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あちーぶ!  作者: キル
86/388

『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』16

~~~ギンカ~~~


 気を取り直して、ログイン。とにかくみんなと合流しないと。

 木陰で休みつつ、ステータスはステAに2だけ振って様子見をする。残りは合流してから検討だな!

 HPはかなり減ったけれど、休んでいる間に食べた木の実や果物の効果もあったのか、自動回復で60まで戻ったので、そろそろ行動開始!

 とはいえ、当初の目的、登山だけはやっておきたいので、もう一度上に登る。灰色カニを避けるルートを見定めながら慎重に登っていく。


 ほんのりと起伏のある稜線を進み、ついに目の前に周辺で最も切り立った山を正面にとらえる。山には強力な魔物が居るのがゲームの定番だけど、ここまでワイバーン以外は遭遇しなかった。これからが本番か?


 雲が差し掛かっているので、かなりの高度だけど、ドワーフが入手しやすいスキル[山岳適応]が効果を発揮しているのか、あまり寒くない。[山岳適応]も既にレベルが2に上がっているし、自動でスキル経験値が増えているんだな!


 既に草木は周辺に見えない。岩の中をずんずん登っていく。見た感じ、ルート上に巨大な生物が隠れ潜むような穴は見つからない。


 30分ほど登り続けて進んで、山頂がかなり近づいた頃。


「グォオォォオオォォッォオオオオオオッォ!!!!!!!」


 何かの咆哮が山に響いた。慌てて地面に伏せて、周囲を確認する。しかし、空には何も見えない。頂上も居ない。下を見ても居ない。


「グガガァアアァアァガッァ!!!」


 地面か!? 地面が揺れるようなことは起こっていないけれど、音が地面から伝わってくる。耳を地面に当てると、小さなうなり声が伝わってくる。


 登っていいのか、降りなければいけないのか……。


 ギンガは冒険者だ! まだ登れる道があるなら登るべき! 死んでも復活するし、みんなの土産話になるから戻る理由がない!


 立ち上がり、登山を再開する。うなり声は聞こえるものの、先ほどの咆哮は聞こえなくなった。そろそろ山頂だ。既に山は両手を地面について登るほど急斜面になっていた。手を掛ける場所があるから、先へ進むのは問題ないけれど、流石に素手は厳しいのか、時々HPが減っている。


『小さき者よ、そこで止まれ』


 どこからともなく響く声。言われた通り足を止める。周囲を見渡すが、誰かが居る様子はない。威厳のある、女性の声だ。恐怖は感じないけれど、従わないとよくない気がする。


『答えよ、何故それを求めるのか。富か? 名誉か? 戦乱か? 平和か?』


 ん? 何か勘違いが……やばい、必要なイベント全てスキップしてここに来たのかも。


『何故ここに来ることを望んだ。答えよ』


「えっと」


 すごい目的とかぜんぜん無い。

 ……確か、こんな時に使える有名なセリフがあった。


「そこに山があるから?」


 今の銀華の気持ちはこれだ! 昔の偉い人はいいセリフを言うなぁ。


「あと、友達と合流したときに、山に登ったって話題があると面白いだろうなーって、思ったから!」


 威厳のある人の声が聞こえないな。あ、まだ伝えてないことがある。


「最初は、山に登ると上から街が見えるんじゃないかなって思ったからです! そのあと、好奇心で登りたくなったんです! これで全部!」


 これでどうだ! もう言えることは何もない!


『……フフッ。嘘偽りはないようだ。まさかそのような目的でこの山に登るものが居るとは思いもせなんだ』


 好感触?


『力は小さけれど、種族はジャイアントドワーフか。条件を満たしておる』


 その言葉と共に、山頂に光を放つ人物が現れた。人の形をしているけれど、顔も手足も何もかもぼんやりと光っているから、詳細がわからない。光る全身タイツ?


『不遜なことを考えておらぬか?』


「いいえ。光る全身タイツっぽいなーって思っただけです!」


『それを不遜――いや、悪意が皆無か。素直さと純粋さは評価できるが、言葉を選ぶ思慮は持った方がいい』


「はい!」


 なんか、先生っぽいな!


