『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』325
~~~チャコ~~~
ふたつのグループに分かれた後、あたしたちのグループはイオの街に移動するよ~。ホツナルさんの書庫にある未解読の本を、黄金音先輩に見てもらうんだよね~。茜たちが少しだけ文字の読み方を見つけたから~、解読が進むかもしれないと期待してるんだ~。
「最初の頃と比べて、ネルイとティスメス間はかなり交通量が増えてるね」
「輸送には向かない地域って話だったんよな」
そういえば、そんな話があったかも~。ティスメスの下流のトリスカ、ネルイから海へ向かう街道を進めばトリスト。それぞれ四角形のような位置関係だけど~、トリスカとトリストはそれぞれの街の距離近い上に、お互いの国を流れる川が街のすぐそばにあるから~、馬車輸送より川輸送のが沢山運べるってことで、利用者の数はトリスカ・トリスト間の方がよく利用されていたんだよね~。
それが、プレイヤーにとって時代移動が可能なダンジョンが発見されたことで、ネルイの利用者が一気に増えたから~、ティスメスとネルイの間を走る馬車の数がかなり多くなったんだよ~。
「馬車が増えても、妖精割引が有効なのは助かるよ~」
ピクシーを馬車や船に乗せるときは、割引や無料になることがこの世界の常識なので、新しい路線でも関係ない。今回も無料で乗せてもらっているけど、お礼にお馬さんに妖精魔法をかけて幸運を与えている。やっぱり真面目に働くお馬さんに[妖精のいたずら]をかけても、魔法が悪い結果になることはなさそうだね~。
ティスメス到着後は、船に乗ってイオに向かう。未黒先輩と黄金音先輩は[ウォーターボート]が使えるけど、運転に集中するよりは船にのってのんびり進んだ方が楽なので船を利用するよ~。
馬車を降りてから船に乗るまでの間にほとんど時間が無かったので、今回は出店とかで食べ物を買う余裕はなかった~。その代わり、ちょっと大き目の船を選んだおかげか、船の中で飲み物を売っていたから、それを買うことにしたよ~。買うといっても、あたしは無料でもらえたりするんだけどね~。
小さなコップを差し出して注いでもらう。これ炭酸だ~! この体になって初めて飲む炭酸だから、どうなるのか楽しみ~。
……ちょっときつい。泡が大きすぎて口の中が落ち着かないよ~。炭酸飲料はヒト型サイズにちょうどいい飲み物なのかもね~。
お店の人にお願いして、炭酸の無い普通の飲み物をお願いした。甘い香りのハーブティーをいただいて、ひと口飲んでようやく落ち着いたよ~。
「炭酸は無理だね~。泡を抜いてからじゃないと飲めないかも~」
「炭酸の良さが全部台無しになるね!」
炭酸メロンジュースを飲んでいるギンガの鞄に座る。この船の上では実験ができないけど、どこかで炭酸をある程度抜いた弱い炭酸ジュースを作って飲んでみようって話をしながら、自分たちの座席に戻ったよ~。
船の外を眺めていると、途中にある龍の封印地が見えた~。観光地でもなんでもないから、目立った施設もないし、知る人ぞ知るって場所なんだよね~。誰か知り合いがここで活動していないか目を凝らしたけど、封印地近辺にいる人は見かけなかった~。
大きな船だからか、小型船よりは途中下車で乗り降りする回数が少なかった。大きな街を中心に停泊してるんだろうな~。
あたしたちは一番上流のイオの街まで行くので、乗り降りする人を眺めながらのんびりと船旅を楽しんだよ~。
イオの街に到着。船を降りる人の多くがエルフだな~って眺めながら、あたしたちも降りたよ~。ここからは細い川を[ウォーターボート]を使って移動することになった~。未黒先輩の運転で川を移動するんだけど、ルートを覚えてるみたいで迷うことなく最寄りの川辺までたどり着いたよ~。
「こんにちは~」
「こんにちわ!」
川辺から最短距離でシェリマさんの家の前まで移動し、玄関で声をかける。パタパタと音が聞こえて扉が開くと、シェリマさんが出迎えてくれた~。
「こんにちは、上がってください」
いつもと同じように家に上げてくれて、いつも座る席まで案内してくれる。あたし用に妖精用の椅子も用意してくれたので、そちらへ座る。この時代は蜜柑先輩とギンガが初対面なので、お互いに自己紹介をした。
