『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』15
~~~チャコ~~~
王都方面への道のりを冒険者ギルドで聞いたから、これで王都に行けるね~。あ、ついでに冒険者ギルドの登録を済ませておいた。なんか、ベータの頃の記録は消滅していて、最初からやり直しだった~。
ギルドの試験は無し。ピクシー種の妖精はもれなく妖精魔法を持っているんだけど、それがあるだけでギルドの試験はパスできるみたい。
妖精魔法[妖精の宝箱]は、MPを消費するストレージ魔法。容量は妖精魔法のレベルや本人のレベルによって変わるんだけれど、旅の道具や狩りの素材なんかを時間による劣化なく運搬できる。ピクシー種はもれなくこれを使えるんだから、ギルドの試験はパスなんだよね~。
時間経過が無い影響か、[妖精の宝箱]は、生物が入れられない。[妖精の隠れ家]と上手く併用することで、他にはない快適なピクシー生活が送れそう~。
サイズの大きなギルドカードをもらった~。ピクシーだから大きく見えるだけなんだけどね。このカードに各ギルドの登録が追加されていく仕組み。ストレージに収納する動作で、ストレージの枠は取らずに、保管されるのは親切だよね~。
登録後は、ギルドの依頼票を横目にそのまま冒険者ギルドを出て、そのまま教えてもらった商業ギルドに向かう。商業ギルドでも登録をして、今度は依頼票を確認~。
あった、王都マーキュラスへの運搬依頼。プレイヤーはストレージがあるので、商業ギルドを兼用して登録し、運搬依頼で収入を得る人も多い。あたしの場合は魔法でさらに運搬量を確保できる上にピクシーなので、商業ギルドからの信用度は高いんだ~。
それで、今回は木材の運搬。常時依頼票が出ている仕事で、建築材や薪などをストレージがある人が毎日運搬している。
ストレージはプレイヤー特権ではなく、NPCも割合は低いけれど持っていることがあるんだよね~。そういった人は運搬に専念して仕事している場合が多い。需要が多いからね~。
依頼を受けて、街の外れにある木材屋で指定された木材をストレージに収納し、乗合馬車まで移動する。
「マーキュラス方面に行きますか~?」
幌のついた乗合馬車が停留所で停車していたから、御者っぽい人に聞いてみる。
「ん? あぁ、妖精か。マーキュラス行きの船着き場を経由するぞ。妖精さんはひとりかい?」
「はい~」
「んじゃ、好きなところ入ってくれ。出るのは1時間後だ」
「ありがと~」
中に入ると中年の男性が既に座っているので、挨拶をして御者席の後ろ側、前の景色がよく見える場所を確保する。
しばらく待つと、子連れの夫婦も乗り込んできた。普段は王都に暮らしているけれど、子どもが生まれたから親に見せに来たのだとか。小さい赤ちゃんは、妖精から見てもかわいいね~。
そろそろ出発時間という所で、護衛の冒険者がやってきた。禿だ~、手を振っておこう。
「何で居るんだ!?」
「馬車で移動だよ~。護衛よろしくね~」
「ちっ」
禿の方はそっぽを向いたけれど、一緒に居た茶髪の方は普通に挨拶してくれた。
「護衛はふたりだけなんですね~」
御者席に座った御者さんに話しかける。もっと多いと思ってたんだけど。
「商隊じゃないからな。貴族が乗るわけでもないし、襲っても実入りが少ないから盗賊は来ないさ。街道沿いの魔物も大した相手は居ないから、これで十分なんだよ」
御者さんは手綱を手にして、馬車を走らせ始めた。速度は速くないけれど、大きな馬車を1頭だけで引ける馬はすごいな~。
馬車は畑の間の道を通り抜け、草原に入る。周囲には木があまりないけれど、遠くには森が続いてて長閑な雰囲気~
「街がある~!」
「あぁ、あそこは既に人が住んでいない。近くのダンジョンから魔物があふれて襲われたんだ」
そういった街は結構あるみたいで~、冒険者など誰かが長期間入らないダンジョンは魔物があふれることもあるといわれている~。
でも、魔物があふれる理由について正確にはわからないとのこと。頻繁に人が入っているにもかかわらず、魔物があふれたこともある例があるらしい~。
「お、リッキーだ。冒険者さん、正面にリッキーが居るからよろしく!」
