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あちーぶ!  作者: キル
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『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』316

 砂兎宮殿を出て、石で作られた屋根がかかった屋外の廊下を進む。王様と謁見する場所はまた別の宮殿なんだって!

 その宮殿に向かうのは、謁見するメンバーだけ。他の人は残ってもらってる。

 ドレスの裾は地面に擦らないように、一緒に移動するメイドさんに持ってもらっている。それなら、謁見する宮殿で着替えれば良いのかと思ったけど、そういった場所じゃないらしい。


 宮殿内に壁で囲われた場所があるんだけど、その場所が今回謁見する黒龍宮殿だ! 遠目に見ても他より警備が厳重そうで、特別な場所って感じがする!


 屋根のある廊下は、黒龍宮殿の真正面に続いていなくて、正面側ではあるんだけど左側から入るようになっていた。真正面は広い通路になってたから、式典とかで使われるのかも!

 屋根の廊下を進み宮殿の壁に近寄ると、壁に設置された扉を門番の人が開き、歩みを止めることなく壁の内側へ入ることが出来た。


 壁の内側は、外と違って植物がどこにも無かった。見通しは良く、歩く場所以外は細かな石が敷き詰められていた。石も綺麗に整えられていて、誰かが上を歩いたような跡はなかった。


「防犯が十分されてるんよ」


 明るい赤色のドレスを着た未黒先輩が周囲を見渡す。未黒先輩の服装は、胸を強調する服が多いけど、今回はしっかりと隠していて清楚な感じに見える!


「隠れる場所もないし、足跡も残りやすそうだね」


 黄金音ちゃんは、一番正面に立つから白地に金糸の、かなり豪華なドレスを着ている。リボンやレースが、この中では一番に目立っていて綺麗! ティアラのサイズも、この中では一番大きいんじゃないかな?


 これだけ綺麗に石が敷き詰められていると、上を歩いたらくっきり足跡が残ってすぐに侵入がばれそう! 試す気はないけど、音も鳴るんだと思う!


『毎朝この石を整える庭師がいるので、異常があればすぐにわかるようになっています』


「少人数ならそうですが、戦争のような大規模な侵攻は防げないんじゃないかしら?」


 鮮やかな黄色のドレスを着ている紫帆先輩。上半身はすっきりしたデザインだけど、スカート部分のリボンやレースがかなり豪華な作りで、お姫様っぽい!


『戦争でここが防波堤になったのなら、既に負けています。この国の防衛線は街にあります』


 この宮殿は少人数の侵入者への対策を重視しているようで、戦争のような多くの人たちが攻めてくることを防ぐのは想定していないみたい。


 戦争があった場合、基本的に街の部分で受け止める都市らしい。

 他の国がどうなのか思い浮かべる。

 マーキュリは城の場所と街の場所がある程度接しているけど、城の西側は崖で、北側は防衛のための施設が整っている。

 マアズも街の中心から離れているけど、城単体で籠城ができる。あとはどうなんだろ?

 ジュピィタって森林に囲まれているから、王城の位置が分かりにくいんだよね。

 後のお城は調べてもいないからよくわからない。草原だらけのサアターンは、どんなお城だろう?


「この宮殿は周囲の全面を街で囲んでいますね。それに、住宅に使われている材料も石が多く使われているから、かなり頑丈そうです」


 鮮やかな水色のドレスを着た黄里先輩! マーキュリ王国のカラーが水色だから選んだって言ってた。出身国のイメージを崩さないよう全体的にバランスを取ったデザインになっている! けど、背中のリボンはしっかりと主張していて、かっこいい黄里先輩がものすごくかわいくなるのがいいね!


「この都市を建造したときって、マーレさんの考えも入ってない?」


『当時の王族に質問をされたので答えましたが、私の意思は入っていません。採用するしないは彼らにゆだねていました』


 マーレさんはマーレさんで、ある程度距離を取って接していたみたい。料理長やメイドをすることで、重要な判断を決定する立場にはならなかったのかも! それでも意見を求められたくらいだから、頼りにされてそう!


