十五話
「メイドさん?でいいのですかね?」
私はそこで涙を流しながらへたり込んでいるたった一人で戦っていたメイドさんに向けて言葉を発しました。
「……」
ぼおっとした表情を浮かべながら、彼女は私を眺めていました。それにどうしていいか分からなくなり、適当に言葉を紡ごうとしました。
「いやあ。あの。すぐ倒してしまいまして……。うん。え……」
応答がない会話と言うのはこんなにも気まずいものなのですか。
その点で言えば、色々と気に食わないところもありますが、チハヤさんとの会話は意外とやりやすかったと言えます。
「創造主様ですか……。創造主様はこのような形をしているのですか?」
「ん?」
創造主?そんなことを言われる言われはないのだけれど……。ああ。この翅故でしょうか。
「創造主様とは誰ですか?」
「この世界を作った人です」
ほう。まさにキリスト教とか、そういう話だろうか。そういうのは興味がなくて、はっきり言ってどうでもいい
だから私は濁す様に「私は創造主ではありませんけれど、それに最も近い存在でしょう」と当たらずとも遠からず、安全圏からの物言いをした。
「あ……。あ」
顔を俯かせました。暗い顔を浮かべてしまったらしい。天使としては最悪の行為ですね。
さて、これをどうしようと、私は次の手を考えている最中、守るようにある彼女の後方にある馬車の扉が開きました。
「終わった……のでしょうか?」と恐る恐ると言ったような形か。白髪の美人さんが登場しました。
「ああ。我が当主様」
「イプシロン……。そんな傷だらけで、わ、わたくしも戦わせてくれとあれだけ……」
「いいえ、当主様は……」
ガックシと膝を崩したメイドさんを白髪の美人さんが抱きかかえました。
そして、暫時、抱擁していました。すると私の方を見ました。ムードを破壊している人を見るかのような目線で。
「あの。貴方は誰ですか……?」
おっと今更私に気づいたのですか?驚きですね。
ジロジロと私を見回して吟味した結果、その白髪の美人さんは「鳥…。と、いうことは獣人とかその類でしょうか」と結論づけた。
全くもって違う。やめて欲しい。冗談でもそれは面白くありませんよ?
私はきっぱりとすっぱりと否定をしようとすると、そのメイドさんが先んじて口を開いた。
「こちら創造主様です」と。
「違いますけど」
「違うんですか」
「いいえ。当主様。この方こそ創造主様であるとこのメイド、愚考ながらそう致します」
「しかし、創造主様を……う…ん」
私の翅を見ていた。
「わたくしにはどう考えても獣人としか……」
「私はこの目で見ました。創造主様がこのドラゴンを一発でお仕留めになる所を」
「ど、ドラゴンを一撃で?」
白髪の美人さんの私を見る目が変わりました。
それは創造主様としてではなく、獣人としてではなく増しては天使としてではなかった。
兵を見る目だった。
「あ、貴方は何者なのですか?」
そういうことを訊いた。
「だから創造主様と」
流れを寸断するな。このメイドさんは困った人だ。
私は極正直に「天使です」と言った。
「天使?天使……天使。てんしかああ」
あれ?目がどんどんと変わっていた。
「まれに獣人でそういう嘘を吐く輩がいるんですよ。だからその類の嘘と……」
「ち。違うわい。全然。どこからどう見ても」と私はくるりと回転して、全身を見せた。
「ですが、ドラゴンを倒したと言うのは本当なのでしょう。その全身の血と、オーラで分かりますから。ほら、貴方の綺麗な翅が穢れてしまっていますよ。ぜひ迷惑でなければ、我が屋敷においでください」
確かに、私は血塗れだった。
これでは天使としてよろしくない。お言葉に甘えてることにした。
というか当初の目的であるお賃金をもらっていない。それを果たさなければチハヤさんに自慢できない。あれ、待ってチハヤさんは?




