065:最奥へ
翌週土曜日の朝、オレたちパーティーメンバー四名、藍澤代表、アイさん、藍澤代表のセキュリティー四名の計十名が神条ダンジョン前に集まっている。
このダンジョンの入り口前に十名は何とも狭苦しい。もしかしたら、このダンジョンが始まって以来のことかもしれない。
藍澤代表が同行することで、保安面の不安があったんだけど、どうやら午前中いっぱいは貸し切りになっているらしいので、保安面の心配はなくなった。
代表のセキュリティ二名が、神条ダンジョン入口に待機するので、万が一の場合には身を挺して対応するとのこと。
神主さんとメグミ姉さんは、遠巻きにこちらを見ているだけ。姉さんが小さく手首を振っているのが見えたので、軽く会釈をしておく。
「では代表、行きましょうか」
「ああ、頼むよ」
オレは藍澤代表に声を掛けたあと、パーティーメンバーにパターンB・・・・・・オレが先行するフォーメーションで進む指示をして、ダンジョンへと侵入していく。
今日、オレは敢えてドローンを装備していない。
さほど深い考えはないんだけど、ドローン情報に頼らない、現状の実力だけを見てもらうためだ。
まあ、このダンジョンではハムハムしか出現しないから、実力というよりは戦闘時や移動時の状況判断等を、生に伝えられればってのが正直なところ。
ちなみに藍澤代表は、自社ドローンを従えて、ドローンとリンクしているゴーグルを装備している。
オレたちは、まっすぐの通路を進んでいくと、魔物との遭遇がないまま分岐まで15m手前辺りで、ミクからの情報が共有される。
「分岐先の東西共に魔物の気配が一体ずつ。距離は分岐から5m程度」
ハンドサインで西側がオレ、東側をミクとアネゴが対応するよう指示を出し、分岐手前まで移動し一旦停止をする。
そして、攻撃のハンドサインを出し、全員が行動を開始する。
オレは東側に身体を向けて分岐点に侵入すると、5m先のハムハムに向けて二十式魔銃のトリガーを絞る。
魔弾はハムハムに命中し魔石に変わる。
それとほぼ同時に、後方から魔弾が発射される音が二度聞こえる。
オレが回収した魔石は【魔石+1】だったが、ミクとアネゴが回収した魔石は【魔石+2】だった。
未だに【魔石+2】が出る種明かしをすると、定期的にあずささんのために、こっそりベアリングを吸収させているんだけど、これはみんなには秘密にしている。
ただ、ミク、アネゴ、ヒメからジト目で見られているので、どうやらオレの行動はバレバレっぽい・・・・・・。
「中々手際が良いな。とても今年ダンジョンデビューした高校生とは思えないほどだ。アイ君、彼は誰かに師事されているのか?」
「いえ、誰にも師事されてないと思われます。ほぼ独学かと・・・・・・。強いて言うなら、クラスメートのオニク、博士と呼ばれる友人との情報交換が大きいと考えられます」
「なるほど・・・・・・赤陵高等学校は、案外逸材が揃っているのかもしれんな」
気を取り直し、更に歩みを進める。
東側通路を進んだ突き当たりに到着した。ここは、初めて隠し通路を発見した場所だ。
「アネゴ」
隠し通路がある場所を指し、アネゴに声を掛けると、オレの声に頷くアネゴは魔銃を片手にその場へと近づき、魔銃のフロントでスパイク攻撃を行う。
ガツン!
魔銃化されたストライクガンのフロントによる鈍い打撃音で、壁には亀裂が入り、一部は剥がれて壁の向こう側が見える状態になっている。
何が起きたか分からず、驚いている藍澤代表を尻目に、その亀裂に向けて前蹴りをすると、亀裂が入った壁はぶち抜かれ、体半分を入れて覗き込めるほどの穴が開いた。
「ここは、ダンジョンの隠しアイテムがあった場所になります」
「ダンジョン内には、こんなところが存在しているのか・・・・・・」
「はい。自分の場合、ダンジョンに潜る直前に地震が発生し、偶然この場所に出来た亀裂で隠し通路を発見しました。自分の予測になるんですが、各ダンジョンにある隠しアイテムを揃えた状態で操作できる中枢の部屋へ進むと、ダンジョンマスターの条件を満たすんじゃないかと考えています」
納得したのか悩んでいるのか、非常に難しい表情を浮かべている藍澤代表。これ以上は説明することがなかったので、オレたちは特に声を掛けることなく先へと足を向ける。
何度かハムハムと遭遇したので、その都度そつなく討伐し中枢への入口前へと到着した。
「この先ですね・・・・・・。アネゴ」
「ん」
簡単なやり取りで何をしたいのか理解したアネゴは、魔銃を片手にその場へと近づいていく。
ガツン! ガツン!! ガツン!!!
