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あちーぶ!  作者: キル
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『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』13

~~~アオナ~~~


 日記を読み進めると、前半はここに来た経緯が書かれている。どうやら7つの王国でお互いに戦争を行っていたようだ。理由は、大陸のどこかにある覇者の王笏を行使する権利を手に入れるためらしい。

 タイトル半分回収。国家間の戦争ゲームになるのかな? ゲームだと戦争はエンドコンテンツにしやすいから、意味もなく実装されがち。


 各国家が建国された場所は、魔力が最も集まる場所。魔力が集まっている場所は大陸に7か所存在していて、その7か所の魔力溜まりの上に王都建てられ、王都を中心に国家が建国された。


 覇者の王笏を行使する権利を手に入れる手段は単純。

 各国家に存在している7つの魔力溜まりに、『魔玉』を投げ入れるだけ。魔玉には、覇者の王笏の行使を望む人物の魔力を込めて、その人専用に登録する必要がある。


 魔玉とは、魔石を磨き球体に変え、何らかの加工をすることで作られる魔石の上位アイテムのようだ。覇者の王笏のために必要な魔玉は直径5センチほどのサイズで、これを作るためには10センチを越えるサイズの魔石を研磨する必要があるそうだ。


 重要な内容が書かれているから、考察が捗る。

 覇者の王笏と、国家の建国と、魔力溜まり、これら三つはどの順番で発生したのか。

 普通に日記を読む限りでは、魔力溜まりが先で国家が後だけど、真実は違う可能性もある。

 そう考えた理由は、7つの国が戦争しているからだ。

 そもそも、国家の成立って他国と対立するために生まれるのか? そういった国もあるかもしれないが、基本は同じような思想の人が集まってできた生活の共同体だ。結果的に他国と意見が合わなかったり、国の豊かさのために戦争になることはあるだろうけれど、元々は争うためではない。


 では、今回の場合、日記をそのまま読むとこうなる。

 覇者の王笏を行使する条件である魔玉から、魔力溜まりを守るために、国家を建国する。

 このままだと、最初から争うために国家を建国したと読み取れる。


 7つの国以外から守るために建国したなら理解できる。例えば、人類共通の敵に魔王がいて、それから守るため7つの国が協力して防衛ってシナリオだ。

 しかし、この7つの国は日記を読む限りお互いに争っているとわかる。


 考えられるのは、元々大陸にひとつの巨大な国家があった可能性だ。それなら、その国家が各地の魔力溜まりを管理する都市を作ってもおかしくない。


 そして覇者の王笏も巨大国家がある前提で考えると、その王笏は元々その巨大国家の王様の持ち物ではないだろうか。王笏を手にすることで、過去の王様の正当な後継者として扱われるのではないか。

 そう考えると、タイトルの『亡国』とは、この巨大な国家かも?


 さらに日記を読み進める。この日記の主は、その魔玉をマーキュリ王国の魔力溜まりに投げ入れる任務を受けた潜入部隊のひとりらしく、その作戦途中で崖のような隙間に落下してここにたどり着いたようだ。


 後は、この地下の探索記録や日々の感想、国へ残した家族への言葉などが書かれている。


 ここまで読んで、隣の魔法書を見て疑問が思い浮かぶ。

 何故この2冊がここに残っているのか? 


