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あちーぶ!  作者: キル
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『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』301

アオナ:外は夜になったようです。

キリ:朝まで時間進める?

アオナ:朝にするのは座標の調査後でお願いします。夜に光った方が方角を決めやすいですから。


 地上では、地下で調べた座標を元に同じ場所を特定する。特定した座標から掘り始める場所を起点に、中央への方角を調べる。そのときに、中央の座標で魔法の光を用意すれば、かなり離れた場所からでも調べる方向が見やすくなる。夜であれば、さらに光が目立つので、今のままの方が都合がいいみたい。


「それじゃあ、行ってくるね」


 地上に行ったふたりのことを考えていたら、萌黄先輩は黄里先輩からアストロラーベを受け取って軽く浮き上がる。私はずっと抱えられたままだ。


 萌黄先輩は帰還石が転がってくる穴の縁に手をかけると、私を肩にのせてから翼を畳んで細い穴を登っていく。しばらくすると、広い空洞がある部屋に出た。ここが龍の体の一部が封印されていた場所か。


 萌黄先輩は私を抱え直すと、迷うことなく空中に飛び上がり壁の一か所へ向けて飛行する。壁際で速度を落とした先に見えたのは、さらに先へ進む入り口だった。その入り口に飛び下りると、足元を帰還石がころころと転がって下へと落ちていくのが見えた。


 帰還石って、ずいぶんな高さから落ちても壊れないんだ。そうなると、さっき下の穴へ落ちていった帰還石も、壊れずに底まで落下したのかも。


 落ちていく帰還石を眺めている間に、萌黄先輩は上へ緩く続く坂道を上る。坂を上り切った先には、先ほどと同じように広い空間に出た。違いと言えば、地面に帰還石が敷き詰められていることくらいか。


 中央を見ると、大きな石が見える。あれが龍の魔石だ。

 その魔石に向かって萌黄先輩は帰還石の山を踏み越えながら進む。萌黄先輩の足は靴までは沈むけど、それ以上沈むことなく普通に進むことができている。この空間の底が浅いのではなくて、帰還石が動く隙間もなく大量に敷き詰められてるんだろう。

 生物の中央にあることが多い魔石が正面に見えるから、今いる位置よりはるか下にこの空間の床があるだろうから、その間は全て帰還石が詰まっていてもおかしくない。


 萌黄先輩がアストロラーベを取り出して座標を調べている最中に、肩から降りて帰還石の上に降りる。コロコロと手を使って転がしながら観察をしてみても、普通の帰還石にしか見えない。実際、ここから回収した帰還石を蒼奈から貰って使っているから、機能的には問題なく使えるのは間違いない。


モエギ:座標送るねー。


 調査が終わって、結果を蒼奈たちに送る萌黄先輩。ここでの作業は終わったので、後は帰るだけだ。


「アカネちゃん、戻っても大丈夫? まだ調べたいことあるかな?」


「大丈夫です。ちょっと見たかっただけなので」


 返事をした後で、目の前でしゃがんで私を拾い上げ……ずに、目の前の帰還石を萌黄先輩が転がす。当然、手がでて転がる帰還石を押さえる。また別の帰還石を転がしてきたので、同じように押さえたりはじいたりして遊ぶ。


