030:黄昏の月(トワイライトムーン)デビュー戦
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会場に設置された自分たちのスペースで待機して数分後、予選第三グループの制限時間が終了した。
第三グループがダンジョンから帰還したら、いよいよオレたちのデビュー戦だ。
今のところ『赤城サンブレイク』『堕天使の翼』『深淵のベルーガ』の三チームが、決勝進出を決めている。
「予選通過のチームは、概ね予想通りだなー」
「これまで予選を通過した三チームは、やはり他のチームと比べ総合力が飛びぬけておりましたね。予選で有力チームがバッティングしないよう、調整が入ったように感じますわ」
アネゴとヒメが感想を話していると、予選通過チームの集計発表がアナウンスされる。
各パーティー名と予選通過ポイントが、ステージに設置された大型モニターに表示されると、会場には大歓声が響き渡る。
■赤城サンブレイク
獲得数 獲得ポイント
魔物 15 75,000ポイント
魔石1 5 2,500ポイント
魔石2 3 15,000ポイント
合計ポイント 92,500ポイント
■堕天使の翼
獲得数 獲得ポイント
魔物 14 70,000ポイント
魔石1 6 3,000ポイント
魔石2 2 10,000ポイント
合計ポイント 83,000ポイント
■深淵のベルーガ
魔物 13 65,000ポイント
魔石1 5 2,500ポイント
魔石2 3 15,000ポイント
合計ポイント 82,500ポイント
どの予選グループも、二位とはダブルスコアの差をつけているらしいので、おそらくオレたちの予選グループも、50,000ポイント獲得すれば程度は可能だろう。
まあ、多少のマージンを考慮して、大体の獲得目標値を決めた。
「みんな、今回の予選についての作戦です」
三人は、黙ってオレに注目したので続けて……。
「予選の獲得ポイントは、最低ラインを50,000ポイントに定め、1F限定での周回を予定してます。魔物の討伐数は10体以上を目標にしましょう。その位の魔物を討伐できれば、予選通過は可能かと思うので」
「予選でムリをする必要はありませんので、その程度のポイントがあれば、わたくしも異存ございません」
「「だね」」
メンバー全員も納得したようなので、目標値は定まった。
まあ、オレの予想では、余裕で上振れするとは思っているんだけどね。そもそもこの換算には、魔石分は入れていないし。
ただ、オレがとどめを刺すのは、なるべく避けようと思う。運ステータスが活躍して、ありえないほど頻繁に、レアアイテムをドロップする可能性が高いからね。
メンバーには、理由と共にオレ以外がとどめを刺すようお願いした。
「でもさ、ホントはヒカルっちの、ガチ運ドロップ見たいよね!」
「それはいずれ……ね。ダンジョンまつりが終わったらすぐ冬休みになるから、そこで川越ダンジョンで試してみようか。さすがに今日のところは、ゴブリンから【魔石 LV2】とか、グレイウルフから【攻撃+2】のスキルジュエルとかがゴロゴロ出たら、いろんな意味で注目され過ぎるからね」
「そりゃ、ヤバいかも……」
そんな雑談をしているうちに、予選第四グループの集合と予選チーム名が、美しいMCの声でアナウンスされる。
「皆様お待たせしましたー。いよいよ予選最終グループ、スタートの時間が近づいてきました! 最終グループのメンバーは、ステージまでお越しください。最終予選パーティーは『鴨川キラーホエール』『土浦パープルライン』『国立イーグルアイ』『黄昏の月』の四チームです」
特にオレたちのチームがアナウンスされると、今までにないくらいの大歓声だ。
いったいなんで?
