『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』342
体調不良のため、今週休みます。
説明が終わったところで、プルトさんとマケマケさんが少しだけ顔を見合わせてから、黙って過ごしている。何か考えてるのかな。
アカネ:ふたりとも、右……向こうから見て左斜め下を見てない?
シホ:そういえば、そう見えるわね。
ミカン:ソウルリンクでの会話してるんじゃね?
そういえば、アカネが保護した人の中に、ソウルリンクが出てきた子どもが居たはず! それを使って会話してるんだ!
「恐らくですが、お二人は文字での会話をしてますよね?」
萌黄先輩がそう声をかけると、ふたりともさっと顔をあげてこちらを見てきた。
「プレイヤー側にも、それと同じ仕様はわかりませんが、似たような機能がります。先ほど話したシープの基本機能にあります」
プルトさんたちが何か話す前に、萌黄先輩が言葉を遮るように話をつづけた。ソウルリンクかどうかは別として、プルトさんたちはギンガたちがプレイヤーだって知っているから、似た機能があっても驚きはしなさそうだよね!
「……そういった機能がシープにあるのでござるな。その通り、文字で会話をしているでござる。特定の相手と会話ができるようになる仕組みなのだが、こちらと同じか確認させてもらって良いでござるか?」
システム的な話はすでにしているので、こちらの会話方法を伝えても最初ほど驚きは少なかった。後からフレンドとして登録をして、会話ができる人を増やす方法があることに興味があるようだった。
「私とフレンドになれますか?」
プルトさんが胸に手を当てて聞いてくるけど、実はもう、別のNPCで調査済みなんだよね。
「シープのシステムを使ったフレンドは無理です。プルトさん側にフレンド登録のメニューはないのですよね? フレンドは贈る側と受け取る側の双方で同意が必要なので、どちらもメニューを操作する必要があるのです」
フレンドになるには、双方の同意によって初めて本登録のメニューへ進む。
最初の申請は、フレンドになりたい人をターゲットで指定する。これが片方だけだと、相手には何も伝わらない。お互いにターゲット指定をすることで、フレンド登録をお互いしてもいいという同意を得たことと判断されて、本登録へ進むことができる。
だから、プルトさん側にフレンドの指定ができない時点で、フレンド登録はできないことになる。これは、蒼奈たちとあの空間で影の記憶を見た後にプロキマさんやキャロンさんを助けられるか検討して、その過程で後日にNPCとフレンドになれるかどうかを調べたから、既にわかっていたことだ。
「シープよりも前にあったVRのシステムに、フレ申請PKとかが一部ゲームであったらしいからな」
「なにそれ!」
「昔あったシステムにな、フレンド申請に一方が申請すると相手にいきなり同意するかどうかのメニューが現れたそうだ。それを利用したプレイヤーキラーのふたり組が、ひとりは申請して画面を相手に出し、もう片方が視界を奪った獲物を狩る。対策をした結果、今の状態に落ち着いて、それがシープにも使われてるそうだ」
「フレンド申請の受付ページを、別で作って後から開くゲームもあるわよね?」
「少し古いタイプがそれだな。今は思考読み取りタイプだから感覚でできるほうが好まれてるんだ」
シープの基礎的な部分も、時間を開けずにアップデートしてるから、フレンド登録も昔と比べて変化しているみたい! ときどき、昔の方が良かったって話に聞くけれど、ギンガにはよくわからない感覚だ。
「それで、こちらの会話方式が、個人チャットとかパーティーチャットとか呼ばれるようなシステムで、主に思考することで文字を表示したり音声で話し合ったりすることが可能です。プルトさんの場合は、目の動きからすると文字表示ですよね? その伝達方法に名前はあるのですか?」
「本来の正式名称はわからぬでござる。ただ、拙者らの居た世界にも離れた場所へ文字や音声を伝える道具はあったでござる。そこから、遠報文書と最初に名づけ、一般的にエンブンと略されたでござるな」
エンブン。……名前が略されていくのは、便利な道具の証みたいなものかも!