今はシェリマさんしか家にいないようで、ホツナルさんだけでなくサリアスさんやチュリアさんも出かけているのだとか。
シェリマさんに、今回はホツナルさんの書斎の文字を確認しに来たと伝えたら、好きなように入っていいとのこと。
「シェリマさんだけ家にいるって、珍しいんよ」
「時々あるんですよ。イオの議会で、大人の自由参加ができる日があるのです。住民として自由に発言できるので、多くの大人が行きますね。あ、叔母さまは別件で出かけているため、帰る時期はわかりません」
叔母さまってのは、ホツナルさんのことだね~。家だと叔母さまで、外だと師匠って呼び方をしているって聞いたよ~。
「子どもは参加できないの~?」
「話を聞きに行ったり、意見を求められたたら答えられますけど、投票権はありませんね」
ちゃんとした議会っぽい~。あたしとしても、現実の議会を見るのは退屈そうだし、発言も何を言えばいいかわからないから、大人がやってくれるならそれでいいかな~って思うよ~。政治に興味を持たなきゃな~っては思うけど、なかなかね~。
「それじゃあ、書斎に行きましょうか?」
「お願いします」
シェリマさんを先頭に、家の裏手から庭に出て、離れの書斎へ向かう。いつ見ても綺麗な庭だな~。
「庭の手入れって、大変なの~?」
「お母さまが植物魔法で管理していますね。大変かどうかはわかりませんが、週に1度ほど魔法をかけるために庭を回っています」
あ~、やっぱり手入れは必要なんだね~。エルフの庭だから、童話みたいに植物が勝手に整えてくれるてわけじゃないのか~。
「植物魔法は、シホちゃんが覚えてたよね」
「お母さまがシホさんを気に入ってるのですが、そういうところがお母さまと共通しているのかもしれませんね」
シホ先輩はチュリアさんからエルフの料理を色々習っているって言ってたんだよね~。エルフとしての花嫁修業してるのかな~?
そうこうするうちに、書斎に到着。中に入って、前にホツナルさんから紹介された本棚の前まで真っすぐにすすむ。
「これがあの本だよ~」
文字の読めない本棚の前で手を広げて紹介する。黄金音先輩は「失礼します」と本を1冊手に取ってページをめくる。
「解読スキルが少しも役に立たないね。チャコちゃん、動物の本はどれ?」
「これ~」
動物の絵があった本の背表紙を触る。黄金音先輩はその本を取り出して手元に寄せる。
「……[アイテムボックス]」
黄金音先輩は、時空魔法を取得した蒼奈から譲り受けた時空魔法の本を取り出して魔法を唱える。まだ覚えていないから、魔法を使うのに本を必要としているんだよね~。
「……何ですか、その魔法」
シェリマさんが興味津々で黄金音先輩の手元の魔法の本を見つめる~。目の前で見たら、気になる魔法だよね~。
黄金音ちゃんが時空魔法について軽く説明をして、アイテムボックスの中から本を取り出す。これは、茜が図書館から手に入れた動物の本。
「私もまだ覚えてないから貸し出しはできないけど、ここに居る間に使ってみる? 書き写しても良いと思うよ」
「ぜひ! お願いします!」
時空魔法の本を受け取ったシェリマさんは、書斎の戸棚から紙とペンを取り出して書き写し始めた。そういえば、シェリマさんは魔法の本を書き写すことができるって言ってたかも~。
「すごい。かなり抵抗される」
魔法の本を書き写すには、元の本に魔力を通して、専用のペンや紙にも魔力を乗せて書き写さないと書けないんだって~。本の種類にもよるけど、時空魔法の本はかなり手ごわいみたいで、ペンを持った手がずっとプルプルと振るえてるよ~。
「んぐぐぐぐ――ふっ! はぁ……はぁ……はぁ……。書けなくは……なさそうです……ふぅ……」
文字にもなっていない、線がひとつ引かれただけだったけど、これ書くだけでもかなり大変っぽい~。写すことができないと、線すら引けないんだって~。
これ、書き写すのにかなり時間がかかりそう~。
炭酸の泡のサイズが0.5mmらしいので、茶子のサイズだと体感5mmほどになります。それらが口の中で一斉に泡が発生することを考えたら、飲むことは難しいでしょうね。




