ということで幹部となり、それを鼻にかけて威張り散らし、魔王軍では引くほど嫌われていたが……!』


「良く存じませんが、むしろ葬られて良かったのでは?」


『されど魔王軍の最高戦力たる我にしてみれば、責任問題――此度こたびの件について何のリカバリーも無しでは、一体どんな叱責しっせきを受けるか分からぬ――!』


「そ、そうなのですか。大変ですね」


 エメリナ姫は同情しているようだが、〝雷龍〟がそれで治まるはずもなく、凶悪な牙を剥きだしにして咆哮ほうこうした――!


『これは、魔王軍を束ねる我の――いわば中間管理職の怒りと知れ――!!

 そして高待遇なら安定した収入を得られそうだなとホイホイ魔王軍に勧誘され、契約により従属せざるを得なくなった事への八つ当たりと知れ――!!』


「な、なんと身勝手なっ……ならばわたくしとて、この国の最高責任者! その責務を背負う者として、決して退しりぞきは致しません!」


『な、なにィッ!? 最高責任者、つまり企業のトップ……クッ、この雷龍の如何いかんともしがたい立場を知った上で、役職マウントを取ろうとは何と傲慢ごうまんなッ……許せぬ! 滅ぼしてくれるわァァァ!!』


(なんかブラック企業と経営者のぶつかり合いみたいな、俗っぽい感じになってきたな。まあ魔王軍はもちろん、こちらの国もロジカルに怪しく感じるが)


 なんだかな、と私が考えるも――されど〝雷龍〟の圧倒的な破壊力は、冗談では済まない。何せ飛翔しながら、国の至る所へ雷を落とせる、生ける天災の如き威容なのだ。


「あ、ああっ……国が、民がっ……わたくしは、どうすればっ……っ、ど、どうにか一撃、最大の魔力を籠めて、〝雷龍〟に一矢報いて……!」


 不退転の意志を見せれど、どうしようもない現状に、焦燥するエメリナ姫へと――私は、冷静に告げる。


「エメリナ姫。……一撃で落とせる相手でなことは、門外漢もんがいかんの私とて理解できる。魔力の無駄ゆえ、やめたほうがいい」


「なっ……ルーク様、そんなっ……では、諦めろと言うのですか――!?」


「諦める? フッ、ハハハッ……そのような言葉、科学者たる私は知らぬな! 成功とは無数の困難の上にあるモノ――失敗すら、諦める理由にはなるまいて! そも、これほどの条件が揃えば、あの程度は困難にすら成り得ぬ!」


「!? る……ルーク様……?」


 一歩、前に進み出た私は、私にとって最高の戦闘服を――()()を羽織る。

 そして、ロジカルを加速させる――()()を装着しながら、叫んだ――!



「今、〝魔法〟を〝科学〟で進化させ――

 新たなる可能性を、見せてくれる――!」

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