『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』341
「ログアウトをしても、すぐに肉体に戻るわけではないのでござるな?」
シープ本体の話をして、ログアウトの話に入った後もマケマケさんの質問は止まらなかった。むしろ、さらに聞きたそうにしている!
「そうですね。この世界からログアウトしたら、選択肢がふたつあります。ひとつは、クランなど仲間内で仮想空間を準備している場合ですね。ゲームから完全にログアウトする前にその空間に移動することができます。そこでは、距離に関係なく仲間と会話が可能です」
ときどきギンガたちが部活で作戦会議をする場所が、その空間になる!
無料で提供されている空間は、集まって会話ができるだけの場所で、かなり殺風景!
お金を払って空間を拡張したり、家具を購入したりすることで、ゲーム内とは別に快適な生活が送れるんだけど、ギンガたちは無料で借りた状態で集まってる。
ゲーム内でのクランハウスとの大きな違いは、お金を払えば誰でも空間が作れることと、破損しないこと。破損しない特性から、ゲーム内では出来ないような模擬戦をするために借りている人もいるらしい!
無料でも仲間と集合したり伝言を残したりできるから機能的には満足している。多分、ギンガたちは無料の空間を使い続けるんだと思う! くつろぎたければ、ゲーム内の喫茶店とかでくつろげばいいからね!
「もうひとつが、その空間を経由せずにゲームから切断して、シープ本体への移動を選択することです。こちらも、個人の部屋か、シープタウンを選択できます」
個人の部屋は、その名前の通りシープ内での個人の部屋。防犯はしっかり出来ているので、許可のない人は勝手に入れない。部屋の数を増やせば、プライベート空間とお客さんを招く部屋などに使い分けることができるし、家族ならアカウントを紐づけして共有の部屋を作ることもできる。
ゲームを遊ぶ場合、個人の部屋から入るのが一般的。
シープタウンを選択するのは、シープタウン内の個室などからログインした場合に選ぶことがある。友達と出かけて、話の流れでゲームにログインすることがたまにあったりするんだって黄金音ちゃんが言ってた!
システム的にはゲームに限った話じゃなくて、シープタウン内に会社がある場合、その会社にログインするといった場面でも使われるから、ログアウト先は状況によって幾つか選べるようになっている。
もう少し補足すると、ログアウト先を個人の部屋にした場合、外出先からログインしても、個人の部屋をログアウト先に選択することができる場合もある。選択できないこともあるけど、これ以上細かいことは状況によるとしか言えない!
「そこから先へさらにログアウトすると、肉体が覚醒します。ここから先はログアウトはありません」
「そうでござるか。となると、その体には外の世界の意識が入ってる状態であるのだな。では、その体の元の持ち主の意識はどこかにあるのでござるか?」
「この体は、私の意識を元に新たに作られた体です。ベースは現実にある肉体を基準としたな姿で、この世界の種族ごとに特徴を変化させたものですね。私たちは全員、この世界のヒトと近い外見です」
意識を元にしたというのも、正解のようで不正解だけどね! 説明が大変だからその方がよさそう!
実際は年に1度、誕生日付近になると体のデータを病院とか特定の施設などでスキャンして、その時点での体のデータを元にシープの身体情報を構成してVR空間に入っている。子どものころから続けているから、ゲームで子どもの体が必要になった時は、過去にスキャンした自分たちの体を利用している。
個人で楽しむだけのゲームだと、スキャンした身体データを使わなくてもいいんだけど、複数の人と一緒に遊ぶようなゲームの場合、使用する体の年齢は別として、自分の体を使う必要がある。
体をスキャンする時期になると、ダイエットしたり筋トレしたりする人が激増する!
