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あちーぶ!  作者: キル
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『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』337

~~~チャコ~~~


 なんだか、朝からみんな忙しそうだ~。魔法の練習をするだけと思っていた蒼奈は、近接戦闘の練習をしている。未黒先輩と黄里先輩は、模擬戦の真っ最中。黄金音先輩は本の解読で、シェリマさんは魔法の本を書き写している。


 あたしはホツナルさんを待っているだけだから、どちらかと言えば暇なんだよね~。暇つぶしにチュリアさんと一緒に庭の植物のお手入れをしているんだよ~。


「ここって、植物魔法で整えてるんだよね~?」


「はい。けれど、手助けしているのは一部だけですね。観賞用、薬草用、食用の植物では手の入れる回数がかなり変わります」


 細かい手入れの方法は、エルフ独自の育成方法があるので、細かくは教えてもらってないけど、一番手がかかるのは薬草用なんだって~。

 薬草用の畑に案内してもらうと、あんまり広くない範囲を赤いレンガで囲んでいた。庭が広い割には、すごく狭い畑だね~。


「土地の魔力がどれだけ満たされているか。その魔力の質や濃度が一定であるかが重要なので、あまり広い範囲で育てると手入れをしきれないため、品質がバラバラになるんです」


 薬草を専門に育成しているところであれば、小さな花壇を沢山作って広範囲に育ててるみたいだけど、個人で趣味のように育てるのなら、これくらいがちょうどいいんだって~。


「チャコさんは、この薬草畑から何か感じることはありますか?」


「ん~? う~ん……あんまりないな~」


 ちょっとツンとした、変わった香りがするくらい? けど、それって他の植物も色々と香りがするから変わらないよね~。


「この畑に何かあるの~?」


「いえ。チャコさん自身についてでしょうか。ピクシーは植物と親和性が高い人が多いので、何か感じ取れるのではないかと思ったのです」


「そういえば~、妖精の国は植物だらけだったかも~」


 廃墟時代の何もない様子は別として、妖精の国は植物が多い印象だった。その植物も意思を持って場所を移動してるのが印象的だったな~。


「精霊を見ることができるのはエルフだけと言われていますが、もしかしたらピクシーの皆さんも見ることができるのではないかと思っています」


「そうなの~? 全然気配を感じないけど~」


 紫帆先輩が精霊魔法を使っているのを何度も見ているけれど、何もない空間に紫帆先輩が話しかけているような雰囲気にしか思えない。


「エルフが精霊を見ることができるのは、精霊を見るための目を生まれ持っているからです。肉体と比べて、この目は非常に魔力の純度が高く作られていて、エルフによっては魔力そのものを見ることができるとも言われています。純粋な魔力を見るのは困難ですが、意思を持った魔力である精霊なら、普通のエルフでも見ることができます」


 チュリアさんは、人差し指で下まぶたを少し下げて目を見せてくれる。キラキラしてすごく綺麗で、これが純粋な魔力でできているって言われたら、なんとなく納得できるかも~。


「チャコさんのような妖精の国を出身とする妖精は、他の種族と違って体を構成する魔力の純度が非常に高いのです。エルフの目ほどではないにしても、精霊を感じ取れる能力はあると思うんですよね」


「う~ん。ね~、このあたりに精霊って何処にいるの~?」


「植物の精霊なら、色々なところにいますよ。薬草畑にも3体いますね。薬草の間を、ふわふわと飛び交っています」


 薬草畑をじっと眺めて、精霊が見えるかどうかを試してみる。


 ……わからないな~。チュリアさんの方を向いて、顔を左右に振る。さっぱりだよ~。


「見えないのが普通なので、仕方がないでしょう。でも、他の種族と比べた場合、一番可能性が高いのがピクシーだと思います。もし見えるようになれば、精霊魔法をお教えしますね」


「は~い」


