『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』313
~~~ギンガ~~~
「謁見は明日の放課後でいいんよ?」
「時間的にそれがいいかな」
謁見の時間を自分たちで決められるため、返事をする前に相談をしたところ、残りのゲーム時間を考えて後回しにすることにした!
最大7日遅らせることができるから、7日後でお願いをする。それまで王宮で生活するかについては、この世界で数日ログインしないからお世話されることもないし、断りを入れておいた。王宮の生活はちょっとだけ気になるけどね!
「それでは、また7日後にお願いします」
『お待ちしております』
王宮の入り口付近までマーレさんに案内してもらい、手を振ってお別れをした。人の生活に入り込んでいる龍ってのも面白いね!
「それじゃあ、どこか適当なところでログアウトしようか」
「初期時代だから、多少気を使うんよな」
戦争時代だと、王都のログアウトは広場という選択肢が取れるんだよね! 帰還石が普及してるから、人がいきなり消えたり現れたりするのも、王都の復帰地点では普通の光景なんだ! そのおかげで、屋台や露天などが中央を陣取ることなく復活する人のために広めに空間が作られている。ヴィナス王国は壁で囲われているから、特に有名だよね!
その点、帰還石を利用することができない初期時代は、人がいきなり消えたり現れたりするような現象は普通は起こらないため、いきなり消えたり現れたりすると変な目で見られることもあるんだよね~。
裏路地過ぎず、人通りも多すぎない場所を探してログアウトをする。人から見られないようにするのは無理だけど、多少気は使いたいよね! プレイヤーによってはあんまり気にしない人もいるみたいだけど。
~~~
朝目が覚めて、シャワーを浴び、朝食を取った後で制服に着替える。私服でも通っていい学校だけど、学生らしさがあるので、好んで制服を着る。制服はデザイン違いが数種類もあるので、それぞれ好きなのを選んで着ることになっている。
「今日もこれかな」
複数並んでいる制服からひとつ選んで袖を通す。1年の友達3人が着ている制服に材質やデザインが近いので気に入っている。入学当初は黄金音ちゃんが着ている制服に近いのを選んでたけど、しばらくしてからこちらに変えた。
玄関に向かい、セキュリティーチェックの光が緑色なのを確認してから靴を履く。無意識に光砂粒子を動かし玄関扉を開けて外に出る。黄金音ちゃんと一緒に中学の頃に植えたブルーベリーの木を横目に庭を通り抜けて駐車場まで移動。自動運転の車に乗り込み、行き先を押すと、そのまま動き出して門を抜ける。
「おはよう」
「おはよう」
最初の行き先は黄金音ちゃんの家。合流して黄金音ちゃんが車に乗り込んだのを確認してから、学校へ向かう指示を出す。
黄金音ちゃんは1年と2年は電車通学をしていたけれど、ギンガが入学してからは一緒に車で通学してくれるようになった。ギンガとしては、まだ自宅周辺を歩きたくないから、この方が助かる。
車の中で黄金音ちゃんと会話しているうちに、元気が戻ってきた。最近は、学校に行くのも苦にはならなくなってきた。今の高校に中学時代の同級生がほとんど居ないのも理由だと思う。
入学当初はギンガを心配していた黄金音ちゃんも、今ではそういった感じが薄れてきた気がする。克服……成長している感じがしてうれしい。
学校に到着したら、車を自宅に戻して校内に入る。校舎に入ってからは教室が違うので、黄金音ちゃんと別行動になる。これも、最初はギンガの教室まで黄金音ちゃんが連れて行ってくれたけど、今は普通にひとりで向かう。
とはいえ、教室に入っても誰かと会うわけじゃないから気軽な感じ。廊下ですれ違う知らない人を気にすることなく自分の教室に向かうことができたので、そのまま自分専用のカプセルに入り込む。
~~~
……今日の授業終了。3人は――蒼奈だけ既に終わらせたみたいで、部室に居るってメッセージが残してある。返事をしてから部室に急ごう!
