『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』310
杖をあの場所から移動することはできなかった~。完全に固定されているようで、押しても引いてもびくともしないんだよね~。
そして、会話ができるのもあの場所限定で、あたしが手を離したら声も聞こえなくなった。
『しばらくはここで眠って過ごしますよぉ』
杖を外に持ち出すと逆に危ないってことで、マーレさんとは一時的にお別れすることにした~。この部屋の封印によって、ガイアから守られてるかもしれないからね~。
部屋を出る前に、杖についている、糸から石に変化したところを蜜柑先輩と蒼奈が鑑定をした。
詳細はわからないけれど、魔力を伝える効率がよさそうな石で、魔法を使用するための杖としての役割を大きく向上させる性能を持っているんだって~。
「消費MPが大幅に減らせる」
「規模の拡大は容易になりそうだ。詠唱の短縮は関係なさそうだから、遠距離から大規模魔法を使うのに向いている性能してるな」
細かい消費MPの計算はいろいろあるみたいだけど、単発の魔法を使うより効果範囲を拡大することに優れているみたいだね~。
マーレさんとお別れの挨拶をして、この部屋から移動する。帰還石を使ってマアズに移動する予定だけど、この部屋で使用すると封印がどう作用するかわからないから、外に出てから使うことにした~。
「外に出たら、街を少し探索していいですか?」
帰還石が転がってくる祠から地上に向けての長い上り坂の途中で、蒼奈が紫帆先輩にお願いをしていた。
「いいですけど、何を探すのかしら?」
「王都の破壊の痕跡を調べてみようかと」
「[メテオストライク]の攻撃よね?」
「主に破壊された理由はその魔法だと思いますけど、それが使われた理由が見えたらいいかなと」
「理由ね。探す対象は何か決まってるのかしら?」
「もしかしたら、大規模な魔物に襲撃された痕跡が見つかるかもしれません」
「魔物の襲撃~?」
「襲撃した魔物を撃退するためにメテオストライクが使われ、結果的に王都の建物が壊れたのかもしれません」
蒼奈はごく普通に、当たり前の感じで話をしている。蒼奈の中ではそう考える理由があるのかも~。
「アオナ、どうしてそう思ったの?」
既に猫の姿に戻ってる茜は、萌黄先輩に抱えられながら、あたしと似たような疑問を蒼奈に聞いた。普段過ごすのは猫の姿のが良いんだって~。
「最初に疑問に思った……ううん、最初は疑問にすら思わなかったけど、この王都で最初にキリ先輩に会ったとき、魔物と戦闘になった。そういう世界だから当たり前だと思ったけど、生物が消されるこの時代にそれは普通じゃない」
「戦闘になってたね。一応、地上に魔物が居ないわけじゃなかったけどね。水場とか」
「はい。僕も生き残りはあり得るとは思ってました。ただ、下の祠の、帰還石が転がり落ちる穴とその構造を見てから、別のことが思い浮かんだんです」
龍の肉体から生まれて、下の祠まで転がり落ちて、そこからさらに下の穴へと落ちるというのが、帰還石の流れなんだよね~。
「落ちた先。現在は地下の大きな空洞ですが、その落ちた帰還石はどうなっているのか。帰還石が落ちた縦穴には、所々にタイルが張られていたことから、元々は綺麗に整備されていたのだと思います。また、杖のある部屋へ向かうために、縦穴同士が下の方でつながっていた構造だったと思います」
縦穴の一部には、綺麗なタイルがいくつか残っていたんだよね~。上り下りするための梯子とかは残ってないけど、人が通過する前提で整えられてたのかもしれないな~。
「穴のタイルが綺麗に整えられていた当初、縦穴の底の空間も綺麗に整えられているはずなので、落ちた帰還石はその整えられた空間に落ちていたのだと思います。本来は杖の部屋に行くための通路や空間だとは思いますが、落ちた帰還石はその空間をプールとして使っていたのでしょう」
一瞬、水泳のプールかと思ったけど、溜め込むとかの意味か~。
蒼奈がプールがあったと考える理由は、戦争時代に戦争で帰還石が消費されていることからみたい~。
