第10話 早朝、猫メイドが風雲急を告げる――エメリナ姫の書き置きとは?
ガッツリ一人で一夜を過ごし、良く眠って絶好調に頭が冴え冴えとしている――そんな私の耳に、悲鳴の如き声が聞こえてくる。
「たったたっ……大変ですニャア~~~!? ルークさまっ、エメリナ姫様が書き置きを残して行方不明になりましたンニャア~~~!!」
猫メイド・アビィが大声を上げながら、室内に飛び込んできた。その手には封筒に入った、彼女曰く書き置きであろう手紙が握られている。
「フム。書き置きを残しているからには、何か目的があっての失踪だろうが……アビィ氏は、内容を確認したのだろうか?」
「い、いいえですニャ。ルークさま宛と記されて、しかもメンドくせぇことにルーク様しか開けれねぇよう、魔法で封印されてますニャンから……急いで持ってきましたニャ! だだだから、ルークさまが早く開封しますニャ! 手紙はわたしが音読しますニャンから……」
「フッ……音読には及ばぬ。何せ昨日、アビィ氏にこの国の言語を教わってから……このタブレットで、寝る前に翻訳アプリを開発したゆえな!」
「いくらニャんでも早すぎニャろ、どんだけ天才なんニャ! ま、まあいいニャ、んじゃさっさと開けて読みますニャン!」
アビィから押し付けられるように渡された封筒を、言われた通りに開封し――まだ慣れぬ文字列へと、タブレットの画像機能を通し、翻訳アプリにスキャンさせる。
すると、少しの間を置いてから、音声読み上げ機能によって、エメリナ姫の書き残した伝言が読み上げられた……のだが。
〝親愛なるルーク様へ。あなた様へお伝え申し上げます〟
<恨み節たっぷりでお届けしますニャ。目ん玉ひん剥いて良く読めですニャ>
「……フム?」
「ニャンと?」
ちょっぴり、何やら、雑音のようなものが入り――猫メイド・アビィがマジマジと手紙を見つめ、怪訝な表情で言う。
「……〝親愛なるルーク様へ〟のくだりは、確かにありますニャンけど……<恨み節>云々は、どこにも書いてませんニャよ? どゆことですニャ?」
アビィの問いかけに、フム、と私は考え――閃きのまま答えを出す。
「恐らく、それは――文章を翻訳する際、書き手の心情を〝存在しない行間〟として認識し、自動で明確化する機能であろう――!」
「そんニャことあります!? 変なオプションつけてんじゃねーですニャ!?」
「いや、私自身も想定していなかった機能だが……まあパラレル・ワールドに跳躍してしまったことといい、天才ってそういうとこある。いやむしろ、天才のセンスが溢れた結果、予期せぬ機能を発生させたのやも……フーム、ロジカルである!」
「ええい満足してんじゃねーですニャ! てか〝ニャ〟は何ですニャ! これだとわたしが変な茶々いれてるみてーじゃねーですかニャ!」
「恐らくアビィ氏から言語を教わったから、自然と入ってしまったのだろうな。ロジカルである。ハッハッハ」
「なに笑ってんですニャ! ああもー仕方ねぇから続き、続きを読ませるですニャン! 結局、姫様なんて書き残してんニャ!?」
本題を促すアビィへと頷き、私は改めて翻訳アプリを起動する。
そうして読み上げられた、その内容とは――次のようなものであった。




