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あちーぶ!  作者: キル
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『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』319

「薄い紙を使う理由は、主にふたつ。下に重ねた文字や絵を写し取るか、重ねたことで記述することなく情報を追加すること」


 蒼奈が地図を本にあてると、本に書かれていた文字がほんのり透けて見えるくらいには薄い材質の紙に描かれていた地図だった。

 もちろん縮尺が違うから、綺麗に重なる部分はない。


「情報の追加は難しいよね。その紙が重なってた本が無いんだから、探しようがない」


「多分だけど、写し取っただけなんだと思う。情報を追加するのであれば、海岸線のような図だけにはならずに、国名とか書くのが普通。この地図は白地図だから、追加情報としての価値は薄い」


 教会の地図は、前の世界を表した世界地図ではなさそうだ。とはいっても、完全に別物ではなく、地図の一部を切り取ったものと考えて良さそう。


「この海岸線部分の一部が当てはまるだけで、全体としては違う。他の地図にも当てはまりそうなところがありそう」


「前のページに戻って、順番に比べてみる?」


「本を最後まで見てからにしよう。世界地図があるかもしれない」


 世界全体の地図があれば、比べやすいかもしれない。本を最後まで見るべくペラペラとめくる蒼奈。

 地図を見ててわかったことは、全く知らない地図は、それが全体を表しているのか、一部なのかがわかりにくいってこと。文字も読めず縮尺もわからないため、島なのか大陸なのかが判断つかない。

 結局、本の最後まで見ても世界地図がどれなのかはわからなかった。小さな島が点在している地図も幾つかあったけど、それが世界地図かどうかの判断がつかない。色々な島が散らばっている世界かもしれないし、ただの島が集まった地域の地図かもしれない。


「次は比較だね。一応、3か所はそれらしいのがあった」


 本の地図と教会の地図を見比べようってところで、蒼奈は既に共通している箇所を見つけていたらしい。

 その図が載っているページを開いて比較すると、確かに似たような場所があった。3か所とも注意深く確認したところ、場所は一致している可能性が高い。


 最初に見つけた場所と、新たに見つかった3か所を合わせて、教会の地図は4か所が一致した。

 それを踏まえて、教会の地図を眺める。


「本の地図はもっと国があるけど、教会の地図は残り3か所。世界全体が書かれてるわけじゃなくて特定の国の一部だけが切り取られたんだね」


「うん。この世界のように、元々隣り合ってた国同士だと思ってたけど、どうやら違うらしい」


 このゲーム世界の地形のように、円形だったとまでは思ってなかったけど、それぞれの国同士はかなり近いのだと思ってた。けど、本の地図を見る限り、別々の場所にあった国が選ばれているようだ。


「元々は帝国が分裂して作られたって歴史の本に書いてあったから、くっついてると思ってたよ。不可侵条約とか結んだんだっけ」


「帝国となる前は各地域が独立国家だったかもね。帝国に併合か植民地化かされて、離れる機会を待ってたのかも。帝国が分裂しても、お互いの国力は均等に分かれるはずもないし、弱い国同士で手を取り合ううちに強い国も条約を締結せざるを得ない状況になったのかも」


「帝国って、なんて名前だったっけ」


「アステロイド帝国」


「あー。星になり損ねたかー」


 天体に関係するアステロイドと言えば、アステロイドベルト。小惑星帯って授業では習ったけど、アニメとかゲームで遊んでると話には出てくる用語だ。

 小惑星も星と言えなくもないけど、イメージとしては星じゃない。キラキラ光ったり大きさが大きいのが星だと思う。

 アステロイドベルトは、惑星になりそこなった小惑星や岩が集まってる場所だから、そういう意味では分裂してしまった帝国の名称としては合っている気がする。


「名前って、ちゃんと意味があるんだね」


「全部がそうとは思わないけど、主要なものの名称は意味がありそう」


 そうはいっても、それぞれ検証するにはすごく時間がかかるから、気が向いたときにこうして本や人から情報を集めるだけで良いのかも。


「……やっぱり、ガイアって言葉に意味がありそう」


「だろうね。元となるものが何かはっきりわからないけど」


「キャラ作成時の女神が、そのままここで大地の女神として採用されただけとは思えないかなぁ」


「どこかで調べてみる必要があるね――残りも発見。7つ全部確認できた」


 話をしながら調べものを続けて、教会の地図と対応するすべての場所を見つけることが出来た。

 7つの国すべてが、隣接している様子はない。そのため、お互い近いのかどうかもわからない。それに本に描き込まれている地図に対して、それなりの面積を教会の地図が占めている。1つ例をあげると、本に描いてある地図が島のように描かれている場合、同じ海岸線が描かれた教会の地図の縮尺を考えると、島の面積に対して5~6割の規模の面積を占めている。