メンバーを引き連れて、登ったステージから会場に耳を傾けると「聖女様」とか「玲様」とか、藍澤さん……いや、ヒメへの声援がいたるところから聞こえてくる。
なるほど、ヒメ人気が大きいのか。
そもそも川越ダンジョンをメインに活動して、そこでは聖女とまで呼ばれているんだから、この会場で人気があるのは頷ける。
ただ、時々「なんだあの男は」とか「ひもやロー」とかの、オレに対するものと思われるヘイトは、さすがにへこむから勘弁してほしい。
ステージに四チームが揃い、しばらく後に全チームのダンジョンへ突入する準備が整った。あとはスタートの合図を待つばかり。
スタートした後は、ステージ後ろの特設通路から数メートルで、ダンジョン入口へと到達する。
四つのパーティーが横並びになると、やっぱりオレだけ異色感がハンパない。
甲冑や盾、ロッド、剣に弓など、それぞれがファンタジーっぽい格好とちがい、オレ一人だけ迷彩服にプロテクター。
メインウェポンが二十式小銃、サイドアームがハンドガンなので、この装備が一番しっくりくるんだけど、一人だけサバゲー感がハンパない。
「それでは、いよいよ予選第四グループ、スタートのカウントダウンを開始します。会場の皆様もご一緒に! せーの、テン! ナイン! エイト!」
な、なんだ? こんなにイベントっぽかったのかよ。なんか楽しそうじゃないか。予選開始からじっくり見とくんだったな。
「スリー! ツー! ワン! 予選スタート!」
ついにスタートの合図。
その合図と同時に、オレたち以外の三チームは一斉にダッシュで入口へと向かっていく。
オレたちは、その後ろを体力温存の小走りで進んでいく。
後ろから見ると壮観だな。
配信用のドローンが予選メンバーを追随していく。
一人に一台ずつと+チームに一台が割り振られているので、何基のドローンが飛んでいるのかは一目では分からない。
一斉にダンジョンに飛び込んでいく人たちの後ろには、十八基のドローンがついて行っている。
あれだけごちゃついて、よくドローン同士が衝突しないな。
ちなみにオレ達の後ろには、自前のドローンも飛ばしているので、六基のドローンが飛行している。
オレたちもようやくダンジョンへと侵入する。
先に侵入した各チームの姿はすでになく、遠方から戦闘音らしき音だけが響いてくる。
ダンジョンの最初の分岐点に到着する。
耳を澄ますと、物音は直進する方角からのみ聞こえる。どうやら、どのチームも高額ドロップ狙いで、下層へ進む選択をしているようだ。
オレたちは計画通りに、その分岐点を右折するルートを取る。この先は行き止まりだが、終点に到達する前に、それなりの数の魔物と遭遇するはずだ。
右折し進むと、その先は百メートル近い直線が続く。
川越ダンジョン内は入り組んだ場所は少なくて、長い直線が続いている場所が多い。
とは言っても、両サイドの岩肌には魔物が隠れられる場所が多数あるため、警戒は怠らない。
左右にアネゴとミク、中央にはオレが二人の後方でポジションを取り、ヒメはオレのさらに後方で進む陣形、なんちゃって鶴翼の陣で、ここからは警戒しながら一歩ずつ進んでいく。
直線の半分より少し先……おおよそ六十メートル程度進んだ場所で、二十メートル先に六体のうごめく魔物の影を発見する。グレイウルフだ。
グレイウルフ程度なら、オレ一人でも力押しで倒せるけど、連携の練習をかねて色々試してみるか。
「前方二十メートルに魔物発見。五メートル進み、攻撃パターンAを実施」
「「「了」」」
攻撃パターンAとは、オレたち四人が取り決めた主要攻撃パターンの一つで、今の陣形で攻撃ポイントまで進んだのち、ヒメが後方から魔物にスロウを発動後、ヒカルが先制攻撃。
その結果を確認しながら、アネゴとミクが外側から攻撃を実行する。
戦闘継続になるようなら、ヒメが更にその場からサポートするというパターンを意味する。
ちなみに「了」って返事は、取り決めの時に短めがいいよねーって話しになり、自衛隊がOKに時に使うという話を共有したら、短くてサイコーってことで使用することになった。
攻撃ポイントでヒメが速攻で「スロウ」を唱える。
魔物がスロウに掛かると、魔物もこちらを認識した。
攻撃に入ろうとするが、魔物の動作はスローモーションだ。オレは二十式小銃のフロントに装着されたグレネード型の散弾を六体のグレイウルフへと発射した。
一斉に発射された十八発の魔弾が、六体のグレイウルフにダメージを与える。
だが、まだ倒れるほどのダメージではない。だが少し弱らせることはできた。
まだスロウの効果が効いているので、今度はアネゴとミクが慌てることなく、外側のグレイウルフからレーザーサイトで狙いをつけて撃っていく。
魔弾が命中すると、初撃でグレイウルフを撃退した。
オレの初撃から十秒も経過せずに、アネゴのミクとの二人で、六体のグレイウルフの群れの討伐が完了した。
更に今回の戦闘で三つの【魔石+1】がドロップした。
幸先のいいスタートを切れたんじゃないか。




