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あちーぶ!  作者: キル
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『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』14

 水分捕球、栄養補給、HPとMPの回復を待って、大空洞がのぞき込める場所へ移動する。空洞から見える天井の距離は50メートルも無さそう。とはいえ、一気に登れるとは思えないので、登るルートを確認する。

 下から見上げると、横穴がどこにあるかよくわからない。そのため、最初の目標は休憩が出来そうな出っ張りとなる。


「[フレイムエナジー]、[キープアース]」


 空洞の崖に身を乗り出し、岩をしっかりつかんで出っ張りへ向けてゆっくり移動する。幸いにも垂直な崖ではなく適度な傾斜があるため、足場と掴むところさえあれば問題なく進める。


 最初の目標到達。4~5メートル登ったかな。荷物が無いから身軽とはいえ、筋力が無いので、これだけしか登っていないのに手が震える。


 次は目線より少し上の段差。魔法の効果が続いているうちに多少は登っておきたい。手を掛けて登ろうとしたところで、離れた場所で音が聞こえた。


 視線をそちらに向けると、5~6メートル離れたところで地面に埋まっている巨大なイモムシが居た。こちらを見ているような感じはしないけど……。


 魔力感知を使う……オーラが黄色いから、友好系の動物に属するのか。それでも、テリトリーに入ったり相手の気に入らない行動をすれば戦闘になる。注意すれば戦闘は回避できるので、出来るだけ怒らせないようにする必要がある。


 イモムシが動物だってわかったことで、ここがダンジョンではないことが確定した。ダンジョンで見られる生物は、全て魔に属するものだ。地上と同じ外見の動物が出てきたとしても、ダンジョンでは友好系の魔物に分類される緑色のオーラとなる。


 よって、オーラが黄色い動物がいるこの場所は、ダンジョンではなく天然の洞窟である。ということは、ダンジョンのように出口が決まっている空間ではなく、至る所で外とつながっている可能性があるのだ。

 必ず戦闘になるわけではないこと、外に出られる可能性が見えたことで安心した。


 次に目指そうとした段差はイモムシに近寄ることになるので、逆側……遠い。それでも、行くしかないか。

 逆側の段差まで登ったところでイモムシを振り返り見るけれど、動く様子はない。多少距離も取ったので、このまま離れる方向に向けて進んでいこう。


 魔法を掛けなおしてさらに進むと、天井付近ではないものの横穴を発見したので中に入る。横穴が奥に続いているのを見て、座って休憩することにした。寝転がりたいけれど、流石にそれは警戒心が無さすぎる。この横穴は下に向けて進んでいるので、探索するにしても後回し。


 3回目の魔法を使い、残りの距離を登る。天井付近に到達し、周囲を見渡すと、横に10メートルほど進んだ先に割れ目が見える。ケイブキャタピラーが掘ったような穴には見えない。


 慎重に横移動を繰り返し、隙間にたどり着く。横長の亀裂で、ゆるい傾斜が上に続いている。岩盤が上下に裂けた感じだ。

 隙間の中を覗くと、奥を見渡せる範囲には魔物も居なさそうなので、這うように中に入り先へ進む。ゆるい傾斜といえど、滑らせたら落ちてしまうから、慎重に狭い上り坂を4つ足で進む。


 通路のような廊下が続く道を見下ろせる、その天井部分に出た。壁は通れるように削っただけであまり整えたようには見えないけれど、床は加工された石畳を敷いた道が続いている。


「ようやく何かの建物だ……」


 体を乗り出して、廊下に降りる。廊下は緩いカーブを描いた坂道だ。下に空洞があるため登りの方が出口だと思うけれど……せっかくなら下り側に進んでみよう。


 カーブする廊下を進むと、すぐに神社のような祠にたどり着く。文字が書いてある……神聖語と古代語が混じってるな。どちらも僕のスキルレベルが低いから細かい部分はわからないけれど、神聖語はマーキュリ神殿と封印、古代語は魔力と書いてある。

 扉は……流石に開かないか。壁にめり込んだ祠は中に入れないように厳重に閉ざされている。


「ここってあの空洞の真上なんだよね」


 そうなると、この祠は地下の空洞への入口だと思われる。


「無事に外に出られるかな?」


 もしここが魔力溜まりの入口だとしたら?

 あの空洞の底が魔力溜まりだとしたら?


 日記を読む限り、国の中で防衛の優先度が最も高い重要拠点だ。当然、ここへ入る入口は兵士によって守られているだろう。出口にたどり着いたとして、中から出てきた僕をどう扱うか。ゲーム開始地点の割り振りで犯罪者確定はいやだな。


 祠で出来ることはもう無さそうなので、上へ向かって歩いていく。円を描くようにカーブしながら登る坂を進む。途中、地面がひび割れて落下しそうな場所がいくつかあった。日記の人はこういったひび割れから落ちたのかな。

 進み続けて30分。流石に疲れて一度休憩し、さらに30分かけて上へ進んでいくと、真上に上る階段にたどり着く。ビルによくある、15段くらい登っては踊り場で折り返す階段だ。


 休憩を取ってから階段を登る。20階分は登っただろうか、ようやく行き止まりの扉が見えた。


 ……休憩してから扉を開けよう。兵士に捕まったらまた歩かされる。


 水魔法で出した水を飲み、石を食料に変えてマズい食事を取る。疲労がある程度取れてから、意を決して扉に手をかける。


 意外にもするりと扉が開く。鍵がかかっていて、中から叩いて開けてもらうことになると思っていた。


 そのまま開けて扉の中に入ると、瓦礫がそこら中に転がっている部屋にたどり着いた。扉を閉め、部屋の出口らしきところへ進むと、そちらも壁が崩れていて道がなくなっている。


 部屋を見渡すと、古いテーブルや椅子がある。壁には折れて使えない槍が何本かある。人物やどこかの城が描かれた絵画もある。棚には埃の被った壺がいくつかあるけれど、中身はない。使えそうなものはないな……。

 部屋を色々な角度から見まわして、一か所光が漏れている場所を発見したので、部屋にある古い机をその下へ運んで、机の上に登る。グラグラして危ないな。

 光が漏れている場所の瓦礫を退かすと、外にはい出れそうな空間ができたので、外に出る。


「……タイトルの亡国ってこっちか」


 小高い丘から見下ろす景色は、屋根が崩れ落ち壁が壊れて家の中が見えてしまう家がそこら中に見える。

 元は綺麗なタイル張りを思わせる道路は、至る所でタイルがめくれ上がり、隙間は草木が生え放題。

 後ろを振り返れば、広大な敷地に建てられた巨大建築を思わせる家……城構えは、残された僅かな柱が4階建てだったことを教えてくれる。


「亡国……選択した国家が滅んだってことか」

 単純に登山をしたいのなら、肉体系魔法の[クライミング]が便利ですが、蒼奈はその系統を覚えていません。[クライミング]が使えたのなら、休憩することなく天井まで移動できたでしょう。

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