「正確な面積はわからないけど、その土地からすると大きな国だね」


「その地域の中心的な国家だと思う。それに、この世界全体としても主要な国じゃないかな。選ばれなかった他のページ見て」


 蒼奈が他の地図が載っているページを開く。何枚か開いてわかったのだけど、選ばれなかったページの地図は細かな島国が多い。細長く大きな地図もあるけど、全体としてはさほど広くないように思える。


「この世界、主要な大陸が7つだったんじゃないかな。その中で中心的な国が、僕らの知っているマーキュリのような名前の国家なんだと思う。この地図、それぞれの国家を集めたんだろうね」


 教会の地図を改めて見る。これがプルトさんたちが暮らしていた、本来の国の形か。海岸線が広く簡単に判断できた国が4つで、海に面した箇所が少ないため見つけにくかった国が3つ。

 地図上では見つかった国とそうでない国が、上手いこと上下に分かれてる。

 ――もしかして、ゲーム内の国名と、元の国の国名の位置を合わせて描いたのかも。そう考えてよく見れば、円形に位置を揃えているような気がしてくる。


 見つけにくかった3つの国は、海岸が少なく内陸や山岳を主とした国だから見つからなかったと考えると、ゲーム内のマアズやサアターンに該当するかな? あの国は採掘や放牧など、山間部での産業が主だからあり得る。

 国の並び順だと、3つの内もう片方はマーキュリかヴィナスだけど、山が多いのはヴィナスかな。マーキュリも山はあるけど、平地も多い。


「このどれかがマアズかサアターンだよね」


 地図を猫の手で指す。


「そうだね。……いや、そうか。前の時代と今は、国名が同じなんだよね」


「うん。影の記憶でも同じだったよ」


「それじゃあ、この本の地図の中に書かれているこの文字って、マアズって書かれているかもしれない。文字数も少ないし、文字が書かれた位置が地図の中央なら国名の可能性が高い。この文字、拾い上げて集めておこう。後で役に立つ」


「あ、解読か」


 この本に書かれている文字は、全く読めない文字のようで、学者が読めるように色々と調べている最中らしい。

 読めないけれど、写本は世の中に出回っているようで、エルフのホツナルさんが何冊か自分で写して自宅に保管している。


 そのホツナルさんの書庫の中に気になる写本があったため、内容を知りたいのだけど未知の言語だから読むことが出来ない。

 黄金音先輩の解読スキルを当てにしているけれど、何も手掛かりがないため解読も機能するかどうかわからなかった。


 それが今回、少ないとはいえ固有名詞を確認することができた。これは解読に大きく影響があると思っている。

 そもそも、影の記憶ではプルトさんたちが話をしている内容を聞き取ることが出来た。ゲームだから勝手に翻訳されているかもしれないけど、言語としては近い性質があるんじゃないかな。


 言語が近いなら、共通の単語があると思う。これまで発音もわからなかったものが、今回のこれがきっかけで発音と文字の関係が読み取ることができるようになれば、他の単語も文字を見て発音できるんじゃないかと思う。


「念のため、7か所の地図周辺の単語も全て拾い上げよう。上手くすればコガネ先輩の翻訳で文章が読めるかもしれない」


「ここの本が読めないのは残念だね」


「さすがに宝物庫の本だからね。機会があればいいんだけど」


 会話をしつつも、できるだけ素早く単語を写していく。この部屋に居られる時間も限られてるから、早めに終わらせよう。

 頭痛や肩の痛みで、話を書いている最中の休憩が多くなり書く速度が極端に遅くなったのですが、どうもキーボードがフルサイズのために体が左にねじれているのが原因のようです。テンキーレスなど、文字を打つキーが正面に来るようなものを買う必要がありそうです。

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