いつもは一度しか行わない、魔銃化したストライクガンのフロントで散開も攻撃をする。
その壁には思った以上に出来た亀裂と共に、かなりの箇所が剥がれ落ちて壁の向こう側が見える状態になっている。
「アネゴ、やりすぎ・・・・・・」
「大フィーバー発生しましたぁw」
パチンコかよ。まあ、らくらく壁も壊せそうなので問題ないか。
ガツンと前蹴りをすると、余裕で人が入れるほどの穴が空いたので、オレを筆頭に全員が須戸へと移動する。
「なんだこの部屋は・・・・・・」
驚きの声を上げる藍澤代表。
アイさんと代表のセキュリティは、声こそ上げないが唖然としながら部屋を見渡している。
オレはその状況を楽しみながら、祭壇からせり上がったスタンドに歩み寄ると、パネルにタッチする。
すると、前回同様に画面が表示される。
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変更したい設定を選んでください。
▶【難易度】
【ドロップ】
【接続】
【■■■■】
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この画面を覗き揉む藍澤代表は、困惑の表情を浮かべる。
「なんだ、この文字は・・・・・・」
どうやら、祭壇に設置されたスタンドの画面に表示された文字は、藍澤代表を含めたメンバー全員は読むことができないようだ。これは、ダンジョンマスター以外には認識不可能なのかもしれない。
「残念ながら、私たちでは文字を読むことができないらしい・・・・・・」
「藍澤代表。この場所をタッチしてもらえますか」
【難易度】と書かれた場所をタッチしてもらうようお願いする。オレたちなら、個々をタッチすれば次画面へと移行するはず。
オレの指示に従い、藍澤代表がその箇所をタッチすると・・・・・・全く反応することはなかった。
「どうやらダンジョンマスター認定されないと、操作も出来ないようですね」
複雑な表情を浮かべながらも、ある意味納得の表情をする藍澤代表。
とりあえず、認識できない文字が何かを説明する。
【難易度】【ドロップ】【接続】がどういうものかということを・・・・・・。
難易度とドロップについては、想像の範疇だったようだが、藍澤代表の中では接続が行えることに、かなり興味を示していた。
とは言うものの、現状では川越ダンジョンしか移動する選択肢しかない。
それでも、藍澤代表はそれを要望した。
「では、川越ダンジョンへ繋げます」
コントロールパネロを操作し、川越ダンジョンへと繋ぐよう操作すると、目の前にはポータルが表示される。
オレたち以外は、それを見て驚愕する。
「では、川越ダンジョンへ移動しましょう」
そう声を掛けて、オレたちはポータルに入って川越ダンジョンの祭壇へと移動する。
オレたちパーティーメンバー四人は移動したが、それに追随する者はすぐにはいない・・・・・・。
あれ? 説明不足で躊躇してるのか・・・・・・。
少し待っていると、神条ダンジョンからのポータルから、アイさんの姿が現れる。
なるほど。誰が先に行くのか検討した上、先行がアイさんになったってことか・・・・・・。
そして、ポータルからは藍澤代表とセキュリティ二名と、藍澤代表が装着したゴーグルとリンクしているドローンが移動する。
「おお、まさか・・・」
移動後、ドローンからの情報で、神条ダンジョンから川越ダンジョンへと移動したことを認識し、困惑しながらも藍澤代表は納得しようと思考を巡らせている様子。
「これはなかなか・・・・・・」
なんだろう。すげー怖い顔をしているんだけど、状況的になんかいろいろ思考を巡らせているのか? ちょっとオレには理解ができない状況なんだが……。
「天真君。もう少し細かな契約を交わす必要がありそうだな。大丈夫。うちの法務と相談してもらって、悪いようにしないからな・・・・・・」
うひゃ・・・・・・。なんだかちょっと面倒な状況になりそうなんですけど・・・・・・。




