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あちーぶ!  作者: キル
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『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』333

『お話しないんだ』


『そう。あまり情が湧くのも困るからね』


 過去の話だったり、会話をした印象では、プルトさんは生き物が好きなのは間違いがなさそう。そんな彼女が龍と会話するようになれば、情が湧くのは必然かもしれない。


『なんで困るの?』


 困りそうだなとは思いつつも、会話を繋げるために質問する。


『龍の魔石を消したいとは思ってるけど、龍たちの同意を得られるとは思わないからね』


 おお、普通に答えが返ってくるとは思わなかった。とはいえ、猫としては難しい話なのでよくわからなさそうな顔をしてから胸元の毛をぺろぺろ舐める。

 しばらく舐めたあと、『魔石?』と伝える。


『そう。アカネちゃんの中にはもう無いけど、龍とか猫の友達は持ってる子が多いかもね』


『持ってる子は見ない』


『持ってるというか、体の中にあるというか。とにかく持ってる猫と持ってない猫がいるんだよ』


 猫用になんとか解説してくれるプルトさん。アーラスキャットは頭のいい種族らしいから、多分細かい説明も通じるはずなんだよね。それを踏まえて、どう答えよう。


『どっちの猫のが良いの?』


『ええと、最後まで生きていたいのなら、無いほうが良いね。事故とか怪我を無かったことにできるから』


「――ペットロスを防ぐために、長生きさせられることはあるだろうけど」


 死亡して復活したときに、セーブした時点の姿になるのだから、長生きさせようとしたらずっと長く生きられる。中央の街で見かけた犬の蘇生がそうだった。牛のようにドロップ品を目当てに殺されるような扱いもされると考えると、良いことばかりではない。


 ありがたいことに猫なので、食用としては見られていないだろうけど、それでも長生きさせるために定期的に死亡させられるのはありそうだ。


『龍も長生きさせるんだ?』


 今までの説明だけ考えると、魔石を排除するのは長生きのためって受け取れる。ただ、それだと情が湧いても問題ないが、そのあたりは猫なので深く考えない。


『長生き、とは少し目的が違うかな。龍に限ったことじゃないけど、全ての生物が魔石を持ってない状態にしたいんだ。それが本来の姿だから』


『ふーん』


 魔玉が無い状態が、本来の姿? プルトさんが最初に住んでいた、過去の世界の生物の環境が魔玉が無いのだとしたら、魔玉が無いのは本来の姿だと言える。


『全てなんだ? 大変そう』


 手のひらの肉球をぺろぺろ舐めてから、気が付いたように聞いてみる。なお、肉球の味はあまり感じないけど、匂いはさっき歩いた、焼けた砂の匂いがする。


『そうだね、全部は大変だよ。何とかなる予定だけどね』


 何とかなるんだ。全部の生物を? あれかな、ガイアとかいう謎の黒いやつ。あれを使えば、確かに全てを消すことはできそう。あれを用意したのがプルトさんたちなのかな。


 目を閉じてそんなことを考えながら、猫らしい会話は何かを思い浮かべる。何が良いかな……。


『あ! 魚! 魚はどうなるの?』


『魚は今まで通りだから、気にしなくていいよ』


 今まで通り? 魔石の除去の対象になっていない?


『魚は草と同じで、そのまま食べれるからね』


 植物と同じく、ドロップが本体そのままってことか。と言うことは、データ入力時点で細かい設定をしていない存在なのかもしれない。


 主な人型の種族や魔物に関しては、プルトさん以外が率先して入力していそう。ゲームに必要な要素だから、大量にデータ入力されているはず。


 植物は、ゲーム的には生産の素材として扱われることも多いため、効能があるものや建材は形を変えてドロップしているものもあるけど、ほとんどの植物はそのままの形状で採集できる。この違いがデータ入力してあるかどうかだろう。


 鳥類はどうなんだろう? 食用で使われていそうなのは細かい設定がありそうだ。プルトさんが私と同じ感覚なら、鳥ってもふもふして可愛いから、何種類か細かく入力がされている気がする。


 それにしても、生物の種類が増えるにつれて魔石を除去する対象は広範囲になるから、通常の方法では全ての魔石の除去はできなさそうな気がする。

 対処できるような口ぶりだけど、未来の状況は地下の魔物が生存しているから、全ての生物の魔石を除去することはできていない。どうする予定なんだろう。


 質問したいと思いつつも、うまい具合に聞き出す方法が思い浮かばない。猫のままではさすがに限界があるか。


(この時代、この距離でお話できる龍はどなたか居ますか?)