 もし僕なら、この2冊を持ったまま探索する。失って困る物ではあるけど、探索先で自分の身に何があるかわからないから、せめて食料を作り出せる魔法書だけは持って移動したい。


 チェンジフードを覚えた可能性もあるけど、それ以外にも便利そうな魔法はある。日記が1か月程度しか書かれていないので、短い期間に本一冊全て覚えたとは思えない。

 おそらく、持ち出すことができなかったんだろう。急いでいたか、あるいはここで消えたか。

 周辺を見渡す。


「……あれかな」


 この寝床の上を見ると、大きな横穴がある。あの場所から魔物が現れて、襲われたのかもしれない。

 もちろん、この本を置いて探索した可能性もあるので、その想像は確実ではないけれど、あまり長居をしていい場所とは思えない。


 シープの機能からデジタルメモを表示させて、日記に書かれている地図を写し取る。色々なページにバラバラで書かれていたので、それぞれを繋ぎ合わせて地図を完成させる。


 それで判明したのだけれど、僕が最初に通っていた通路は、この人が居た時代には無かったようだ。ケイブキャタピラーが新たに掘ったのかな。


 本をストレージに入れ、完成した地図を半透明で表示させたまま下に降りる。先ほど進んで戻ったところが、この人が転落して落ちてきた場所だと書いてあったので、改めて確認する。

 洞窟が崩落していて、上への道があるようには見えなかった。手で掘ったのか穴が開いているけれど、途中で進むのを止めたようだ。土や岩を掘る魔法は、さっきの魔法書には無いのかもしれない。

 土魔法を覚えているから、僕なら頑張れば掘り進められたけれど、先に別の場所を探索したほうが効率的。


 地図を頼りに進むのではなく、地図に書かれていない新たな道ができているかどうか確認しながら彷徨った結果、湖があった場所から伸びる洞窟の先で、ケイブキャタピラーの掘った跡と思われる十字路が見つかった。この十字路は地図に書かれていない。


 地面を見ても、ケイブキャタピラーがどっちに向かって進んでいったのか断言できない。見てわかるのは、右側の地面は多めに土が残っていることだ。おそらく、右側から現れて周囲の壁が崩れて残り、反対の左側に突き進んで掘ったのかもしれない。


 ケイブキャタピラーの生態は知らないので勘でしかないけれど、とりあえず右に行こう。左に進んで鉢合っても困る。

 しばらく左曲がりの登り坂が続く。キャタピラーと言うのだから、サナギになって羽化するんだろう。そうなると地上へ出るためにどこか外と繋がってるかもしれないので、登り坂はいい傾向だと思う。


 しばらく登ったら、道が途切れた。行き止まりではなくて、巨大な縦穴の空洞にたどり着いた。

 この空洞、上は天井が見えるけれど、下は底が見えない。正面を見ても、反対側の壁がかすんで見える。種族特性の闇視は闇を通して見えるけれど、視力が上がるわけではないのと、あまりに遠い場所は薄暗く見えてしまうため、穴の底が深い場合は普通の人と同じようにしか見えない。

 魔物の様子はわからない。ただ、ケイブキャタピラーがこの縦穴を昇り降りしていると思われる。その証拠に、見える範囲の壁にいくつも穴が開いているからだ。


「ここを降りるのは最終手段にしよう」


 魔法を使って段差で休憩しながら降りることは可能に見えるけれど、降りてから戻れる保証がない。そもそも、僕は地上に向かいたいのだから下に降りたら余計に遠くなる。


 道を戻って十字路の反対側に進む。右曲がりの下りなので、これはもう行きつく先が予想できた。しばらく下っていくと、予想通りあの空洞に出た。


 地図に情報を追加で書き込む。僕が最初に歩いていた通路も、方向的にはこの空洞につながるように見える。本が置いてあった空間も、位置関係的に大空洞の真裏だ。空洞から魔物が来ると考えたら、拠点にするのは危険な位置だとわかる。日記の主も大空洞を知っていればあの場所に居を構えることは無かったに違いない。


 道を引き返し、池の前に戻る。池の水でプラスチック味の食料を流し込み、進む方向を考える。

 おそらく、最初に通っていた道も、方向的には大空洞に接続するだろう。途中にあった分かれ道も同じかもしれない。


 あの日記から読み取れる重要なことは、『落ちた』ことだ。今のように横移動を続けることで山や崖の側面から外に出るよりは、上を目指した方が外に出られる可能性が高い。

 あの大空洞を登って天井付近の横穴に入れば、出られる可能性が高まりそうだ。


 『7つの王国』を『七つの王国』にしたほうがいいんじゃないかと思ったけれど、今更変えるのもなぁと思い止めました。

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