『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』330
封印地の周辺は、穴だらけだった時と違って、今は綺麗に整っている。大きく穴が開いたままのもあるけれど、細かな穴は多分砂で埋まって見えなくなってるんだと思う。わざわざ穴を埋めたのかな?
「仮の小屋のような建物があるね。装備的に警備を担当していそうな人もいるけど、そうじゃない人もいたよ。現場検証にしては時間が経ちすぎているし、封印地を修復する職人さんかもしれない」
ほんの少し上空に飛んで周辺を見ていた萌黄先輩が、地上に降りて立ち入り禁止にされた封印地の様子を教えてくれた。小屋は複数あるようで、その小屋のそばには建材らしきものも幾つかあったみたい。その建材が保養地を再建するのか、小屋を新たに増やすためなのかはわからないけど、大きく広がった穴をそのまま放置はしなさそう!
「保養地を修復するつもりがあるのなら、うちらの要望も聞いてもらえそうっすね」
「さすがに修復はするんじゃないかしら? 王家保有の建物ですし」
「マーレさんの王家との付き合い方を考えると、大切な施設として長年取り扱われていたんじゃないかな」
この国にとって、あの場所は王笏が封印しているだけの場所じゃなくて、マーレさんが封印されている場所でもあるからね! マーレさんって、王家の行事や作法を色々知っていそうだから、かなり重要人物として見られてるはず!
「戻りましょうか。入場許可も無いですし、現状の把握はこれでいいでしょう」
紫帆先輩のいう通り、これ以上は何もなさそうなので街へ戻ることにする。萌黄先輩が茜を抱えあげようとしたときに、茜が片手で萌黄先輩の抱えあげようとした手を押さえた。
アカネ:なんか、猫五感に嫌な反応がある。
モエギ:嫌な反応?
アカネ:うん。なんか、見られてる感じ。
警戒しているのか、茜は地面に伏せて動かなくなった。動かしていた尻尾も、今は止まっている。
ミカン:その感じは、ついさっきか?
アカネ:モエギ先輩が空から降りたあたりで、なんとなく。今は意識したからはっきり見られてるのがわかります。
シホ:空を飛んだから、目立ったのね。
ギンガ:警備さんや魔物とは別?
アカネ:穴の方に居る人たちとは別方向。見てる感じはわかるけど、敵意があるかは私のスキルじゃ難しい。
ミカン:魔物って線も無くはないが、大抵の魔物は見張るよりも、さっさと襲うからな。
アカネ:私だけ別行動していいですか? このまま【猫潜伏】して様子を見ます。相手がみんなについていくようなら、逆に尾行して誰か確認したいので。
茶トラの柄をした茜は、砂漠の地面の色と合わせてかなり見づらくなっている。これにさらに猫潜伏のスキルを使ったら、動かない限り見つかることはなさそう。
相手が茜を見逃してギンガたちについていけば、その姿を茜が後ろから尾行することもできるため相手を特定しやすい。
モエギ:うん。色々と気を付けてね。
アカネ:はい。明日も合流するかどうかは状況を見てから考えます。
茜を抱えあげるのをやめた萌黄先輩は、服についた埃を払うような動作をしてごまかしてから立ち上がる。
茜の方を見ないように意識して、街へと移動する。せっかく茜が潜伏してるのに、ギンガが見たら意味がないからね!
周辺の気配を察知するのは、茜以外だと黄里先輩が得意なんだけど、今はここに居ないから頼ることができない。
蜜柑先輩も気配察知はあるけど、街や遺跡を想定したスキル構成だからこうった広い場所はふたりほどじゃないんだって。それでも、スキルを使って気配察知をしてくれている。近距離に接近してきたら反応ができるようにするためだ!