馬車が速度を落として停車する。前を見ると、背が人より少し低いけれど、腕と足が太く筋肉質で、尖った鼻の生物が居る。
茶髪と禿は馬車から降り、正面へ走って向かう。戦士タイプの茶髪は剣を両手に持ち突撃をする。一方の禿は、ある程度の距離に迫ったら杖を構える。
「[サンドスプレー]!」
禿の使った魔法により、スプレー状に広がった砂をリッキーの顔にぶつけ、目に砂を掛けることで視界を防いでいる。
そうして目をやられたリッキーに茶髪が剣を振るい、次々と倒していく。
思っていたよりいい連携だね~。ストーンバレットのような攻撃魔法ではなく、補助魔法で援護をするとか、あの禿はいい判断する人だ~。
なんであんなに喧嘩っ早いのかよくわからないな~。
無事に戦闘が終わり、ふたりが帰ってくる。動物の場合は死体が残るけれど、魔物はドロップ品が出て本体は残らない。護衛中のドロップ品は彼らの物だ。
馬車に近寄ってきた時に、禿がこっち見てにやりと勝ち誇った顔で笑ってきたので、ビシッとサムズアップしておく。
ひきつった顔をして馬車の後ろに向かう禿。ちょっと面白い。
御者さんに話を聞きながら、のんびりと旅をする。夫婦も、おそらく赤ちゃんに[妖精のいたずら]を使ってほしいからか、食べ物をくれる。
でも~、感覚的にだけど、赤ちゃんに[妖精のいたずら]を使ったら食べ物をもらう必要無く良い効果が発揮しそうな感じがするな~。何もできない純粋な赤ちゃんは妖精の庇護対象なのかも?
ベータで調べた限り、子どもなら何ももらわなくても、遊んだだけで良い効果が発動していたからね~。それでも、逆にあたしに棒きれ振り回してきた子どもは、転んで怪我していたから絶対じゃないんだけどね~。
赤ちゃんに魔法を掛けると、予想通りいい結果が出た。効果はわからないけれど、しばらくは病気や怪我から守られると思う。
物語のように突発的なイベントもなく、2時間ほどの馬車移動で、無事にマーキュラス行きの船着き場がある街に到着する。
ここで降りるのは、あたしと夫婦だけだ。馬車はここで船を待って、お客さんが来るかどうか確認した後で出発するらしい。
御者さんは無償で運んでくれた上にずっと話に付き合ってもらってたので、魔法の条件を満たしたため、馬に魔法を掛けておいた。馬の言葉はわからないけれど、嬉しいのか尻尾が上がっている。
他のお客やプレイヤー2名とは交流がなかったな~。禿にはずっと睨まれていたから話をする雰囲気ではなかったけどね。
夫婦たちは、船着き場の桟橋付近で、木製の椅子に座りお弁当を食べながら船を待つみたいだね~。あたしは、船が来るまで街を散策かな。
王都と川で繋がっている街だからか、最初に居た町とは比べ物にならないほど規模が大きい。川沿いに住宅はなく、倉庫がいくつか並んでいる。この街の商業ギルドは依頼は多いかも? ちょっと寄ってみよう~。
商業ギルドの場所を道行く人に教えてもらって向かうと、大きな倉庫のような平屋の建物があった。建物の側面には何台か馬の繋がれていない馬車、綺麗に切られている木の板、積み重なった石がある。
建物の中には人が沢山居て、色々賑わっている感じだ。パッと見た感じはNPCもプレイヤーも見分けがつかないけれど、プレイヤーの姿は目立つ髪色をしているか、似たような初期装備なので問題なく区別がつきそう~。
高い位置から見学をしていると、妖精が珍しいのか別に理由があるのか、見上げてくる人が結構いる。初期装備がハーフパンツなのは運営グッジョブ。
依頼票のあたりは、人が多すぎて入る隙間もない。妖精が入る隙間はあるけれど、押されてつぶされちゃいそうだからな~。木材運搬の依頼も受けてる最中だし、見学だけにしておこう。
遠くで『カーン。カーン』という音が聞こえ、「船だ!」という声と共に何十人かが外へ出ていった。あたしもそれに付いて外に出て、停泊している船に向かう。
港に停泊している船は、屋形船のようなサイズで、大きいけれど荷物を運搬するような重量感はないかな~? 人を運ぶことに特化している。
考えてみれば~、ストレージがある世界なら、運搬するための船に必要な能力は人を運ぶことだけかもね~。
向こうから船を降りた人もこちらに向かってきた。商業ギルドで依頼報告かな?