帰還石が作られるのは中央の魔石みたいだけど、そこで作られた帰還石は、手足などが封印されている部屋に繋がる通路に向けて6方向に転がって、転がった先にある祠へ到達するみたい。
戦争時代の戦争で消費された、帰還石に含まれた魔力は、龍の魔石に戻り再度帰還石として製造されたために、戦争時期では沢山生み出されているはず。
もし帰還石を回収するのがあの祠だけなら、残り5か所へ分散した帰還石は回収できないから~、戦争時代に配布する帰還石の量が先細るんじゃないかと思ったんだって~。だから帰還石の回収地点は、祠じゃなくて全ての箇所とつながっていそうなプールなんじゃないかと思ったらしい~。
「別の祠に行っても構造は全く変わっていなかったので、地下のつながり方は6箇所全てが同じはずです。それを踏まえてですが、現在は地下のプールがありません。何かの理由で壊れたのでしょう。理由はともかく、壊れた地下通路は、洞窟の天井全体を巻き込んで崩落したのではないかと思います。大量の帰還石と共にです」
あたしが下に降りたときに見たのは、巨大な空洞の上に広がる、大きな岩盤の天井だった~。龍の肉体の封印って規模が大きいから、かなり広範囲に広がってるんだよね~。
その範囲の天井が丸ごと下に落ちたら、底の方はかなり大変なことになるかも~。
「地下洞窟の魔物が、落下してきた天井の岩盤にぶつかって死亡したのではないでしょうか。その際、一緒に落ちた帰還石が魔物の体に接触していたら、帰還石の作用で復活したかもしれない。もちろん、地上に運ばた上でですね」
そういうことか~。街に攻撃魔法を使わないといけないほどの魔物があふれることって何事かって思ったけど、帰還石の復活地点ならそういうこともあるかもね~。
「範囲が広いので、地上へ来た魔物の数も相当いたはずです。それに、僕が知る限り地下の魔物はかなりサイズが大きい魔物でした。僕が最初に遭遇した魔物も、体格は良かったので、もしかしたら地下で死亡した魔物と遭遇したのかもしれません」
魔物のサイズは、魔石に蓄えられた魔力が多ければ多いほど大型化して危険になるんだよね~。
王笏が壊されて地下の魔力が外へ放出されない世界だと、地下にはかなりの魔力が溜まっていたのかもしれない~。
「メテオストライクの前に、魔物が暴れた痕跡があるかもしれないのね。ええ、調べてみましょう」
螺旋の坂道を登り切って、地上へ向かう階段を上がる。石で蓋をされた部屋から外に出て崩れた街を見渡す。
隠れる場所は沢山ありそうだけど、魔物が突然飛び出てくるほどの場所じゃなさそうだよね~。蒼奈が最初に遭遇した魔物も、どこかに潜んでいたんじゃなくて地下から突然現れたって方が説得力はあるよ~。
「魔物の痕跡を探すなら、中央広場が良いよね。帰還石の復帰地点なので、一番被害が大きいんじゃないかな」
黄里先輩が中央広場を眺めなら探索場所を決めた。全員が外に出てから、歩いて中央広場へ移動する。噴水どころか、周辺の家もほとんどメテオストライクっぽい巨大な穴で壊されているから、見ただけでは魔物が壊した痕跡って探すの難しいかもね~。
「メテオストライクと言っても、全ての面を攻撃しているわけではないので破壊箇所に隙間があります。そこを見ていきましょう」
萌黄先輩とあたしは、空から建物の屋根や、瓦礫で先へ進みにくくなっている路地裏を優先して探索するよ~。さすがの萌黄先輩も茜を抱えての探索はしてないようで、別行動をしてるね~。
地上は探索スキルのレベルが高い蜜柑先輩が中心になって行動している。精霊魔法を探索に使える紫帆先輩は、自由に行動してもらった方が本当は良いのだけど、迷子になると困るので集団行動になっているよ~。
「チャコちゃん、次はあっちに行ってみる?」
「は~い」
萌黄先輩に呼ばれて、探索場所を変える。空組は数が少ないんだし、できることを頑張ろう~。
暑すぎて疲れたのか、気が付いたら寝ています。話を書きながら気が付いたら1時間居眠りをしていました。そのうち休みを入れた方がいいかもしれませんね。