~~~
「私は天ぷらの卵とじにしようかな」
「僕は、たっぷり野菜の出汁巻き卵」
「あたしは、すき焼きの卵とじかな~」
「ギンガは、濃厚ハムエッグトースト!」
部室で蒼奈と会話をしてたら1年が全員そろったから、カフェテリアに移動して一緒にランチを食べる!
今日は卵フェアだったようで、普段の料理に加えて卵料理が沢山あった! 注文して受け取った料理を見ると、ずいぶん卵が使われててまっ黄色だ!
「卵って、1日にどれだけ食べていいんだっけ?」
「常識の範囲なら制限ないんじゃない? 朝昼晩と食べることもあるし」
「いつの間にか食べてるよね~」
「おやつにも入ってるからね!」
受け取った料理をテーブルに置いて着席する。
ギンガの頼んだ料理は、山型食パンにハムと卵が落としてある。それだけだと普通のトーストっぽいけど、トーストの厚さが2枚切りくらいある分厚さで、中がほんの少しだけくりぬかれている。そのくりぬかれたパンの部分は、トーストされた状態で小さく横に細く切られて並んでいる。
メニューには1斤丸ごとのもあったけど、それほど食べられないから半分のを注文した!
「ギンガの、変わった感じだね」
「どう食べるの~?」
「わからない!」
ナイフとフォークがついてきているから、これを使ってどうにかして食べるのわわかるんだけどね!
「フォークでトーストされたパンを刺してから、ディップして食べるんじゃない?」
パンの横には、食パンの中身みたいなものが小さく切った状態でトーストされて並んでいた。
「これか!」
「あ~、なるほど~」
細く切られたパンをフォークで突き刺して、ハムエッグの上に乗せる。卵が半熟なのか、すぐに黄身がとろけて白身と混ざり合い、フォークのパンにとろりと絡みつく。
それをこぼさないように少し顔を前に出してパクリと食べる……おいしい!
「何か、甘くておいしい!」
「卵って、どうやってソースにできるの? そのまま温めると固まるよね」
「調べてみる……ミルクとかコーンスターチを入れるってある」
「見た目は溶き卵っぽいのに、水っぽさが無いね~」
「滑らかなクリーム感があるね」
パンを刺したフォークの先端にハムをさらに突き刺して、一緒に食べる。卵ソースの甘さとハムの塩味がちょうどいい感じの味になってる!
くりぬかれたパンの白い部分は、底までくりぬいていないようで、少しだけ分厚めの土台が残っている。ディップ用のパンを食べきったら、ナイフで切って食べるんじゃないかな?
茜は、卵とじの天ぷらをご飯に乗せながら食べている。卵がふわふわでおいしそう。
蒼奈は、分厚い出し巻き卵に野菜が沢山入っていて、思っていたより豪華そう。
茶子は、茜と同じようにご飯と一緒に食べている。茜が天ぷらの種類ごとにご飯の上にのせて食べているけど、茶子はすき焼きをスプーンで一気に沢山掬ってご飯の上にかけている。こっちは丼ものに変えてる感じだね!
「そういえば、ギンガの方は謁見だっけ?」
「うん! このあとログインするとすぐかも!」
「初期時代だから、パッと帰還石で飛ぶわけにもいかないしね~」
「間に合うかどうかは、時間次第だね」
部活内で情報共有もしてあるので、お互い何をしていたかなんとなくわかっている。
廃墟時代にマーレさんが居たのは嬉しいし、ひょっとしたらアクアも同じように街の地下に居るかもと思うと、会いたくなる。返事がなかったときは悲しかったから。
「猫枠で入れたらいいんだけどねー」
謁見の人数制限に猫は含まれていない。茜はその枠を狙ってるみたいだ!
「茜が王族と会えるようになった猫の元祖だからね~」
「間に合わなかったら、謁見が終わるまで猫カフェで過ごすからね」
「そこに寄る時間があるなら、謁見に間に合うんじゃないかな」
ディップするパンがなくなったから、パンを切って食べる。味が染みておいしい!
「ギンガ、ちょっとだけパンの染みた所もらっていい~?」
「! いいよ!」
現実の話はあまり触れてないので、光砂粒子という謎の物質がありますが、話には影響しません。重力に作用する、日常で使う補助具のようなものです。