 チュリアさんは【先生】というスキルを持っているらしい。ホツナルさんも学校でときどき先生をやっているように、チュリアさんも先生をすることがあるんだって~。


 とりあえず、精霊を見る訓練はそこそこ続けただけでやめたよ~。そのうち見えるようになるかもしれないってことを頭の片隅に置いておくだけでも良いかも~。

 それより今は、探索魔法に興味を惹かれているから、そっちのレベル上げを頑張りたいな~。


 植物の手入れと探索魔法を使いながら庭をうろつくと、休憩している蒼奈が見えた。チュリアさんに断りをいれて、蒼奈のところへ飛んでいく。


「おつかれ~」


 地面に座り込んで休憩している蒼奈の隣まで移動した。慣れない近接戦闘の練習をしているからか、ずいぶん汗をかいているね~。


「うん、かなり疲れた」


 足を延ばしてぐったりと座り込んでいる蒼奈の姿は、なんか珍しい気がする~。


「訓練の調子はどうなの~?」


「うーん、いまいち。目の使い方をどうすればいいのかが、まだ掴めない」


 こっちでも目の話をしている。蒼奈の目はヴァンパイアだからか、暗視みたいに何か特別なことをすると赤くなるんだよね~。


「どうすればいいって聞いてるの~?」


「そもそも、目の作りが他の人と違うみたい。アカネとかギンガの暗視って、僅かな光でも暗い場所が明るく見えるようになるだけで、仕組みは普通の目と一緒みたいだけど、僕の目は違う。闇視は、光が無くても見える。普通の目ではあり得ないって言われて、確かにそうだと気が付いた」


 そういわれてみればそうか~。物を見るのって、光を見るってことと同じだもんね~。その光が全く無い状態でも物の姿を捉えられるんだから、目の作りがほかのひとと全く違うって言われても納得だよ~。


「空間を捉える感覚器官らしい。使い方を習熟すれば、感覚器官の範囲内にある鞄の中身だとしても何が入っているかわかるらしい」


「透視だ~! 全部スケスケに見えるの~?」


「中身に関しては、感覚的にわかるだけで直接見ることはできないって聞いたよ。サリアスさんに話したヴァンパイアが、本当のことを言ってれば、だけど」


「あ~、気を使って言わないってこともあるか~」


 ヴァンパイアは透視ができるような、なんでも見える種族だとしたら、落ち着いて過ごせないもんね~。現地人じゃなくてプレイヤーのヴァンパイアが透視を覚えたら最悪だよ~。――あ、そっちは見えない可能性が高いのかも?


「もしかして、システム的に隠ぺいされてるかな~?」


「うん。同意のない性的な行為は排除されるからね。少なくともプレイヤーがなんでも透視できることは無いと言える。NPCにも適用されてるかもしれないけど、そのあたりはわからない」


 あたしたちとNPCはルールが違うからね~。透視できる可能性も残ってるのか~。まぁ、NPC相手にはどうしようもないか~。


「それで~、その目が使えると回避とかできるの~?」


「相手の体の全てを把握すれば、攻撃の初動だけで結果を予測できるらしい。もっとも、初動の動きから次に何をするかを覚えないと予測もできないから、知識や経験が必要になる。それを覚えたら、過剰なまでの身体能力は必要ないって」


「あ~、覚えゲーか~」


「まぁ、そんな感じ」


 魔法を使って攻撃するから、戦士みたいにギリギリでかわして攻撃する必要がないみたい~。相手の攻撃方向をおおよそ予測出来たら、全力で回避したあと範囲攻撃で反撃。武器と違って広範囲だから当てやすそう~。


「近接戦闘しながら、魔法って発動できるの~?」


「範囲も広げないし、距離も伸ばさないから、使い慣れた魔法なら問題ない。難易度が高い魔法は、さすがに遠距離から使うしかないよ」


 そういって立ち上がり、土埃を払う蒼奈。訓練に戻るっぽい~。


「じゃあ、行ってくるね」


「は~い。がんばって~」


 手を振って見送ってから、チュリアさんの所に戻った~。もうしばらく庭の手入れをしたら、お昼ご飯のお手伝い~。

 エルフの目は純粋な魔力の塊に近く、ほとんどが気体で構成されています。ピクシーなど妖精の国出身の妖精は、さすがに体が気体ではないため、エルフの目ほど純粋な魔力で肉体を構成していません。

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