『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』328
~~~ギンガ~~~
早めの夕ご飯をいただいてから、家を出発することにした! 泊っても良いとは言われたけど、部屋や布団の数を考えると、数人は離れた方がいいってなった! チュリアさんたちの布団を借りるわけにもいかないからね!
夕食後もまだ日が昇っていたから、すぐに移動すれば別の街にたどり着けるはず!
「シホが[ウォーターボート]使えて助かったな」
「チュリアさんに教えてもらったことのひとつなのよ。エルフとして生きるのに不自由ないように色々と教えてもらってるわね」
紫帆先輩の使う[ウォーターボート]に乗って、川の下流へと向かっている。この魔法を使うためだけに水魔法を覚えたくなるほど便利だ!
「チュリアさんは、シホ先輩の先生?」
「先生……うーん。先生としてのスキルも持ってらっしゃるですが、接し方としては、親戚の子どものような感じでしょうか。シェリマさんと年齢も近いので、まとめて教えてもらってる感じかしら?」
家族って感じなのか! ギンガの場合、ゼルザさんやカリガとはどうなんだろ。家族ってわけじゃないけど、家族のように接してくれてる気がする。そうだといいな!
「ティスメスが見えたよ!」
萌黄先輩に抱えられてじっと前を見ていた茜が、前方に向けて腕を伸ばす。ギンガも前を見ると、薄暗くなってきた空とは対照的に、明るくなっている街が見えてきた! このあたりであれだけの規模の街は、ティスメスしかない!
「この時間だとネルイまでの馬車はないだろうから、ここで宿泊だな」
紫帆先輩が街の近くの川辺に移動したので、[ウォーターボート]から降りる。蜜柑先輩の先導で街の中心に向かい、表通りにある宿屋を選んで部屋をとった。宿屋は気軽にログアウトできるのがいいよね!
「このログアウトで帰宅するからね」
「「はーい!」」
萌黄先輩の注意を聞いてから、さっと宿屋の布団の上に寝転がってログアウト!
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ぱちりと目が覚めると同時にカプセルが開く。
ゲームからログアウトすると、シープタウン内の自室に戻る。そこからさらにログアウトすることで現実側に意識が戻り、それに連動してシープの専用カプセルの蓋が開くようになっている。
設定で蓋を開くか開かないかは選べるけど、目を開けたときに周りがカプセルで覆われているよりは広いほうが気分はいいから、ギンガは開く設定にしている。
カプセルから出て、軽く背伸びをしてから、荷物を全部出して蓋を閉じ、清掃ボタンを押す。これで完了!
「蒼奈たちのが後だったね」
ほぼ同時にログアウトした茜が隣にやってきて、別のカプセルを見ている。蒼奈と茶子が入っているカプセルだ。プライバシーもあるので中を見ることはできないけど、起動中のランプが点灯している。
「落ちるときに黄金音ちゃんに連絡したから、多分もうすぐくると思うよ!」
「うん、蒼奈もそう言ってた。あ、清掃タンクどう? 私のは交換するけど」
「清掃ボタン押したからギンガのは無理かも!」
蓋の閉じたカプセルは、内部を清掃するために作動している。人の汗や脂などを浄化して新品同様に保ってくれる作業には、清掃用のタンクを、カプセルの足元にある小さな扉をあけて、内部にある差し込み口に入れる必要がある。それほど急激にタンクの中身は消費しないけど、切らさないように交換しないといけない。
タンクの中身は、学校の清掃ステーションに持っていけば補充できる。空になったタンクは部室の一角にまとめて、ある程度数が溜まったら1年生が補充をしに清掃ステーションへ持っていく。1年生のお仕事だ!
ちなみに、同じシステムの教室の清掃タンクは、学校の職員さんが取り替えてくれるから気にしなくていい。
「ギンガのタンクの容量は、まだあと5回は使えそう!」
タンクの残量を見ると、まだ少しは残っていそう! もちろん、残った状態で交換しても問題ないけどね!
