『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』27
上の階へ向かう前に、さらに下へ進む道があるかどうか確認するためにマッピングを再開。途中でボス部屋かもしれない部屋に居た魔物を倒して、マッピング完了!
ボス部屋かどうか断言できないのは、その部屋の相手は、今まで出てきたコボルドと同じ体格の魔物だったからだ。武器はショートソードがブロードソードに変更されて、追加防具は木の盾だった。見た目は変更されているけれどあまり強さが変わらないから、斧でざっくりと切った!
倒しても宝はなくて、ただの魔石が落ちただけだったから、ボスかどうかよくわからなかった。
「最低限の機能しかない、出来たばかりのダンジョンなんよ」
結局、下への道はなかった。全部で3階層のコボルドダンジョン。時代の移動には便利なので、その目的に使うってことになった!
「あれ? ちょっとまって」
探索も終わり、2階に向かってる途中、茜が声をあげた。メモに書いた地図を見比べている。
「この場所、階をつなぐ入口があった場所だよ?」
真っすぐ続く通路の途中で、右側の石壁に猫の手を向ける茜。壁を触るが、周囲の壁と同じように感じた。
「普通の壁にしか見えない!」
「周りの岩と繋がってるから、ただの1枚岩にしか見えないわね」
「黒い壁まで戻って、遡って位置関係を見直してみるんよ」
茜から、メモした地図が全員に配られた。黒い壁まで移動し、そこから最短距離で入ってきた入口へ全員で地図を確認しながら移動したけれど、どう見ても入口部分が壁になっている。
「地図を書き間違えては居ないと思う」
「何かの罠を踏んだのかしら」
「ありそう! 調べる人いないから!」
どこかにスイッチとかあるのかな? キョロキョロと周囲を見るけれど、ただの石壁だ。こんなとき茶子ならすぐにボタンとか見つけそうだけど、今は居ない。
紫帆先輩の肩から降りた茜は、石壁の周囲をうろうろと歩いて、地面の匂いを嗅いでいる。
「ここ。この石壁の先で私たちの匂いがするから、間違いなく通路だった」
そういって茜は石壁に手を置く。ギンガも手を置くけど、ただの石にしか見えないな! 確か……うん。試してみよう!
「土魔法の[ディグストーン]を使ってみる!」
[ディグアース]の上位魔法で、こっちは石を削ることができる魔法だ!
「難易度高くない?」
「時間かければ多分発動できる」
魔法のレベルは成功率なので、上位魔法が使えるかどうかの基準じゃない。難易度が高い魔法は、時間を掛ければ成功率をあげて発動することも可能だ!
壁に手を当てて、集中する。高レベルの人なら数秒程度で発動できるけれど、まだレベル1のギンガは2~3分はそのまま集中し続ける。
集中している最中は、何か難しいことを考えているわけじゃない。[ディグストーン]を使うことを意識しながら、目標の石が削れて無くなるイメージを続けるだけだ。
しばらく集中したら、MPを消費できそうな気配を感じる。これが魔法を発動可能なタイミングだ! あとは消費後に成功するかどうかだけ!
「[ディグストーン]!」
MPも減って、発動する感じがした。それでも、少しも削れた様子がない。
「失敗?」
「発動した感じはしたよ!」
感触としては穴を掘った感じがした。それでも、目の前の石はびくともしない。
「[ディグストーン]」
近くで、未黒先輩が離れた壁に向けて魔法を使っていた。未黒先輩も土魔法が使えるんだった。
そして、未黒先輩が魔法を使った場所のダンジョンの壁は、削れて穴が開いていた。
「やっぱりギンガが失敗したのかな?」
未黒先輩がほとんど同じ場所の穴を掘れたのなら、ギンガが失敗したんだろう。使ったことない魔法だったから感触が[ディグアース]とは違ったのかもしれない。
「いや。ギンガが失敗したわけでも、ダンジョンの壁だから穴が掘れないわけでもなく、その壁が異常なんよ」
離れているけれど同じ壁面で魔法を使って、効果が違うとは思えない。そうなると、この壁はなんだろう? 未黒先輩が断言してるけど、何か知ってるのかな?
「あかちゃん、目を閉じたまま鼻だけで匂いの追跡できる?」
未黒先輩が、ギンガがディグストーンを使うために壁から距離を取って座っていた茜を目の高さまで持ち上げる。
「多分できます」
「じゃあ……この位置から追跡できる範囲まで頼むんよ」
そういって茜を地面に下ろし、茜はそれから匂いを嗅ぎながら周囲を探る。
目を閉じているせいか、壁とは違う方向に何度も進むが、そのうち壁の方へ向かって進み……壁を貫通していった!?
「[ディスイリュージョン]」
茜が貫通した瞬間、未黒先輩が魔法を使うと、目の前の壁の色が薄くなり半透明に変わる。
「進むんよ」
未黒先輩が壁の中に入り、匂いを嗅いでいる茜をひょいと拾い上げて進む。ギンガと紫帆先輩もその後についていく。半透明の中に入るときの感触はなかった。
半透明な状態は通路に出てからも続いていて、そのまま上の階へ向かって移動し、2階のわき道に到達してようやく半透明な壁が途切れた。
振り返ると半透明状態が解除されていて、この2階のわき道が行き止まりだと思わせるような壁になっていた。見た目は、このダンジョンは2階までしかないように見えてしまう。
「ミク先輩、今のは幻覚ですか?」
紫帆先輩も後ろを振り返って壁を見ている。
「そう。発動条件は幻覚だと認識することが必要なんよ」
「それで、茜さんに目を閉じさせて匂いだけで追跡させたんですね」
「壁が幻覚なら、無意識は通過するんよ」
幻覚だと疑いは持っていたようだけれど、その程度なら発動しない可能性もあったみたい。茜の体が壁にめり込んだことで幻覚と確信して発動させることができたんだって。
「幻覚って触ることも出来たんだ!」
「壁の匂いもあったよ」
「完全な幻覚なら美味しい食べ物も作れるんよ」
栄養はないけれど、空腹を紛らわせることは出来るらしい。他にも応用が利く魔法らしいけど、上手に扱うのは難しそうに思った。
「それじゃあ、2階から外に出るんよ」
今となってはどこで罠を踏んだのかよくわからないので、それはどうしようもない。罠なら、そのうちこの壁も消えるだろうし、今は出来ることをしておこう!
2階の黒い壁の前に到着した。ブレスレットを外す。安全な場所に到着したらまた装着して試してみればいいから、まずは先へ進むことが先決だ。
黒い壁へ手をつき、今度こそ先へ進む!
幻覚魔法は、解除するのは容易でも幻覚を作り出すのは難しいです。目の前にあるものをコピーするのも大変なので、使い手をかなり選びます。