シホ:精霊魔法を使えば見つけられるかもしれないけど、使う行為そのものが相手に警戒させるのよね。
無警戒な状態で相手を調べられるのが一番いい。できれば、ギンガたちを尾行した後でどこに行くのかもわかれば、その後の対処もしやすくなる。警戒されて、逆にこちらが尾行していることがばれたら、相手の目的がわからなくなるかもしれない。
ミカン:探知魔法も同じだな。今は素直に街へ戻るほうが良い。
モエギ:魔物と遭遇すれば、違和感なく使えるんだけどね。
アカネ:他に気配はないので、魔物はいないです。
魔物がいれば、そっちに誘導してもらうこともできたのに!
移動速度はややゆっくりめで進み、砂漠から街道に到着したら、街道から街へ向けて進む。
アカネ:数人がそっちについていったようです。
モエギ:アカネちゃんは見られてない?
アカネ:直接監視されている感じではないですね。移動します――いや、止めておきます。ちょっと嫌な感じがするので。
シホ:無理しないようにね。動けないのなら、帰還石で飛ぶのも良いと思うわ。
アカネ:はい。王笏はシホ先輩にお願いします。
あまり良い感じじゃなさそう。茜が感知できる相手はギンガたちの方に来たけど、それでも動けないってことは、別の誰かが茜の方にいるってことだよね。
ギンガたちは、街が見えてきた! 仮に何かあったとしても、門番さんが見える範囲に居るから少しは安心できる!
街へ入り、冒険者ギルドに顔を出したけど、代官からの連絡はなかった。
「常設依頼でも見るか? 外で狩りができるなら魔法を使っても変じゃないだろ」
茜に逆尾行してもらいたかったけど、茜がいないからそれはできない。
けど、蜜柑先輩の探知魔法や紫帆先輩の精霊を使えば、茜と同じように相手の位置を遠くから把握することができる。
「この近辺で外での狩場があるなら良さそうね」
案内所の建物から出て、依頼が掲示してある建物へ移動する。その日に発生する依頼の用紙はほとんどなくなってたけど、常設依頼は木の板に書かれていた。魔物を討伐してドロップ品を持っていけばいいので、細かい契約の書類はいらない!
魔物が生息している場所を依頼の板で確認して、街からの距離を確認する。
「少し距離があるかな。朝から行くなら問題ないけど、今から行くには不自然な距離だね」
「こっちに行くなら、ダンジョンに向かう方が自然っすね。まだうちらを監視してるなら違和感を感じるくらい遠いっす」
不自然にならないように魔法を使いたいのに、行き先が不自然だと意味がない! 結局依頼を受けることなく、冒険者ギルドを離れることにする。ダンジョンに入ることも見当はしたけれど、出入りする人が多いダンジョンで、尾行をしているかどうか見極めるのは難しいってことで、ダンジョンに行く案もなくなった。
「宿屋でのログアウトなら全員消えるし、問題はないんじゃない?」
「そうっすね。ログイン時間を全員でそろえれば困ることも無さそうっす」
宿屋では、肉体を残さない状態のログアウトをするのがギンガたちの基本だから、尾行で宿屋の部屋がばれたとしても、襲撃されて危険になることはない!
「アカネに、街にいるって連絡しておく!」
「よろしくね」
アカネも集中して潜伏しているだろうから、あんまりこっちから話しかけても集中力を削ぐことになりそうなので、連絡待ちの状態で待つことにした。ゲームだし何度も復活できるから、命の危険がないからね!
ギンガ:街で待機してるよ! あとちょっとしたら宿屋でログアウトして、時間合わせてログインする予定!
アカネ:はーい、またあとで。
状況を聞きたかったけれど、我慢して会話を終えた。何かあったら連絡してくるだろうから、多分まだ隠れたままなんだと思う!
動物が識別できる色覚の数はそれぞれ違っているのですが、そこまで細かく設定すると面倒になるため、普通に人と同じように見えているとして書いてます。そのため周囲への保護色となる体毛も、人からみて保護色となるのを前提としています。