「転生とも転移とも違うのか。では、記憶や経験はどこにあるのでござるか? 意識さえすれば、能力を変え放題というわけでもござらぬだろう」
「ここで見聞きした記憶は、肉体側で覚えますね。行動の記録や経験は、シープやこの世界のデータに分散して保存されています。スキルや所持品など、この世界独自のものは、この世界に記録されているはずです」
「そうでござるか。ちなみに、どこに保存されているかはわかるでござるか?」
「わからないですね。データの改ざんの恐れもあるので、見えるところにはありません」
個人のデータに色々と紐づけされているからわかりにくいけど、ゲーム内で起こることは全てゲームの中だけで完結している場合が多いんだよね! 現実側とリンクしたキャンペーンとかあるから、そういったサービス関係は別なんだけど、ゲーム内で使えるスキルや所持品は、他のゲームとは関係がない。
それでもスキルに関しては、現実で覚えてることが多少できてしまう。現実で泳げる人は、ゲーム内でもスキルが無くてもある程度は泳げるし、スキル習得まで他の人よりは速い。
とにかく、個人のゲームデータの記録されている内容は、現実とリンクしているものがありつつも、ゲーム内のどこかに保存されていることが普通だ。ギンガたちみたいな普通のプレイヤーには、それがどこにあるかはわからない。
ミカン:モエギ先輩、地下の魔石について、話しても良いっすかね?
モエギ:地下の?
アカネ:蘇生とかで、魔玉が地上に行ったり来たりしてたことですか?
ミカン:それだ。相手はそれを知ってるかもしれないっすけど、現状の未来は廃墟っすからね。新たな知識で何か変わるかもしれないっす。
モエギ:良くなるか悪くなるかは、賭けみたいなものかー。
未来の廃墟の姿は、何がきっかけでああなったのかはわからない。未来のアクアたちにも普通に過ごしてほしいと思っているギンガたちにとっては、変わるきっかけがあるのなら試してみたいかも!
ギンガ:話してもいいんじゃないかな!
シホ:今この瞬間、この時代がどうこうなるような話ではないでしょうからね。ただ、いきなり話すのではなくて、少し探りを入れてからのが良いかもしれないわね。
モエギ:探りかー。
ミカン:うちが話してみるっす。
「魔石というか、魔玉って、この世界の人の魂っすよね。プレイヤーで言うならキャラクターデータっす。それが無ければ生きていられないっすよ。先ほど魔石を除去する試みが成功したって言ってたっすけど、除去されたひとは生きてるんすよね? 生きてるなら魔玉はどこかにあるってことになるんすけど、どこに行ったか把握してるっすか?」
魔玉に関してはプルトさんの領域なのか、マケマケさんがプルトさんを見る。それとも、何を話すか決めてるのかな?
「恐らくですが、この世界の地下でしょう。この世界の地下に魔力の大きな塊があるのは、龍と関わっているから知ってますよね? 魔石を除去するための魔法があるのですが、その魔法の仕組みに世界の魔力と統合させる式が組み込まれています。魔玉が無くなった人の魂は、地下の魔力の塊と共にあるのでしょう。そのため、世界が消えない限り、魔玉も無くなることがなく、死んでも蘇生されて生き続けることができます」
シホ:ほぼ知ってるみたいね。
ミカン:蘇生に関しては、話してしまってもいいかもな。
「蘇生について、うちらが予想してることがあるんすけどいいっすか?」
そう前置きをして、茜と蒼奈が調べた蘇生や、これまで調べてきた蘇生方法についての話をする。魔石のないプレイヤーの蘇生。帰還石を使った蘇生。魔法による蘇生。それぞれ予想した話として説明をした。
ダイエットや筋トレについて。VRで食事ができるので、食欲が満たされて現実で食べなくても気にならないという側面もありますが、シープにログインする間は身体の健康度合いについてスキャンされているので、食事をしていなかったり、水分不足になると強制的にログアウトされます。運動不足になりがちなこの世界ですが、ゲーム世界でも現実の体形が反映されるので、筋トレをしている人はそれなりに多いです。