 しばらくそんな遊びをして、気が付いたときには両手に帰還石を抱えた私が萌黄先輩に抱えられていた。

 ふっと冷静になってから、手元の帰還石をストレージに収納して周囲を見回す。


「他の龍の肉体への入り口が、あれなんですね」


 壁面にある、入ってきた入り口とは別の箇所にある入り口らしき穴を手で示す。


「うん。前に利用したときは、王都の別の場所に出ることができたよ」


「そっちでも、帰還石が転がっていたんですよね?」


「そうだね。部屋の仕組みも、地上に出る螺旋の坂道も変わらないよ」


 なるほどと周囲を見渡して【猫五感】を使ってみると、どの入り口側でもカラカラと音が聞こえてくる。今も帰還石が転がり落ちているようだ。

 萌黄先輩に抱えられたまま帰り道の通路側に戻ってからも、帰還石がいくつか下へ転がって落ちていく様子を眺めて過ごす。


「何か気になることでもあるの?」


「えっと、落下した帰還石の行方が気になります」


「下の部屋のこと? トロッコとかで回収して利用してるんだと思うけど」


「いえ、その下の穴の先です。落ちた後、どうなってるんでしょうか」


「うーん。かなり深い穴みたいだし、さすがに高すぎて落下で壊れるか、そうじゃなければ魔石の部屋みたいに積みあがってるとか?」


「何百年も転がっていたら、かなりの量になると思うんですよね。さっきの部屋もかなりの量が溜まってたようですし、いつからあふれてるんでしょうか」


 なんとなく思っていることを話しながら来た道を戻る。空を飛べる萌黄先輩なので、2年の先輩たちがいる部屋に戻るのもあっという間だった。短い時間では結論も出ないので、あやふやな感じで話は終わった。


 その間に地上に居る蒼奈たちが方角を調べてくれたようで、地下から中央へ向けて掘り進める方向は定まった。


「穴を掘るだけなら、今回は手伝えます」


 ダンジョンの後ろにこびりついた土や岩を消滅させる作業は土魔法の出番だったけど、単に穴を掘るのであれば獣人魔法にも存在する。土魔法と違って掘った土を消滅させずに周囲にかき分けるタイプなので、ダンジョン裏を拡張する作業には向いていなかった。


「岩とかもいけるんだっけ?」


「自然の石ならできます」


 土魔法は対象が土か岩かで、使用する魔法が変わってくる。獣人魔法はその違いがないため、ざっくりと掘ることが出来る。土魔法と獣人魔法を交互に使っていけば、かき出した土が周囲に残ってもそれほど邪魔になることはないはず。


「掘り進める場所は……この部屋の壁からで良いのかしら。地下の魔物が壊した壁からやってくるかもしれないわよね?」


「部屋そのものに魔物避けの効果があるとしたら、勝手に壁を壊すのはまずいかもね」


「この穴の下を少し降りた場所から掘ればいいんじゃね? どうせ壁面のタイルは壊れてるから、魔法的な効果があったとしても消えてるだろ」


 2年の先輩が掘り始める場所を検討して、穴の中を覗き込み、掘り進める場所を決定してく。

 蜜柑先輩がロープを使って穴の中に入り、少し下がったところで土魔法を使って側面に穴をあける。穴の中をある程度広げてから、ロープを拡張した穴付近に固定して降りやすくした。


アオナ:方角がわかりました。


 地上の蒼奈から連絡がきたので、中央へ掘り進める方向が決定した。ここの穴の上を基準に座標を調べたから、穴に垂れ下がるロープ部分につかまりながら蜜柑先輩が掘り進める方向を方位磁針を使って確定する。


「この方向だな……[ディグアース]」


 進行方向に土魔法を使って穴を掘る。あらかじめ足場として作った穴は、おおよそ進行方向側を予想して掘ったため、穴から降りた時の入り口として機能しそうだ。


「掘り進める前に、一旦ログアウトしてMP回復していいか?」


 蜜柑先輩はダンジョン裏の整備のために魔法を使っていたから、完全には回復していないのかも。


「そうだね。ゲーム内時間の朝まで休憩にしようか」


アオナ:わかりました。下に降りてから僕たちも休憩するので、お先にどうぞ。

キリ:了解。じゃあ、また後で。


 黄里先輩や紫帆先輩がログアウトする。私は蒼奈と茶子を待ってから落ちようかな。


「アカネちゃんはどうするの?」


「ふたりが降りてきてから落ちます」


「そっか」


 萌黄先輩は、近くの壁にもたれかかりながら私を抱えたまま過ごしている。蒼奈たちが戻るのを一緒に待つのかな?


「それじゃ、落ちるっすね」


「はーい」


 蜜柑先輩も少したってから落ちていった。後は萌黄先輩に頭を撫でられながら過ごすだけだ。とりあえずやることが無いので【猫五感】の訓練をして過ごす。

 撫でられつつスキルを使っていると、蒼奈と茶子が戻ってきた。私がふたりと合流するのを見届けてから萌黄先輩が先にログアウト。私も少しだけふたりとお話をしてからログアウトをした。

 猫らしさのある動きは、その種族になったから反射で出ているわけではなくて、茜自身の猫としての心構えとして行動しています。NPCの猫ならともかく、プレイヤーが猫になったとして、目の前のボールに飛びつかねばならないゲーム的な制約はありません。

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