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スキル操作で現代ダンジョンを生き抜く!  作者: ももんが


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029:訪問者

 ドローンの微妙な挙動に愕然としている中、第一組のグループ予選が終了した。

 予選突破したパーティーは、優勝候補の『赤城サンブレイク』が予想通り通過したようだ。


「皆様。念のため予選ルールの最終確認を致します」


 アイさんはそう言いながら、予選のルールをまとめた一枚の資料を全員に手渡たされる。


■川越ダンジョンまつり予選用資料

・使用エリア

 1F/B1/B2の3エリア

・制限時間

 三十分間

・予選通過条件

 討伐魔物ポイント総計+ドロップ品買取価格総計が最も高いパーティー

・換算ポイント

 魔物一体:1000P

 魔石 1:500P

 魔石 2:5000P

 魔石 3:10000P

 攻撃+1:50000P

 攻撃+2:100000P

・魔物ドロップ魔石

 魔石 1:ゴブリン/グレイウルフ/ホブゴブリン 魔石 2:ゴブリン/グレイウルフ/ホブゴブリン/オーク

 魔石 3:オーク

 攻撃+1:グレイウルフ/ホブゴブリン/オーク

 攻撃+2:グレイウルフ/ホブゴブリン/オーク


 非常に簡潔にまとめられた資料で、流し読んだだけでも簡単に情報が頭に流れ込んでくる。アイさん優秀すぎかよ。

 さらに、先ほど予選が終了した『赤城サンブレイク』の予選通過時の獲得数値はこんな感じか。

 魔物 :15体 :75,000ポイント

 魔石1: 5個 :2,500ポイント

 魔石2: 3個 :15,000ポイント

 合計      :92,500ポイント


 最終的に『赤城サンブレイク』は、B2を中心に周回していた。おそらくスキルジュエル狙いだったんだろうけど、強い魔物と戦うことを考えると、戦闘時間もかさむはずだからちょっとリスキーなんだよな。

 それならオレたちは、予選は魔物討伐数の方を重視した方がいいか。同じ組になる他のパーティーがどう行動するかにもよるけど、予選に関しては低層を周回した方が有益な可能性が高い気がする。それに高層を回ると、オレの運の高さの影響で高アイテムがドロップしちゃうかもしれないしな。常にドローンに観測されている状況では、なるべく秘匿したい。


「輝様。予選の作戦はいかがしましょうか」


 オレが何やら考えていることを察したのか、アイさんから声が掛かったので、オレの中でまとまった考えを共有することにする。


「基本方針としては『赤城サンブレイク』の真逆で行こう!」

「「「真逆?」」」

「そう。おそらく『赤城サンブレイク』はアイテムドロップ狙いと思われるんだけど、その結果魔物討伐数は15体。魔石と合わせてポイント合計は92,500でした。でも、魔物を20体狩れば、魔物のポイントだけで100,000になるんです。それなら、あえて低層を目指すより1Fを周回すれば……楽?」

「ぷっ、楽って。まあ、その方向でいいと思うよ」

「いいんじゃね?」

「輝様の仰せのままに」


 満場一致で可決された……。

 せめて藍澤さんからは、何かしらの考えを示して欲しかったんだけど、依存協調が働き過ぎてるよ。何か対策を練らないといかんかも……。

 千堂さんと美玖と比べて、数値は越えていないはずなんだけど、何でこんな感じなんだろうか。あ……そういえば、千堂さんとのスキル操作をしたばかりのころ、千堂さんがオレにべったり張り付いていたけど、最近は少し落ち着いた感がある。もしかしたら依存協調が生えた初期は、こんな感じになるとか?

 もう少しの間だけ、様子を見てみるかな。

 そんなことを考えていると、アイさんから声が掛かる。


「あと五分程度で第二組目の予選が終了となりそうです。そろそろ会場へと移動いたしましょう」

「もうそんな時間? 了解です」


 準備をしようと立ち上がったタイミングで、控室の扉がノックされる。来客の予定なんてあったっけ? しかも、誰も返事をする前に、来訪者によって扉が勝手に開けられたため、そばに置いてあった魔銃を手にして身構える。


「おう! 入るぞ!」

「あっ、先生!


」おう、玲! 川越ダンジョンまつりに出るってんで、せっかく宇多から顔を出したぜ」


 ん? 瞬時に警戒したけど、藍澤さんのお知り合いか? しかも、超絶近しい感じの人なのか? 藍澤さんは先生って呼んでるし。


「上杉様。これから予選会場で向かうところなので、こういうことはお控えください!」

「いやーアイくん、すまんすまん。ほんの少しだけ、リーダーの輝くんと話をしてみたかっただけなんだ」


 おおぉ……。まさかのオレへの来訪ですか。だけど、上杉と呼ばれたこの男の人のこと、オレは全く存じ上げないんだが。


「輝様。この方は、現在玲様がインターンとして所属しているチームの代表を務めております上杉様です。見た通り、ガサツな男です」

「アイくん、どんな紹介だよ……。上杉だ、輝くんよろしく」


 手を差し伸べられたので、条件反射で握手する。上杉さんは剣士として相当鍛え上げられているようで、がっしりと握られた手の平から、戦士の強みのようなものを感じる。


「は、はい、よろしくお願いします」

「そう畏まらないでくれ。君にはお礼を言いたくてな」

「はあ……」


 お礼? 初対面のこの人からお礼を言われるなんて、全く身に覚えがない。


「君との出会いが、玲くんの成長を促してくれたんだ。感謝する」

「こちらこそ玲さんには助けられています。特にインターンで得たと思われる知識は、うちのチーム運営の参考にさせてもらってます」

「そんなに謙遜することはないぞ。他のチームと比べると君のチームは若干異質だが、まとまりもあるようだし、非常にうまく運営されていると思うぞ」


 おお、褒められた。これ、絶賛されているレベルかも? 少し照れるなぁ。


「上杉様、そろそろよろしいでしょうか。予選会場へと向かう時間ですので」

「ああ、すまんすまん。それじゃ、まずは予選突破頑張ってくれ。会場で君達の勇姿を観させてもらおうとするか」


 そう言い残し、上杉さんは控室を後にした。それに続き、オレ達も予選会場へと向かう準備を進める。


 さあ、ついにオレ達のチームのデビュー戦か。気合を入れて会場へ向かうか。


 





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