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あちーぶ!  作者: キル
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『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』340

「ただし、私たちはあなたたちと違って、気軽に元の世界へ戻ることはできません。その点では、この世界の依存度は非常に高いです」


「それなのに、魔石を消すことを止めないのですか?」


「はい」


 プルトさんの言葉や話し方には、魔石を消すことをやり遂げるというような、強い意思が感じられる。普通に話していても、これを覆すのは難しそうだ。


「プルトさんの名前は、古い書籍に何度も見かけたっす。同じ人で良かったっすか?」


 萌黄先輩とプルトさんの会話が少し途切れたので、蜜柑先輩が間に入る。長生きをしているなら、同一人物だからね!


「その書籍の人物が私と一致するかはわかりませんが、古い時代から生きていたかと問われたら、その通りですね。数百年前の本に書かれていてもおかしくありません」


「うむ。拙者も同じでござる」


 プルトさんが返答をしてから、蜜柑先輩がマケマケさんの方にも顔を向けると、同じように長生きをしていると返事があった。これでおそらく、茜や蒼奈が見た過去のマケマケさんとは同一人物で決定かもね!

 それにしても、忍者って職業はありそうだけど、言葉まで強制されるのかな? 忍者っぽい話し方で楽しそう!


「プルトさんたちは、プレイヤーと同じで魔石を保有してないっすよね? それが長寿の秘訣っすか?」


「なぜ……あぁ、龍がアカネちゃんとの会話を聞いてたのか。そう、魔石の無い者は長寿を保つことができます。常に帰還石を所有している状態に近いですね」


「その魔石が無い状態は、魔力病で魔石を消す手段とは、別の方法じゃないと実現は無理なんすよね? 魔石を無くすにしても、その方法を広めるのは難しいっすか? それなら魔力病で死亡させなくても目的は達成できるっすよね?」


「もちろん、それは考えてます。既に人や動物から魔石を除去する試みは成功しています。そのため、人類や一部の生物なら時間をかければ可能ですね。しかし、世界にいる生物は把握しきれない程いるので、その全ての魔石を生かしたまま除去するのは不可能だと判断しています」


 中央の街が、その試みの成果なんだと思う。アカネによると、あの街の人や生物は、魔石がないまま暮らしているみたいだからね!

 何年かけてあの町を作ったのかはわからないけど、話に聞く感じ、街の人は普通の生活を送れてるみたい!


「まぁ、全てを救うのは無理だろうし、うちもそこまでは求めないっす。もしかしたら、それで人を襲う魔物が全て消えたら、人にとっては良いかもしれないっすからね。うちが気になるのは、何処までの生物を救うつもりがあるのかってことっす。選ばれない生物は、選ばれないに足る理由があるんすか?」


 プルトさんは軽く目を閉じて、一度うなずいてから目を開ける。


「ないですね。すべては、私たちのエゴによるものですから。この世界から魔石を無くすことそのものが、この世界を生きる全ての生物に対して正当な理由にはなっていません。それでも、それを達成する意思が私たちにはあります」


ミカン:これは誤魔化されてるのかもしれんが、プルトさんの言う『私たち』は、どこまでだろうな。

シホ:そうね。プルトさんたち転移者全員か、それとも、この場にいるプルトさんとマケマケさんだけに限定した話かわからないわね。

モエギ:アカネちゃんが影の記憶で見た、家族をログアウトで失った転移者の人たちって、他の場所で見たことある? 

アカネ:プルトさんとマケマケさん以外だと、ハウメアさんかなぁ。それ以外だと、あのときに周辺にいた人を他で見かけたことはないよ。

ギンガ:その人たちも、どこかで活躍してるのかな?

ミカン:話題には出てこないんだよな。


「自分たちの世界を優先させる、ですね」


「はい」


 萌黄先輩の確認に、頷くプルトさん。少し前の話に出てきた、世界を天秤にかけた場合の話だ! ギンガもどっちが大切かって言われたら、現実世界の方が大切なのは間違いない。でも、こっちにも好きな人たちが沢山できたから、選ぶのは苦しい。


「プルトさんとマケマケさんは、苦しくないんですか? 知り合いが何人もこの世界にいたりしないの?」


 思わず、聞いてしまった。ギンガがそれを選べって言われただけでも苦しいのに、実行しようとしているふたりはどう思ってるんだろう?