それと、ソウルリンクという名称がわからないのもわかった。ギンガたちはシステムのアナウンスで名称を知ることができるけれど、そうじゃなければ名前つけないと不便だからね!
「プルトさんたちが連絡を取れる相手は、どんな相手ですか?」
「主に親族でしょうか。特に両親だと可能性が高く、兄弟や祖父母では連絡が取れるようになるまで時間がかかります」
そう言われて、マケマケさんに自然と目が移る。茜の話で言えば、娘の旦那さんだから親族だっけ?
「あぁ、マケマケとは親子でも夫婦でもありません。親族ではありますが、この場合は遠い親戚と思ってください。彼と連絡が取れるのは、後から連絡が取れるようにしたからですね」
後から追加できるんだ。そういえば、ソウルリンクの接続って、茜が無理矢理繋げたんだから、できなくもないのかな?
「追加するには幾つかパターンがあって、確率が高いのは、長期に渡って共に過ごすことでしょうか。高いといっても成功例も多くはないですし、何年もかかります。関係性が親族のように身近になることが条件なのでしょう。さらに低い確率だと、魔石を保有している相手から魔石を取り除いたときですね。2例だけ結果の報告があります」
アカネ:2例の内、ひとつは救助した女の子でしょうか?
ミカン:文章を送った相手が血縁という線もあるだろうから、断言は難しいがな。
ギンガ:アカネがソウルリンクを繋げたのって、魔玉っぽいのをくっつけんたんだよね?
アカネ:うん。魔玉らしき光をくっつけたらソウルリンクがつながった。
シホ:それなら、魔玉が物理的に近くなることが条件かもしれないわね。魔石除去の場合は、除去された魔玉が体から離れるときに術者の魔玉と接触したのかもしれません。
モエギ:親子とか兄弟は、どのタイミングかな?
ミカン:親子、とりわけ母と子どもなら、妊娠中に魔玉が重なったんじゃないっすかね。夫婦とか兄弟はわからないっすけど、ゲーム的には血縁や家族関係ってシステム的にどこかに記載されること多いっすからね。そこから繋がったかもしれないっす。
「なるほど。私たちと違い、視線によって会話しているかどうかは判断できませんね」
ギンガたちがパーティー内で会話してる様子を観察していたみたい! 文字だけで連絡を取っているわけじゃなくて、普通に会話しているようなやり取りで連絡が取れるから、プルトさんたちみたいに視線が左下に固定されることはない!
「そうですね、仕組みが違いますので。それと、そちらの会話方法についてわかることがあります。気が付いてると思いますが、その仕組みは魔玉にあります。魔玉と魔玉が接触することで、何らかの繋がりを持つことができます」
「そうでしょうね、それは理解できています。先ほど蘇生の話をされたのは、この話に繋がってくるからですよね? 死亡時の魔玉や、龍の帰還石に包まれるタイミングなど、魔玉が形を持たずに彷徨い、それが他の魔玉と触れ合う偶然によって会話ができるようになる仕組みになるのでしょう」
「はい。それと恐らくですが、その繋がりができた魔玉同士は、何らかの見えない糸のようなもので繋がっているはずです。私たちがフレンドやパーティーで繋がる場合、魔玉同士が目には見えない繋がりが生まれるからです。仕組みが似ているため、そちらの会話も同じく繋がりが生まれているはずです」
プルトさんたちの仕組みが、ソウルリンクと同じかどうか断言はできないから、ちょっと遠回しな言い方だけどフレンドの仕組みと似ているってことで納得してもらう。
「糸ですか。フレンドのそれは、見ることができるのですか?」
ふたりの様子が、少し前のめりになっている感じがする。
「仲間の魔法使いが、それを見るための魔法を偶然手に入れたんです」
「魔法――どのような魔法か教えていただけますか?」
「はい。魔法の発動時に発する言葉は、『マスイサー』です」
フレンドに限らず、ゲームで戦闘中にいきなりボタンを押すように表示が出てくると軽く混乱します。進行が停止するのならいいのですが、そうでなければ非常に面倒です。