 心の中で呼びかけるように、龍の誰かに連絡を取ってみる。猫でだめなら龍にお願いするしかない。


(『我ぐらいではないか? 封印が安定しておるのは』)


 アクアちゃんが答えてくれた! 王笏を直した時期が早い彼女は、遠い距離からの会話ができるようになっている。


(エルさんも早い時期に王笏を戻したと思ったんですが、復帰まで長いんですね)


(『あやつは場所が地下だったからな。我とは魔力の濃度が違うのであろ』)


 山の頂上に封印されているアクアちゃんは、他の封印地と比べて土地の魔力濃度が薄い。そのため、王笏を修復した時期が早いのも相まって遠距離会話能力がすぐに回復している。


(『我を好まぬ相手の前に姿を現したところで、かき消されるような気がするのではないか?』)


(出てきた光が消されると、ダメージが入るんですか?)


(『それはないな。ただし、再出現に時間がかかるゆえ、こやつとの会話の機会を逃すことになる』)


 魔石を消そうと思っているプルトさんなら、龍が出てきたら攻撃するかもしれない。すぐ消されたら損するだけかぁ。


(私の体を仲介して会話することはできますか?)


 猫の体に入ってしまえば、攻撃もできないかもしれない。私がそれをされたら、かなり困る。


(『体の中に入ることはできぬな』)


(それなら、口の中に小さな光で入り込むことはできますか?)


(『それくらいならできそうだ。やって良いか?』)


(それで会話が可能になるなら、お願いします)


 口の中に現れたかどうか確認できない上に、口の中がどうにかなったって感触がない。落ち着かないので毛づくろいをしたら、口元が光るのを確認できた。


「ん、何だ?」


 口元が光ったのをプルトさんも確認したようで、私の顔を覗き込んだ。わざわざ口を開けて見せる気はないので、ただ見つめ返したら鼻先に指が近づいてきた……くんくん、くんくん、ぺろぺろ。割と安心できる匂いと味だな。指を噛むのは勘弁しておこう。


 舐めた時に開いた口が光って見えるのを確信したのか、口元を指でマッサージされる。無理矢理では口を開けないからね。


『その光はアカネと関係ないぞ』


「……龍か?」


『察しが良いな。なに、アカネに何かしたわけじゃないから警戒しなくてよいぞ。我にとってアカネは友人だからな』


 真剣な表情で私の口元を見てくるプルトさん。じっと見つめてくると視線を外したくなるので、もぞもぞ動き手から離れて箱の中に納まる。


「この子を操ることはないのか?」


『そういった能力はないな。察していると思うが、首輪は我が授けた。単なる会話用であって、操るような性能はしておらん』


 しばらく沈黙したプルトさんは、私の頭を撫でてくる。


『アカネちゃんは、龍とよくお話するの?』


『ときどきするよ』


「――意識はあるね」


 プルトさんが、私に確認を取る。この時点で私が意識を操られていたら、返事をすることができないって判断なんだろう。


「それで、なぜこのタイミングで? いや、自分たちの生存問題だから当然か」


『それよな。主らも我らの肉体の現状は把握しておるだろうに、それ以上を求めるのか?』


「帰還石か。あれが生み出されるのは想定外だった。おかげで計画が何十年も狂わされたよ。あれは龍が意図的に生み出したのか?」


『いや、さすがに我らもあのようなものが生み出されるとは思わなかった。生物にとって都合がよいものよな、あれは』


 帰還石、便利だもんね。ゲーム的にはよくありそうな道具だけど、現実では死亡の回避ってあり得ないからね。


 それと、計画が狂ったって話だけど、950年頃の聖女の話かな? 魔力病が蔓延して、聖女がそれを癒したって話。

 あの聖女がエリスさんだとしたら、何か目的があったに違いない。その後で帰還石の効果が発見されて魔力病が解消されたから、プルトさんたちの計画を邪魔していたのが帰還石で間違いなさそう。

 指を噛んでもいいじゃないかと思ったのですが、そこで会話が中断しそうなのでやめました。

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