072:黒原の選択
神条ダンジョンから、天真たちのあとを追うと、俺たちが知らない通路……というより、強引に開けた穴があいていた。
どうやらその先へと進めそうな感じなので、その穴の先へと進む……。
なんだこれは……。
中央に祭壇のようなものと、そこからせりあがった台? のようなものが見え、少し離れた場所に、見たことがない空間がある。
「黒原さん、これってなんでしょうか……」
そんなことを聞かれても、俺にはまったくわからない。返答に困っていると、俺たちの指導者の鈴高宏が答える。
「これは、ほかの場所へと移動するポータルではないでしょうか」
「ポータル?」
ファンタジーか何かで、ポータルの存在は聞いたことはある。架空のものではなかったのか? しかも、天真たちは、ここを通ってどこかへ移動したのか?
俺は躊躇するが、天真が通っていたんなら、俺たちも問題なくいけるはず。
覚悟を決め……。
「俺たちも、この先へ行くぞ」
「えっ! 大丈夫なんすっか?」
「天真たちが行っているんだ。問題ないだろう」
俺が率先して、ポータルを潜ろうとすると……。
「黒原様。この先へは、さすがに私が先行します」
黒原の行動を制止し、鈴高がポータルへと足を進める。
「では、次に私が入ります。問題なければすぐ戻りますが、三十秒で戻らなければ、全員撤退するようお願いします」
そう言い残し、サブリーダーの丸川もポータルに入り姿を消す。
その後、指定された三十秒間は反応なし。
「く、黒原さん……三十秒過ぎましたよ……」
「ああ、わかってる!」
パーティーメンバーの後押しで、黒原はようやく一歩踏み出す。
率先して入ろうとしたはずが、鈴高と丸川の反応を見て尻込みしてしまったが、ポータルをくぐり、その先へと移動する。
移動すると、先行して侵入した鈴高と丸川が、唖然としてダンジョンの先を見つめている。
「何をぼーっとしてんだ!」
俺は鈴高に声をかける。
「ま……魔物の気配が全くありません」
「あいつらが全滅させたんじゃないのか? 天真以外の三人は、かなり優秀だからな」
「いや、しかし……」
言い淀む鈴高の前に出ると……。
「先に進むぞ。奴らがこのペースで進んでいるなら、急いだほうがいいだろう。奴らの背後を取ってリベンジだ」
「は、はい……」
この階層にまだいると思っていたが、既に次の階層とは、少し計算が違った。
だが、さすがに次の階層で追いつくだろう。
最後尾は、腰巾着の天真に決まっている。追いついたらソッコーで不意打ちしてやろう!
小走り気味にダンジョンを進む。
その途中には、ところどころ戦闘した形跡が残っている。
魔物が使用していたと思われる武器、戦闘中に破損した魔物の部位……。
「うえっ! 黒原さん、あそこに落ちてんのって、ゴブリンか何かの手首ですよね……」
「討伐されたときに、魔物と一緒に消えないんっすね」
その疑問に、鈴高が回答する。
「本来は、魔物が討伐された時点で、その部位も消えるはずですが、イレギュラー的に残る場合があるようです。例えば、あまりにも早く、魔物が討伐された時には、イレギュラーが発生すると言われています」
つまりは、それほど早く、奴らが魔物を討伐したってことなのか……。
まさか、ありえないだろう。
黒原たち……特に黒原は、黄昏の月を軽んじている 。
この浅はかさが、今後、自分たちに不幸をもたらすことになる。
まあ……ざまぁ以外の言葉は出てこないんだけどな……。