「――良い質問ですね。懐かしい気持ちが思い出されます」


 プルトさんは、目を閉じて寝たふりしている茜の背中を撫でる。


「皆さんは、猫――動物を飼ったことがありますか? 大抵は、飼い主より寿命が短いことでしょう。その短い寿命の中で、共に過ごした日々を飼い主は忘れるはずがない。そう思いますか? 現実は、記憶が薄れていくのです。全てを覚えておくことなどできない。断片的な、幸せな記憶。それが切り取られて残るだけになるのです」


 ペットとの別れというのは、よくわからない。ただ、なんとなく言いたいことはわかる。昔に数回会った人や、もうログインしてないゲームの先で知り合った人の記憶は、かなり薄らいでいる。


「1000年近く生きている私にとって、人々はそのような対象です。長く生きる私は、そんな彼らを数えきれないほど見送りました。それでも、彼らがいなくなったから、記憶から薄れたから世界に干渉するのではありません」


 目線が、眠ってるアカネに向く。猫とか動物が好きなのは間違いなさそうで、雰囲気は茜が猫を見ているのに近い気がする!


「本当に取り戻したいものが、記憶から消えていく。取り戻したい欲求が、気持ちから義務になっていく。私にとって、それが苦しい。この世界の友にも、もちろん好意はあります。しかし、1番大切にしているものまで同じように失いたくはありません。それを取り戻すために、自分たちの世界を優先させるのです」


 プルトさんの言葉の後に、隣のマケマケさんも「拙者も同じ気持ちでござる」と答える。ふたりとも、同じような思いを持っているのか。


「こちらからも、聞きたいことがあるのですが、いいですか?」


 プルトさんが視線をあげて、萌黄先輩に問いかける。


「はい、わかることであれば」


「ログアウトについて、詳細を知っていますか?」


 ログアウト! 影の記憶の中ででてきた、プロキマさんたちが消えたときに選んだ選択肢だ。この世界の住人では、普通見聞きしない言葉だ。


「何人か、他のプレイヤーの方に聞いたのですが、私たちがその言葉を知っている前提で話されるので、よくわからないのです。こちらも、異世界から来たことを話すのを隠したため、プレイヤーを装って聞いたのが悪いのですけれど」


 プレイヤー同士なら、ログアウトの説明をわざわざ聞くことはないからね! ログアウトのボタンなんて、子どものころから見てるから、それを知らないプレイヤーがいるとは考えにも出てこない。

 ギンガが聞かれても、ゲームごとに若干違うログアウトの仕様について質問してるんだと思う! ログアウトはどこで行えば良いかとか、ログアウト後にこのゲームでは肉体がどんな状況になるかみたいな。


モエギ:シープについて、NPCに話しても良いんだよね?

ギンガ:アクアには話したよ!

シホ:アクアさんは管理NPCのような側面がありますからね。とはいえ、相手が受け入れられるなら話しても良かったはずですわ。

ミカン:相手がこっちをプレイヤーと認識しているから、問題ないっすね。


「それでは、私たちの元となっているシープというシステムからお話します」


 ログアウトを説明する前に、それが何に使われているかの説明から入る。プルトさんよりも、マケマケさんの方が興味を引いているようで、細かな質問の回数はマケマケさんの方が多かった!

 NPCにシープについて話していいかどうかですが、状況が許せば問題はない扱いです。現実で言えば、隣の住人がいきなり「私はプレイヤーで君はNPCだよ」と言い、何やらわからない説明をしているのをポカーンと聞いてる感じです。生活には何の影響もないですし、むしろプレイヤーの方が変になったと思われます。相手が受け入れるかどうかは、そういったプレイヤーの言葉を受け入れる姿勢がNPCにあるかどうかで、その姿勢が無ければプレイヤーはおかしな人として見られてしまいます。

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