『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』339
~~~ギンガ~~~
アカネ:ということを話したんだけど。
モエギ:ずいぶんと壮大というか、時間をかけて魔石を消す予定だったんだね。
シホ:少なくとも、人類は魔力病で消える気がするわね。
ギンガ:未来の人が居ないのは、それが原因なのかな?
ミカン:廃墟時代の場合は、失敗したんじゃないか? 生き残りの人類が住んでたからな。
魔石から蘇生した人たちがいたんだった! 今は初期時代に部屋を借りて、冒険者として生活しているって聞いてる! 蘇生されるまで、地面のなかで過ごしてきたって言ってたから、魔力濃度が上昇した場合って、影響がかなり高いはずなんだよね。その状態で生活できたんだから、死亡の原因は魔力病ってわけじゃなさそう!
シホ:魔物も普通にいたのよね。まだ魔力濃度が上がりきってない状態だったのかしら。
ミカン:魔物の体の変化を見る限り、魔力病はあったんじゃないか?
魔物の体の大きさが、初期時代と比べると廃墟時代はかなり大型になっている。魔石の肥大化に合わせて体が変化したのなら、魔力病は起きていたはず!
モエギ:それにしても、魔力病の計画ってかなり前からあったんだね。ヴィナスの村も関係してたんでしょ?
アカネ:壊れた王笏の欠片をお墓に入れた事件ですよね。あれは魔力を土地から消してました。
ミカン:魔力病の効果を比べてたのかもな。魔力を増やすのか減らすのか、どちらが効率的に魔石を消せるかをな。
シホ:魔力を消す方法は、少しでも魔力があると病気が回復してしまうのが問題だったんじゃないかしら。
ギンガ:魔力が多すぎたら、消費するの大変だからね!
モエギ:魔法で魔力を消費しても、結局は魔力が周辺に広がるだけであまり変化しないから、増やす方が安定してたのかもね。
龍による魔力の循環って、環境を維持するのにはすごく良かったんだね。その機能が無くなるだけで、色んな所で魔力病になっちゃうから、王笏を戻すのはやっぱり必要なんだって思う!
「プルト様ですね、少しお待ちください」
冒険者ギルドの総合受付に、待ち合わせの約束をしたことを伝える。指定した通りの面会方法だ!
しばらく待つと、茜をかかえたプルトさんと、隣を歩く忍者が居た。あれがマケマケって人みたい!
「こんばんは。コガネさんはいらっしゃらないのですね」
「こんばんは、コガネは別のところに居ます。私は代理のモエギです。ミカンとギンガには前に会ってるはずだと思います」
萌黄先輩が前に出る。ギンガの名前を呼ばれたから、頭を下げる。
「私はシホと言います。よろしくお願いしますわ」
「よろしくお願いします。あ、こちらは私のパーティーメンバーで、マケマケと言います」
「マケマケでござる」
右手の指2本を胸の前にあげて、忍者っぽい構えで挨拶をしてきた! なんか忍術を使いそう!
「よろしくお願いします」
それぞれに挨拶をして、本題に入る。本題と言っても、茜の引き渡しだけなんだけどね!
「ありがとうございます。割と自由に出歩く子なので、気が付いたらどこか行ってるんですよ」
「子猫ですから、気を付けてくださいね」
「はい」
萌黄先輩が茜を受け取って抱えこむ。茜はそのまま、萌黄先輩の胸にゴロゴロとなついた感じで落ち着いた姿勢をとる。
「少しだけお話しませんか? 近くの食堂で部屋を取って」
「いいですよ。龍から話を聞いてるでしょうし、疑問もあるでしょう」
萌黄先輩の提案にプルトさんが頷く。冒険者ギルドから出て、近くにある食堂で個室を借りて、食事を幾つか注文した!
食事といっても、デザートとドリンクの軽い感じ! マケマケさんはどうするのかと思ってたら、意外にもケーキを注文してた。男の人も甘いのは好きだよね!
「単刀直入に聞きますが、龍の王笏を壊していたのはプルトさんたちですね?」
デザートを注文して、運ばれてくるのを待たずに萌黄先輩が質問を始める。やっぱり最初に聞きたいのはそれだよね!
