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Angeloser -エンジェルーザー-天使に押し付けられた能力で無双をできる訳でもなく…  作者: √宮ハルヒ
急章 そろそろ本格的な敵が出てくる的な?

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二十四話

「ははははははは…。この我に不意打ちとはいい度胸ではないか。この我を討伐しに来たのか?捧腹絶倒ほうふくぜっとうさせるな矮小わいしょう創生そうせいども」と颯爽と登場した吸血鬼さんだが、どうでもいい。


「おい。やっぱお前全然天使じゃないだろ」


 俺は襟を掴んで揺さぶる。


「な、何を…最大の侮辱ですよ…?」

「おーい。我の話を訊いておるのか?」


「は、ふざけるな。まだ見つかってなかったから、逃げられたのだぞ?」

「逃げる?逃げるなんて、何言ってるんですか。一緒に戦うんでしょう?私たちは一蓮托生いちれんたくしょうの仲ですよ」

「わ、何すんだよ。肩、組に来るな!」

「逃げんなよ…ですよ」


 取ってつけたような『ですよ』だな。度々キャラ崩壊しているじゃないか。


「聞いて…ますか?聞いてください」


 そうやって俺らは何も考えずに言い争っていた。ほぼ、取っ組み合いの喧嘩になる手前にツンツンと肩を突かれた。


「なんですか?」

「あの。吸血鬼……さんが、貴方たちが争っているからいじけちゃったんですけど」と指さした先には三角座りをした吸血鬼がいた。


 金髪金眼。錦上添花きんじょうてんか

 この世のものと形容するにはもったいない美女だった。これが小説でビジュアルを見せられないことに残念に思う。

 そんな美女が泣きそうになっている。


「……すいません……」


 ただ謝罪するしかない。


「でも、貴方は美しい。結婚でもどうだい?」

「死ね」


 天使にぶっ叩かれた。


「なんだ。その夫婦めおと漫才は。まあまあ我は寛容かんようであるからなゆるそう」とちょっとしおれた。

「夫婦漫才は、最も屈辱的な表現です。訂正してください。訂正しろおおお」


 圧が凄い。天使じゃない。


「う……う…」

「また泣きそうじゃないですか」

「す、すみません……」


 イプシロンには従順な天使だった。なんだよお前。


「まあよい。気を取り直して、ふふふふ。あ、ははははは」

 めいいっぱい腰を反らして高笑いを始めた。調子いいこと。さっきまで、いじけていたじゃないかと可愛い子を見るような目で見た。


「狂ったぞ」

「狂っておらぬ。高笑いは吸血鬼的慣習なのだ。我慢せい」


 …………。こいつ変な奴だなと第一印象は決まった。いや、むしろ普通か?そういうキャラ付のものも多いし、結構テンプレートでは。


「我は吸血鬼。人類が高度文明を築く前からいた永劫えいごうの民族。そして、魔王の幹部。魔王の野望は我らの野望。よってこの帝国を曠野こうやに返し、あまねく人類を我らの手で飼ってやる」


 意気揚々と悪魔的な演説を行った。

 典型的で、古典的な、悪役と言った感じだった。おごり高ぶり全てを見下している。プライドが高く自己中心みたいなやるだな

 そして、彼女は何やら魔法を唱えた。


「我が股肱。ドラゴンのサーベルよ。いでたもう」


 ちょっと待て。ドラゴンだと?ドラゴンは勘弁してくれ。前も会ったので物語的に変わり映えしないだろ。ちょっとは構成考えろ。

 俺はこんなメタ発言をしておいて、これをどうやって華麗に倒せることが出来るのかは考えられない。


 全部天使に丸投げなので何も考えられないのである。頑張れ天使。倒しやすそうなのがいいねと心の中で応援すると、魔法陣から出てきたのは死んだドラゴンだった。

 あれ?ああれ?

