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Angeloser -エンジェルーザー-天使に押し付けられた能力で無双をできる訳でもなく…  作者: √宮ハルヒ
破章 やっと異世界ファンタジーっぽいのではないかと思う

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十四話

「じゃあ。あの魔物に襲われている馬車は本物?」


 俺の眼前に見える光景は絢爛豪華けんらんごうかな馬車を取り囲むように実に武骨なデザインをしているドラゴンが襲っていた。


 そして、そのドラゴンと奮闘を、と言っても明らかに分が悪い戦いをしているのはメイド服を着た可愛い少女だった。結構好みだ。


 けれど、そんな美少女が戦っていることは許せない。兵士はどうした。兵士は。と思ったのだが、周りに血しぶきが飛び散っている。多分防衛していた兵士の一人や二人は死んだと言うことだろう。


 あんな馬車を所有しているくらいだから貴族かなんかだろう。助けたら金でももらえるかなとか不純な考えが過る。いや、不純異性交遊でもいい。


「勿論」と天使の絶望的な返答を返されて現実に戻った。


 ああー。いかにも異世界的イベントじゃないか。やっと異世界に来たのかという気分になった。なっただけで、ドラゴンだとか言う慣れ親しんだ姿をしているだけで化け物だった。


「う~ん。無理」


 異世界転生していないし、追放されていないし、悪役令嬢じゃないし……無理ぃ。俺は恥も外聞も捨て来た道を折り返した。


「待ちなさいよ」


 天使は俺の肩を掴み引き留めにかかった。


「俺を殺すつもりかああ。俺はお前のようにフィジカルは強くないのは誰が見ても明らかだろ。ドラゴンなんて来た瞬間殺されるだけだ!」

「あのイベント、お金貰えそうじゃないですか。もうこんな暑い思いして、長距離歩くの嫌なんですよ。本来天使は地に足を付ける行為自体がはばかられるんですよ」

「それでもドラゴンを倒しに行く方が嫌だが」

「知ったこっちゃない」

「行きましょうよ。貴族だと思いますからお賃金いっぱい貰いますよ。いや、絞れるだけ絞りますよおおおお」


 おー。と天高く腕を振り上げている。

 対照的に俺は随分と冷めきっている。


「でも、俺お前のクソ能力が……」

「あっ」


 あっ。て何だよ。用事がある日に皆で遊びに行く計画を立てているのを傍から聞いているようじゃないか。


「まあ。私が成果上げてもお賃金上げませんからね。はははっ」と言って、天使ははねを広げて、ドラゴンの方に走り去った。


 天使の翅を初めて見た。本当に天使だったのかと信じかけた。


「待ってろおおおお。私のお賃金……」


 人が死んでいるのにそれを金としか見られないのは相当なゴミクズだ。悪魔だ。

 まあ。それは、それとして、俺は百八十度方向転換する。こんなところいてられるかよ。俺が死ぬ。

 俺は天使とは真反対に走り去った。



 どうしてこうなってしまったのでしょうか。


 仲間が無残に、圧倒的な暴力に倒れていく。惨めに、赤いスライムのようなものを目から、鼻から、腹から、垂れ流している。ああ。このようになりたくない。

我が敬愛するご当主様にだけはこのような姿になって欲しくないのです。


 私の手筈に抜かりはなかった筈です。ルートの選定は帝国に委任した筈です。しかし、この惨憺さんたんたる悲劇は何なのでしょうか。帝国が中抜きして、子供の落書きが如きルート選定をしたのでしょうか。例え真実であろうとも、そんなことはどうでもいいのです。どうして、こんなところにあんな化け物がいるのでしょう。ああ。教えてください。創造主様あなたさま


 私に試練をお与えになるなんて、そんなのあんまりではありませんか。

 皆は私を持ち上げますが、非力で、弱くて、紅茶を淹れるくらいしか取り柄のない女の子なのです。

 なのに、こんな格好の悪い剣を握り占めて、どうして、化け物と戦っているのでしょう。


 ああ。手が痛い。どれほどこの剣を握り続けてきたのでしょう。

 一時間、一日、一週間、一か月、一年……。おそらくは一番最初が正解でしょう。しかし、この際時間などどうでもいいのです。


 そろそろ私も限界ということです。

 しかし、私が倒れれば、ご当主様はどうなるのでしょう。


 A,死にます


 実に簡単な設問じゃあないですか。そんなこと私には許せません。それでも、私の身体からだは許してくれませんでした。


 震えて、震えて、震えて、手が痙攣けいれんを起こしてきました。

 そしてついには剣を手放してしまいました。


 ああ……。ああああああああああ。


 どうしましょう。どうしましょう。化け物はもう目の前なのです。

 なのに、戦う術のない私はどうしましょう。


 どうしましょう。どうしましょう。段々、目からなみだが溢れてくるのです。

 守れなかった恐怖よりも、目の前の死ぬと言う恐怖の方大きいのはどうしましょう。


 臨終りんじゅうのときはこうして人は狂っていくのでしょうか。諦めが脳裡のうりを支配するのでしょうか。分かりません。分かりません。


 ただ、食べられるのでしょう。どうか。誰も見ないでください。

 醜い私を……。


 ……。


 ぐちゃり。


 脳に這入はいって来た音はこれだけでした。私が食べられた音ではありませんでした。

 目を開いてみるに、化け物が倒れていました。腹部中央がぽっかりと穴が開いていたのです。


 その化け物の上に何やら人が立っていました。いや、人ではありませんでした。


「あちゃー。このドラゴン、高く売れるのなら、綺麗に殺せば良かったですね。失敗失敗」

 

天使様あなたさまでした。



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