十三話
日が照り付ける。
前世と言うか。前の世界の日本でも毎年、毎年、最高年度を更新していたあの日々があったが、これほどではなかったはずだ。ああ。どうしてこんなにも暑いのだろうか。
最初の長距離を歩いた奴は日が沈んでいて、涼しかったのを覚えている。
てか、ずっと歩いてばかりだな。もっとトントンと楽して、美少女とイチャコラしたいのだが?こんなクソ天使は返却してさ。これは果たして異世界ものなのか?
「なあ。熱いのだが」
「知りませんよお。公転軌道が地球よりも内側なんじゃないですか……」
「天使が言うと本当にそうみたいじゃないか」
「私が言うことに間違いはありませんし、間違いなら後々本当にします」
「暴力的だ」
こいつが堕天するのは必然だったのだろう。こんな危険な奴天にいて欲しくない。
「に、しても言う通り暑いですね。ほぼほぼ熱波を浴びているようですよ。もう翅を使って飛んでいってしまおうかな。天使に出来る物理的スキップですよ」
「おいおい。置いて行くなよ?マジで」
「あー。大丈夫ですよ。捨てていくんですよ」
「言葉の綾の問題じゃない」
そんなこと言われたら疑いの目線しか向けられない。手でもがっしり掴んだり、果てには愛玩動物のように首輪をしないと不安だ。ペットは天使。良い響きだ。
「なんか。不穏なこと考えていませんか?」
勘が鋭いな。厄介極まりない。
「まあ。何でも」と苦笑いした。そんなこんなでこんな与太話に花を咲かせていると、何か見えて来た。
「なんか、危なそうな看板が立ててあるんだが」
暫くするとどでかい看板が荒野の中に一つ立っているのだ。止まらない訳にはいかない。
そこには文字だけではなく絵が描いてある。絵のクオリティは高く、化け物っぽいものが書かれてあって不気味さを放っていた。
「ああ。実際危ないと思いますよ」
「やっぱり?」
「見れば分かるでしょう?」
「分かるが、なんだ。この看板は?霊媒師とか悪魔信仰をしている地域とかか?」
「そんな想像力豊かになれるんですね…」
「で、なんて書いてんだ?すっと教えろよ?クイズしに来たんじゃないから」
「そんなこと言われると言う気無くなるじゃないですか」
「いいから早く言え」
「えっとですね。あー。警告。ここから先は魔物多発地域。魔物に遭遇した場合速やかに退避をお願いします。帝国国家安全防衛委員会…」
「は?え……?大丈夫?」
「大丈夫ですよ。魔物なんてこの世界の来てから殆ど見てないでしょう?」
「とは言え油断禁物だろう?」
ほら、初っ端、我々は赤いスライムに吹き飛ばされて、最終的に帝国に指名手配されると言う失態を犯したじゃないか。慎重になるくらい当たり前だ。
「ははは。ビビりですねえ。チハヤさんは、なんもないですよ」と天使は楽観的に言った。どうしてそうなれる。
ははは。汗が出てくるぜ。
ああ。暑すぎてだよ。暑すぎて……。ん。なんだ。あれは。眼前に広がる景色は。
この感覚はデジャブだった。具体的には一番初めの……。
「なあ。天使よ」
「なああんですかあ?」と脱力的な返答を彼女はした。
「俺の目は大丈夫なのか?」
「ん?何を訊いているのですか?私が美しすぎるあまりの誉め言葉ですか?それならそこまで上手いおべんちゃらには聞こえませんけど……」
「ち、違う。違う。そんなことじゃあない。じゃあ。あのドラゴンっぽいものに襲われている馬車は本物?」
暑かったのはアイツのせいらしい。