「じゃあふたりのは……茶子のは交換が必要かもね」
茜と一緒に茶子の残量を見ると、確かにあと1回分しか残っていない。起動中は交換できないので、出てきたらすぐに取り換えよう。
部屋の扉を開けると、中央の部屋には紫帆先輩がいた。蜜柑先輩は自宅からのログインだからここにはいない。ギンガも、自宅学習する選択肢も考えたけど、今は通いにして良かったと思う。
「お疲れさま、キリから連絡があって、もう数分でログアウトするそうよ」
「お疲れさまです!」
紫帆先輩に挨拶をしてから、部室に備え付けのコップで水を1杯飲んで水分補給する。
コップを軽くすすいで棚に置いてから1年の部屋に戻ると、ちょうどカプセルが開くところだった。茜がタンクをもって茶子のカプセル付近にいる。ギンガのやることは、今のところなさそうだ。
カプセルから出てきた茶子が、タンクの交換――は、茜が交換してる。茶子は荷物を取り出して清掃準備してる。
蒼奈は交換の必要もなかったので、荷物を取り出しさっさと清掃ボタンを押してから、帰る準備を整えている。
「じゃあ、出ようか~」
茶子のカプセルも清掃ボタンを押したので、全員のカプセルが掃除中になった。もう帰るだけだ!
ギンガが扉を開いたままの中央の部屋からは、黄金音ちゃんの声が聞こえる。3年の先輩たちも戻ってきてそう!
荷物を全部持って、1年の部屋を後にすると、3年生は全員が中央の部屋に揃っていた。黄里先輩の2年の部屋で作業をしている様子が、開いたままの扉越しに見えた。
全員が帰る準備を整えたら部室を出る。階段を下り校舎から出て、校門をくぐり学校を後にして駅の方へと向かう。9人それぞれの距離は近いけど、各学年ごとのまとまりになって、おしゃべりしながら移動する。
5分程度で駅に到着して、黄金音ちゃんとギンガは駅に入っていくみんなを見送った。ギンガたちは、車をここに呼び出しているから、それに乗り込む。
いつも通り、車の中で黄金音ちゃんとお話しながら帰るけど、話の途中で「ギンガちゃん、気にしてる?」って聞かれた。
「うん。黄金音ちゃんがどう思ったのかなぁって」
ゲーム内で、別行動を選んだこと。ずっと一緒に行動しようって約束したわけじゃないけど、なんとなく一緒だったから、ギンガが別行動を選んだことをどう思ってるのかなって。
「ゲームだから、ギンガちゃんの好きなように遊べばいいんだよ。ちょっとは驚いたけどね。でも、うれしくもあったよ。銀華も成長してるって」
ギンガの手の上に、黄金音ちゃんの片手が重なる。
「色々気にしちゃう銀華ちゃんが出てきてるけど、大丈夫。ギンガが選んだのは間違ってないから、自分の好きなようにすればいいからね」
うん。そうなんだけど……うん。
1年生だけで過ごすときは、割と普通に過ごせる。でも、黄金音ちゃんと一緒にいると、頼っちゃうところがあって、黄金音ちゃんに負担になっていないかが気になる。
さっきだって、電車で友達と一緒に登下校したいんじゃないかとも思ったりする。ギンガが入学するまで、電車通学だったし。
そうは思っても、言葉に出すと余計に困らせるから言えない。
ただ、できるだけがんばって、自立できるようにはしたい。今回の別行動は、それもあって選択した。
茶子に話した「なんとなく」じゃなくて、黄金音ちゃんに見せるため。ギンガが頑張れるってところを見せたい。
「うん、ありがと」
心で思ってる本音は、今はまだ言えない。というか、言わなくても問題ないくらいにはなりたい。
まだ色々と甘えてることは多いけど、成長している姿を見せていけたらいいと思う。
学校にあるカプセル型のシープは、最新式ではありません。現代の学校にあるパソコンやタブレットと同じように、性能は普通程度です。そのかわり耐久性や拡張性が高く、学校用としてセットアップされています。