 ちょっと待てこう死んでいるのが驚きだったが、それ以上に驚きなものがあった。


「ちょっと天使さんや。あれは前倒されたドラゴンでは?」

「まあそんな見覚えがないこともない」

「あ、あれ?サーベント?サーベント?どうなっている。何年も経てばこうなっているのか?」


 あああ。と絶望した。

 絶望した悪役が現れたのだから、天使は意気揚々とぐーで行こうとしている。

 待つと言うお約束は天使は効かない。


 拳を作り、突き出した。なんなくかわされた。

「そ、そんなエンジェルパンチングが……」

「相変わらずゴミなネーミングセンスだ」


「ふははは。こんな華奢なパンチごときがこの我が倒される訳ないだろう。馬鹿にしておるのか。ふふふははは」と海老ぞりで滑稽な馬鹿の仕方をした。


「ぐぬぬ。これでは。か、勝てないですよ。降伏しません?皆幸福ですよ?」

「するかよ」

「降伏か。まあ。この帝国が、我ら魔族に全面降伏し、領土を明け渡し、民草を全て隷属させたなら、おもんぱかる機会を与えてやろう。なあに根絶やしよりもマシだろう?」


 実に悪魔らしい要求だった。

 すぐさま天使は「ああ。私天使関係ない」と言った。ゴミだった。


「はは。馬鹿だな。関係大ありだろう?お前はそうだな。体がいいから慰みものにでもなるといい」と言った。


「あ?」

 これが天使の逆鱗に触れ、もう一発、さっきと比べ物にならない拳を突き出した。翅を展開させた所が本気度合いを示しているだろう。


「そうか。意見が食い違ったなら、やっぱり戦争しかないな。悪くない話だと思ったのに」


 薄ら笑いを浮かべる吸血鬼。

 やたらとそれに呼応するように口角を上げる天使。戦いの火蓋は切られたようだった。


 これは離れた方がいい。

 俺は無理にイプシロンの手を取り、当然嫌そうな顔をされたが、そんなの関係ない。後方へ後退していく。

 その刹那、吸血鬼と天使が拳と拳がぶつかった。

 何とも、面白い字面の戦いであるが、悠長に言っていられない。衝撃波は物凄いものがあった。

どんだけ戦闘民族なんだよ。


「あははははは。まあまあ伯仲はくちゅうするじゃないか。羽のある獣人よ」

「獣人ではありません。もっと触れがたく犯しがたい神聖なるものですよ。それを慰みものとは貴方は私が処理します」


「大口叩いてくれるじゃないか。じゃあこれはどうかね」


 そういうと、吸血鬼は自身の腕に傷を入れた。当然血が出る。

 しかし、その血液は重力に従って、落下することはなく寧ろ上昇した。上昇し、血液によって何やら剣のような武器が作られた。

 ぶるぶると震えて電動鋸でんどうのこぎりのようになっている。


「なんですか……それは……」と天使はおののいた。

「なんだそれはと言ってもご覧の通りですよ。貴方を絶命させる武器だが。なにか」

「でも、液体から作られてるじゃないですか。ということは……」


「大丈夫な訳ないだろおおおお」と俺は遠見の見物からツッコミを入れた。

 このままだと何も考えず殺されそうだ。


「油断は禁物だろ?我が、吸血鬼に反逆する愚か者よ。十二分に後悔するがよい」


 そう言って彼女は攻撃を仕向けた。

 と言っても彼女の位置が変わったと言うことはない。彼女が生成した武具は飛び道具に変化した。

 液体だからそうもできると言えば理屈は通るが……どうも納得感はない。

 まさに油断禁物だった。


「うわっ。ちょっ……ひ、卑怯ですよ?人道的な戦争をしましょうよ」


 天使は間一髪のところで避けてすぐに文句を喚いた。


「人道的?戦争とはほど遠い言葉だな。初めてだ。そこまで愚かな言葉を聞いたのは」


 言われてんぞ。天使ちゃんよ。くっと悔しそうな眼を見せる。


「貴方のその能力は高く買います」


 そう言って一歩足を後退させる。


「しかし、私が弱いと言うことではありません。私には足枷があって貴方は無制限なだけ……」


 また、一歩後退させる。


「つまりそれは、アウトバーンと一般道路くらい違う」


 懲りずに一歩後退。


「いや、アウトバーンと一般道路くらい違うと言うインスタンスが我にとって不明瞭なのだが……」と吸血鬼がツッコむと、もとのところに天使の姿は確認できなかった。


「あれ……」


 思わず俺は呟いたが、あれ天使がこっちに来ていないか?

 全速力で向かってきた。


「無理だあああああああ」とか言ってそのまま追い抜かれていった。

 その状況に誰もがおいてかれたと思う。


「え?アイツ……え?嘘でしょう?」


 当然、吸血鬼は当惑を隠せないでいた。さっきまで血の気の多い奴が、一目散に逃亡を図ったのだから、そりゃそんな雰囲気になってしまう。


 僕らも呆然となっていて、しばらくしたが、こんなことしていては、あの吸血鬼に腹いせとして惨殺されてしまう。


「おい、イプシロン逃げるぞ」

「気安く私に話掛けないで。もっと尊敬する人のように丁寧で、謙譲的な敬語を使ってください」


 欲張りな奴であると突っ込みたかったが、そんな余裕は僕らにはない。


「創造主様もお考えがあるのでしょう」


 ないぞ。そんなの。あるのは保身だけだ。


「しかし、今は私が時間を稼いだ方がいいでしょう。ちなみに私も魔法が使えるんですよ」と、そういって何かしらを具現化しようとした。一瞬剣のようなものが生成された気がしたのだが、すぐに消えた。


「あ、あれ……。そんなはずでは……」


 思っていたのと違うらしい。

 ああ。多分あれだな俺のせいだな。いや天使のせいか。まああの能力のせいだ。

 どうしたって頑張ってもどうにもできないだろう。

 やっぱりこいつには予告など必要ない。無駄なやり取りが増えるだけだ。

 例にもれず、強引に彼女の手を引っ張り、天使を追っかけて行った。


 僕らに逃げられてもまだ気づかない吸血鬼。天使がなぜ逃亡を図ったのかが、どうも納得いってないらしい。それについて考えに耽ってくれていた。

 好都合で、俺らはその間に逃げることに成功した。

 

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