『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』327
昨日の夜の間に、ホツナルさんと連絡を取った~。明日までには戻ってくるらしいから、あたしはその時に座標がわかる魔法を教えてもらうことにした~。
庭では、未黒先輩が帰ってきたサリアスさんと訓練をしている。ギンガも一緒にシェリマさんと戦闘訓練をしているから、あたしも探索魔法のレベル上げをがんばろう~。
探索魔法は無事に取得することが出来たんだけど~、まだレベルは1だから、調べられる範囲は低いんだよね~。でも、スキルと組み合わせることで見えない場所にある物もなんとなくわかるようになったから、面白くてレベルを上げ続けることにしたよ~。最初から取っておけばよかったな~。
スキル上げをしたり、書庫で調べものをしたりと、のんびり過ごす。お昼ご飯をいただいてしばらくしたころに、入り口側からざわめきが聞えたから書庫から飛び出して向かうと、茜たちが到着したみたい~。
「シホさん、おかえりなさい。お友達もようこそ」
「アカネちゃんも久しぶりだね!」
チュリアさんがシホ先輩を撫でまわして、シェリマさんがアカネを抱えあげている。茜は、最初に単独でこの家にきたんだっけ~?
全員が集まると部屋が手狭になるから、書庫の前の庭先で集まる。これからどうするかって話し合いだよ~。
「それじゃあ、しほちーとあかちゃんは向こうに行ったほうがいいんよな」
「全員が王笏を戻すために行く必要もないからね」
ネプチュンの王笏の封印地に入れる指輪を貰ったから、それを使って王笏を戻す方針になったみたい。王様に会えるナイフを貰う必要は無かったんだけど、そのための謁見が無いと王様と話して目的を伝えることもできなかったからね~。
「ナイフを消費しなくて儲かったって考えるといいっすね」
「また何かの機会に使えればいいわよね。それで、他にどなたが来るのかしら?」
「ミクもコガネも用があるでしょ? 私がいくよ」
萌黄先輩が手をあげる。未黒先輩は訓練で、黄金音先輩は解読があるからね~。あたしもついていきたいけど、ホツナルさんから魔法を教えてもらいたいから、出かけるタイミングがあわないかな~。
「ギンガがいくよ!」
誰が行こうか迷ってる間に、ギンガが手を挙げた。ちらっとだけ黄金音先輩を見ると、少し驚いてる感じの表情をした。そのあとすぐに、優しそうに微笑んでからギンガの頭をなで始めたよ~。
今まで、ふたりはずっと一緒に行動してたからね~。途中で一時的に別行動したことはあるみたいだけど、基本的にどこに行くにも一緒だったから、時代を跨いで別行動を選ぶとは思ってなかったのかも~。
「それじゃあ、ギンガさんお願いしますね。あとは……キリかミカンのどちらかかしら?」
「じゃあ、うちがいくかな。アカネだけじゃ探索も不安だしな」
「おねがいしまーす」
蜜柑先輩が茜の頭頂部を指で軽く何度か押して、茜の頭が何度か上下する。茜が何度も頭を下げているようにみえるよ~。
「これからすぐに向かうの?」
蜜柑先輩の指から逃れた茜が、紫帆先輩を見上げて話す。紫帆先輩は「そうね」と言って家の方を見た。
「多分、チュリアさんが全員分の夕食を準備してくださるから、いただいてからでも良いんじゃないかしら?」
あたしたちが集まる直前のチュリアさんは、かなり機嫌がよさそうだったからね~。紫帆先輩はチュリアさんとよく話をしているし、何をしようとしているのはわかるのかも~。
「なら、これから夕食まで各自で行動かな?」
「そうだね。私は解読の続きをしてくるよ」
「あ、コガネ先輩。それと、アオナさん。おふたりにはチュリアさんから魔法の使用方法を教えてもらうのをお勧めしますわ」
「魔法の使用方法?」
「はい。ふたりともこちらに残りますし、解読の隙間時間でも良いので話をした方がいいと思います。魔法の多重詠唱や遅延発動など、技術的なことを知っている方ですわ」