「そうです、我々が壊しました。もしかして、王笏を戻しているのは貴女たちですか?」
「はい。壊れている王笏を修復させていただいてます」
少しだけ、ピリッとした空気が流れる。そんな空気も、テーブルの上に寝転がっている茜がひっくり返ることで少し柔らかくなった。
「最初は、龍の声が聞えたんです。悲痛な、叫び声が。それがかわいそうで、王笏を戻していったのです。それからは直した龍と仲良くなり、それを契機に全ての王笏を直そうという思いで行動しています」
「なるほど。龍との会話がきっかけなら、そう行動するのはわかります。良いことを聞かせてもらいました」
頷くプルトさん。手が自然に茜の伸ばした手に触れている。
ミカン:あ、これってあのフラグか?
アカネ:フラグ?
ミカン:龍の肉体の地下、王笏の杖の方に意思が移ってただろ? あれって、この話がきっかけじゃないか?
シホ:この時代は、杖はすでに地下へ設置されてますよね? それに、私たちが伝える前に龍の意思が移動してるのは、時系列が逆じゃないでしょうか?
ミカン:うちらが入れたくらいだから、場所を知ってるのなら入るのは容易だろう。それに、王笏が6本も直されてるんだ。対策を考える過程で龍の声には行きつくだろうよ。それが、早いが遅いかの違いだな。
「この国の王笏も、戻す予定なのですよね? 私たちはそれを止めることはしないので、どうぞお戻しください」
「はい。直させていただきます」
話に聞いていた通り、ここで戻されても問題ないくらいに長生きをしているため余裕があるんだと思う! ギンガたちが直しても、もっと後で壊せばいいだけだからね!
デザートとドリンクが運ばれてきたので、並べられている間は会話は一時中断! それぞれ自分のぶんを食べやすいように並べた。
茜にも水と猫用のデザートが出された。精神的には人なのに、茜は猫用の食べ物も好んで食べるのが面白い!
「魔石を消すとのことですが、その先にある目的が何か、伺ってもいいですか?」
「端的に述べるなら、全てを元に戻すため、ですね。そもそも、全ての生物は本来魔石を保有していませんから」
「だとしても、魔力病で魔石を除去した場合、その除去された肉体は残るのですか? 仮に、帰還石で蘇生できたとして、私たち人は良いでしょう。ですが、動物や植物は? 魚や鳥は? 全ての生き物に帰還石を持たせることは不可能では?」
「その通りですね。けれど、それは元に戻したその先がどのような世界かによるでしょう」
プルトさんは、注文した飲み物を一口飲む。ホイップがのったアイスココアだ! なんかギャップがあってかわいい!
「あなたたちはプレイヤーですよね? この世界とは別の、異邦人でしょう?」
「……はい。この世界には、寄らせてもらってる身ですね。しかし――」
プルトさんが、萌黄先輩の言葉を途中で手で制する。
「間借りとはいえ、この世界にいる以上は、この世界の行く末を案じるのは普通のことです。あなたたちに口を出す権利がないとは言いません」
いちごとブルーベリーが乗ったタルトを切り分けて食べるプルトさん。ギンガはチョコブラウニーを選んだけど、あっちもおいしそう!
「私たちが調べた限りでは、プレイヤーの皆様は定期的に自分たちの本来の世界に戻っているのですよね?」
萌黄先輩は、ギンガたちを軽く見てから「はい」と応える。NPCに現実側の話をするはちょっとためらうからね!
「本来の世界と、この世界。天秤にかけるとしたらどちらを選びますか? もし私があなたたちと同じ立場なら、本来の世界を取ります」
「先ほどの元に戻すという話を踏まえると、つまりプルトさんたちはプレイヤーではない上で、別の世界から来たということですか?」
「そうなります」
影の記憶で見たことだけど、あの記憶が偽物じゃなくて、正しくプルトさんたちの過去を示していることを、改めて本人の口から聞けた。普通にデザート食べてるけど、辛い話なんだよね。
魔物の肥大化の話が出ていますが、樹木も肥大化しています。ウラーヌスで王笏を探すために森をさまよっていた時に書かれています。