そう思ってると正面からこっちに向かってくる金髪の女性が見えた。
「あっ! コガネ先輩~!」
黄金音先輩だ! 向こうもこっちに気が付いて真っすぐ来たのかな?
「やっぱり、チャコちゃんか! 飛んでたからそうかな~て思ったんだ」
黄金音先輩と手と手を合わせてハイタッチ。
「コガネ先輩は納品ですか~?」
「そう。王都で商業ギルドから依頼を受けてね。序盤ソロで稼ぎやすいのはこれだから」
船に向かっていたあたしは、黄金音先輩が商業ギルドへ向かうので、一緒について元の道を戻ることになった。
「コガネ先輩なら冒険者ギルドで狩り依頼してると思いました~」
「一度やったんだけど、あっちはパーティー勧誘が多くてね、止めちゃった。野良パーティーに入るにしても、みんなそろってからかな。固定が居れば断りやすいし」
黄金音先輩の種族はレア種族の魔族。頭に角があるのが特徴で、見ただけで種族がすぐにわかるんだよね~。魔法が強力なのは知れ渡っているので、仲間への勧誘も多いんだろうな~。
「あとはまぁ、ナンパが多いよ。チャコちゃんも気を付けてね、ピクシーの女の子なんて男女関係なく勧誘されると思うから」
「ベータの時もそうでした~。パーティーに困らなくなるし、ストレージは買わなくて済むのに、ピクシーを選ぶ人の数が少ないのが意外なんですよね~」
「ピクシーのイメージ的に、よっぽど自分の容姿に自信がある人じゃないと気後れする種族だから、有能ってわかってもやりたがらないんだよ」
「自信あるわけじゃないですよ~。遊びたいから選んだだけで~」
実際、中学までは自分がすごく可愛いとは思ってたんだけど~、高校入って先輩や同級生が美人だったり可愛かったりして、自信にはヒビが入ってるんだよね~。
その中で美人の暴力といえば黄金音先輩。部活のみんな容姿がいいとは思うけれど、黄金音先輩だけはレベルが違いすぎる。
身長は166と、モデルほどではないけれどそれなりの高さ。体つきはすらりと綺麗な体つきで、手足が細く足は長い。
バストからヒップにかけてのボディラインが綺麗で、大きすぎたり小さすぎるのもかっこ悪いんだと強引にわからされてしまった~。
さらりとした癖のないストレートの髪も、美人度をアップしてる気がするな~。
肩幅は大きくなさそうなのにそれでも小顔に見えるのがうらやましい。
目つきはキリッとしているのに、笑うとすごく優しい笑顔になるから、ギャップで「黄金音先輩、あたしの事好きかも!」って思ったんだよね~。同じことを茜や蒼奈も思ったそうだから、誰もがそう思うのかもしれない。あの笑顔に平然としていられる銀華は流石だよ~。
銀華が似た顔をしているけれど、背が低いので美人というより可愛いタイプかな~。同じく銀華の笑顔もすごく心を持っていかれるけれど、どちらかというと母性のが勝つかも
そんなわけで、黄金音先輩に「容姿に自信がある人」と言われてもピンと来ない。
「チャコちゃんは依頼受けてるの?」
「マーキュラスに木材運搬の依頼受けてます~」
「それなら、私もマーキュラス行きの依頼を受けるね」
商業ギルドで黄金音先輩の納品完了や依頼受注をサッと済ませて、マーキュラス行きの船に向かった。
ピクシー種は容姿の問題もありますが、近接戦闘が絶望的になるので、選ばないことが多いです。魔法適正は高いですが、そのサイズゆえに人間サイズのコップを持ち上げるだけでも魔法を使う必要があるので、MP消費は常にしてしまうため、魔法職としても敬遠しがちになります。また、特殊能力【無限飛行】が手に入らなければ、疲れたら地面に降りる必要があるので、転生マラソン必須の種族です。