なんかすごそうな技術~! 名前の通りなら、魔法を同時に複数使ったり、詠唱後に発動を遅らせる方法だよね~。かなり便利そうかも~。
「あたしは覚えられるの~?」
「魔力操作のレベルがそれなりに必要なので、チャコさんには難しいかもね。私も魔力操作レベルが6ありますが、ギリギリ扱える範囲なのよ」
あ~、魔力操作か~。紫帆先輩も知ってると思うけど、あたしは魔力操作を覚えてないからな~。
「シホちゃんがギリいけるなら、私も使えるかもしれないのかー」
「モエギも近いレベルなんよ?」
「同じレベルだよ。神聖魔法を覚えるときについでに上がったんだけど、まだ6どまりだからね」
レベルが足りていて、覚えられるなら覚えたいよね~。戦争時代に行く予定だから、教えてもらう暇もなさそうだよ~。
「何なら、わたしと交代してもいいんよ? サリアスさんの修行も色々教えてもらってるから、後は独学で行けるはずなんよ」
「ううん。ひとりくらい飛べる人が行くほうが良いでしょ? 封印地には大きな穴が開いてるって話だから。それに、いざとなったら技術を覚えたコガネに教えてもらうし」
「あー、そうだな。教えられるかどうかわからないけど試してもいいかも?」
3年の先輩は3年の先輩で話し始めて、2年の先輩を見るとそっちでも話をしている。
会議は終わりかな~って思ったから、そのまま茜の背中に乗っかる。もふもふしてるし、サイズもちょうどいいんだよね~。
「アオナは、ここで魔法訓練だよね~?」
「うん。後は解読の手伝いかな」
この家に残る組として、蒼奈とこれからどうするかを話し合ったあとで、ギンガを見上げる。
「ギンガは、どうして移動組に入ったの~?」
「なんとなく! でも、ここでギンガができることも少ない気がしたから!」
なるほど~。ギンガのスキル関連は調べものに向いてないから、本の調査するよりは王笏の方へ向かった方がいいのかもね~。
「アカネって、貰った指輪は人の姿じゃないとだめなんだよね~?」
「うん。さすがに猫に役職はつけないからね。シホ先輩も同じ指輪を持ってるから、私は猫のままでもいいとは思うけどね」
「戦争時代だけど、体毛は変える?」
「あー、どうしよ。念のため変えておこうかな」
戦争時代では、アカネは中央の街に飛ばされたことになってるからね~。体毛を変えれば別の猫に見えるんじゃないかな~?
試しにと体毛を変化させる茜。背中から飛び立ち全身が見える位置まで移動して見下ろすと、白猫や黒猫に変化するだけでかなり印象が変わったのがわかるね~。
「三毛猫まで変わると、印象がかなり変わる!」
「環境に合わせて、保護色になるのは強い」
「あ、そういう使い方もあるか」
気が付いていなかったみたいで、蒼奈の指摘に茜が頷く。すぐ近くの草陰に入り込んで、黒や灰色に体毛を変えて試している。
「そもそも猫だから、どこに隠れても見つけにくい」
「気が付かないよね~」
「チャコもサイズが小さくて隠れやすいし、隠れ家を使えば見つからないんじゃないの?」
「猫ってのがポイントなんだよね~。どこにでもいるから意識から外れるでしょ~? 妖精は珍しいから、外を飛んでると注目されて印象に残るんだよね~」
よほど猫が好きじゃない限り、そこら中に猫がいるこの世界で隠れた猫を特定するのは難しいよね~。それに、まわりから注目もされない上に体毛を変えられるなら、誰かを追跡しても相手から見つからなさそうだよ~。
しばらくは、どんな場面で体毛変化が有効かを話し合い、その後は調べものに参加をする。ホツナルさんの書棚にあった動物系の本を茜が読み漁ってたよ~。
尾行する側の体毛が変化するのは、人間で言うと好きなタイミングで一瞬で服を着替えているようなもの。性別の見分けもつきにくいため、追われる側は見た目で看破するのは難易度が高そうです。




