十七話
め、目の前に居られるのは、こ、この州を治めるものなのか……。ヤバい。ヤバい人とのコネクションを作るチャンスではないか。
これは前世、前世と言う感じもしないけれど、それと同じような、地位へ上がれるのでは?
「うへへへっっへ」
「キモイ。ただただキモい。路傍の石をひっくり返したときぐらいキモイ」
意味もなく打ってくる天使。脳震盪になったくらいの強さ。頭を抱える。
「すみませんね。テスラ=ロイジアナさん」
「テスラ、テスラで構わないわ」
「テスラね。分かりました」
くっそ天使は取り繕うのが上手い。
態度コロコロ変わり過ぎるだろ。
「なら私も自己紹介をした方がいいですね」とメイドさんが手を挙げた。
「私はロイジアナ家に仕える使用人のイプシロンです。因みに言うと男が苦手です。そこの人余り近付かないでください」
「は?へ」
初手近づくな宣言……?最悪じゃねえか。俺が美少女好きと知っての当てつけか?それなら巧妙な技過ぎる。
「あははは」
天使はいやらしい笑みを浮かべて何も勝っていないのに勝ち誇った顔をしている。いい加減死ねよ。
「イプシロン。いいや。イプ氏。最高です」
「イプ氏?」
「ネーミングセンスゼロかよ」
「は?何をお?喧嘩か?喧嘩ですか?」
「そんな狭い馬車の中で出来るかいな」
「私は創造主様を支持しますけど」
だから、なんだよ。その天使一〇〇パーセントの信頼度は。
もう。とか思いながらも自己紹介とやらをしてみんとす。
「俺は物部チハヤです」
「まだ物部を名乗る気なのですか?」
「当たり前じゃんか。俺は物部であってそれ以上でもそれ以下でもないだ」
「そ……」と天使は呆れかえった。
俺はその様子を見せる天使にムカついて仕方がなかった。
「次は天使だよな」
「創造主様は結構でございます。創造主様は創造主様であって創造主様以外他ありません」
「だから、創造主様じゃなくて……」
「天使。天使でいいのですか」とお嬢さんは訊いてくる。
「ええ結構ですよ。天使でも、エンジェルでも、チョンサでも、ティエンシンでも」
日本語、英語、韓国語、中国語で天使かよ。高度過ぎるボケは滑っているのと変わらないだろう。てか、世界違うのに日本語が通じる話もない。
こんなの相手にしない方がましだ。
「ところで、この馬車はどこへ向かっているんですか」と、話題の転換を図った。
「ああ。わたくしの屋敷です。州会議所とも言いますが」
「どれぐらい?」
「もうちょっとですわ」
そう言いながらも馬車に揺られること一時間か、ちょっとだろうか。
窓の外を見るにすでに町の中であった。さっきの町よりは二回りか、それ以上は小さいそんな町。
ここがこのテスラが治める州の州都だろうか。まあまあ活気はあると言えた。
その中を大名行列のように突っ切っていく。
人々は領主さま。領主さまと声を上げる。俺は王にでもなった気分であったが、されど心の中ではその空気が何とも恥ずかしく思えた。
俺は意識的に頭を下げてやや、身を隠す動きをした。
これは俺らがこの国において指名手配されているためという理由にも起因している。天使は陽気に手を振っているから無意味だろうけど。なんでアイツ隠さねえんだ?バカか?捕まりたいのか?
俺はそんな不安を抱えながら、この町で確実に一番大きい屋敷に入った。
ドイツの国会議事堂にも似た建物へ入って行った。
え?もしかしてガチでヤバい人ではないのか?
俺大分失礼だったけど、殺されない?そんな恐怖を抱えながら屋敷へと降り立ったのだった。