『こちらに来るように』


 言われた通りに、光るタ……人の所に登り進める。

 山頂は少し平らになっているので、立つことができた。


『そなたにはこれを手にする資格がある。持っていくがよい』


 光る人のすぐ傍には、金色に光る棒がある。明らかに何か重大すぎるイベントっぽい雰囲気がビンビン感じられる。


「ええっと、そういった特別な感じは無くて大丈夫です! 必要な人に手渡ればいいので、ギンガは持って行かなくていいですか?」


 ギンガが持っていくと、それが欲しい人が手に入れられなくなるんじゃないかな?


『フッ、アハハハッ! 良いな、そなたのような者が案外最適なのかもしれぬ!』


 何やら笑い出す光る人。どうすればいいのかわからないので、とりあえず次の言葉を待ってみる。


『これをそなたが手にしたところで、これがこの場から消えてなくなるわけではない。同一存在が複数になるだけだ。後から来た資格ある者が手にできないことはない。そうだな……そなたの場合は、これを手にしていれば我のような存在に道を阻まれる手間が減ると思えばよい』


「光る人さんのような人は他にもいるんですか?」


『そなたは聞いたであろう、我の咆哮を。森に、氷にと封されている我と同様の存在が道を阻むこともあろう。そなたが仲間らと我らの領域に偶然入り、怒りを買い打ちのめされることもあり得るからな。これを持っていれば、いきなり倒されず話は聞いてもらえるであろう』


「それはいいかも! 行きなりわけわからず倒されるのも嫌だから!」


 ギンガが持って行ってもなくならない、通行許可証と思えばいいかもね。役に立ちそう! 持っていきたいって伝えたら、棒を手に取って引っ張るだけで良いと聞いたので、棒に近寄る。

 両手で持って引っ張ると、抵抗なくすり抜けた。手には30センチほどの棒が残り、地面にも20センチほど地面から顔を出した同じ棒が残っている。話にあった通り、他の人も入手できそうだ。

 考えたら、MMORPGで個人限定のアイテムをそんなにポンポンと配布したりはしないか。


『システム:特殊アイテム【王笏の欠片(水)】を取得しました』

『システム:【王笏の欠片】は他者に譲渡できません』

『システム:アチーブメント【王笏の欠片(水)を取得】を獲得しました』


 システムさんからの通知だ! ステータスが妙に変化するとかではなく、単にアイテムの説明とアチーブだった。重要っぽいけどイベント限定アイテムのように、特殊効果はないんだね!


『手に取ることができたようだな。ストレージに入れておいても我らはそれを感知することが可能だ。ストレージを使えるようにしてやろう』


『システム:称号【水龍の加護】を獲得しました』


 あ……いや、ストレージが増えるだけの加護だ、よかった。ストレージは7か所増えてるな。全部で7つ欠片があるのかな?


「ありがとうございます! それにしても、山に居るのに水龍さんなんですね?」


『相性の悪い場所だからこそ封印されているのだ。我が湖に封印されたところですぐに抜け出してしまうぞ』


 確かに、そう言われたそうだ。それにしても、普通に会話してるこの水龍さん、封印されてどう思ってるのかな?


「水龍さんは、どうして封印されてるんですか? やっぱり暴れた?」


『我には封印された以前の記憶が無い。ゆえに、水龍と名乗ってはいるが本当に龍なのかもわからぬ。ただ、そなたに渡した欠片が全て揃い、正しく使われた場合に封印は解けると我の魂が知っておる』


 手にした金色の棒を見る。これが封印解除のアイテムなんだ。だから色々な人に渡してチャンスを広げてるのかな? いい龍なのかどうかわからないけれど、意思疎通ができるので暴れまわるだけの魔物とは言えないよね。


『ここから見える範囲なら、そなたを転送可能だ。どこを望むか?』


「送ってくれるんですか!?」


『この程度なら何ら問題ない』


 おお! これで街に一直線だ!

 ストレージは課金要素ですが、ゲーム内で色々と増やすイベントはあります。記念アイテムとか保管していると、ストレージはすぐ満タンになってしまうので、イベントで増えたからと言ってストレージの売り上げが下がるわけではありません。

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