 話をしている間に、先頭を進むメイドさんが扉の前で立ち止まった。私たちの方を向いて、立ち位置や並び順を調整している。


「この先が謁見室となります。先ほどと同じようにお願いします」


 扉付近にいるメイドさんが、全体に向けて指示を出す。先ほどっていうのは、歩く訓練のときに、謁見室に入る順番やどこまで中に入ってどこで止まるのか、礼儀作法はどうなのかを教えてもらったことだ!


「マーレ様は、アカネ様をお願いします」


 頭と首、背中と尻尾にもリボンをつけられた茜がメイドさんに抱えられている。尻尾のリボン程度なら、普段からつけてもいいと思うんだけどな!


『私は迎える側じゃないのですか?』


「はい。アカネ様がいればマーレ様もやらか――猫と共に来たと伝わりますから」


『ん? まぁ、そうですね。猫と触れながらの謁見もいい経験です』


 メイドさんは、アカネをマーレさんに預けてから、扉の横へ移動する。入るのは先導なしで、黄金音ちゃんを先頭に進むように教えてもらった!


 扉が開いたので、予定通り中へ進む。

 謁見室は結構な広さだった。バスケットコートくらいあるかも!

 中には何人もの人がいたけど、人数を数える余裕はない。とにかく失敗しないようにしないと!


 入り口から真っすぐ進む。止まる場所は、床のタイルの模様が目印だ。黄金音ちゃんは正面を向いて歩く役割なので、タイルを探して止まる場所を教えるのは後ろの未黒先輩と紫帆先輩の役割だ。

 先頭の人は視界の端でタイルを見つつ前を向いて歩くから、本来はかなり難しいんだけど、ギンガたちはパーティー内で会話ができるからそれができなくても大丈夫!


ミク:後5歩程度なんよ。

コガネ:了解。


 黄金音ちゃんが停止位置に止まって、それに合わせてギンガたちも止まる。姿勢は軽く頭を下げた状態で待機。他国の冒険者なので、膝をつく理由はないからね!


「皆様、お顔を、あげてください」


 何処からか聞こえる合図の言葉で、顔をあげる。「面を上げい!」じゃないんだね。


「陛下。こちらが、この方々が、献上した品で、ございます」


 ゆったりとした服装の男性がふたり、肩幅以上もある大きなトレーをそれぞれ持って、正面の豪華な椅子に座っている王様みたいな人に掲げる。あの人が王様かどうかは名乗ってくれないのでよくわからない!


 王様は、片方のトレーに乗った紙を手に取って眺めている。その紙を元のトレーに戻すと、別の女性が小さなトレーを持って王様の横に移動をして掲げた。

 王様はその小さなトレーから新たな紙を手に取り、眺めた後で紙が載っていたほうの大きなトレーにその紙を移す。


 事前に聞いていたけど、ふたつの大きなトレーは、片方がオリハルコンとミスリルが乗せられていて、もう片方には正式な鑑定書類が乗せられている。女性が持ってきたのは、ギンガたちがその献上品で何を望むかが書かれている。


「この者たちへ、功績により、王家の短刀を預ける」


 王様は、短くはっきりとした声で王家の短刀をギンガたちへ渡すことを宣言した。これで間違いなく受け取ることになった!


 王様の宣言を受けて、ギンガたちは頭を10秒間下げる。これも練習通り! 式典は事前の練習が大切だ!


 頭をあげた後は、また別の男性がトレーをもって黄金音ちゃんの前に移動をした。トレーの上には木箱が乗っていて、それを黄金音ちゃんが両手で手に取り、箱を掲げつつ軽く頭を下げてから近くに来ていたメイドさんに預ける。

 あの箱に短剣が入っているんだって!


 この後は退室をする。もう一度深く礼をした後、先頭から横にずれて後ろを向き、出入口へ真っすぐ進む。部屋を出るときに礼はしない。それすると集団で謁見するときに出入口が混乱するので、出口に向かう前の礼が最後の礼となる。


 前から順に退室をするので、ギンガが正面になった。深く礼をして、横にずれて後ろを向く。そのまま、ゆっくりと出口にむかって移動!


 ギンガが外に出たところで、後ろの扉が閉まる。緊張した!!

 今回は謁見用のドレスを着ていますが、本来は冒険者の姿のままで謁見をします。そのため、謁見の手順は求められても礼儀作法はそれほど厳格ではありません。礼をする場面でも、カーテシーは必要ありません。

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