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あちーぶ!  作者: キル
369/422

『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』299

~~~アカネ~~~


 茶子がダンジョンの裏側に手を当てると、光り輝いて細かい傷が消えていった。


「妖精の国に入れそうだよ~」


 蜜柑先輩と蒼奈がダンジョン裏を掘り進めた結果、無事に妖精の国へ入れることが判明した。これで、帰還石の移動先から最寄りにある妖精の国への入り口が作られた。このルートを使えば、拠点との行き来がかなり楽になる。


「それで、王笏の場所に行きますか?」


 妖精の国のゲートを開いてもらっている間に、蜜柑先輩と蒼奈に先ほど回収した資料を見せた。もしも王笏の杖の場所へ行くのなら、全員で行ったほうが良いと黄里先輩が判断したため、こちらに合流した。

 合流したタイミングでダンジョンの裏側の発掘が終了していたため、妖精の国への開通は茶子にお願いして、ふたりに資料を渡して見てもらった。


「同じ場所にあるのなら、マアズよりはマーキュリの方が手間は省けますね」


「既に地下への入り口も発見済みだからな」


 王笏の杖が隠されている場所は、王都の地下にあった。それも、帰還石で転送される場所の地下深くに安置されている。

 王国の地下には、龍の肉体が分割して封印されている。中央に胴体があり、それを囲むような配置で頭部、両手、両足、尾の、計7分割されている。

 帰還石で転送された場所の地下は、龍の分割された封印のうち、中央にあたる胴体が封印されている。今回の杖がある場所は、そのさらに下にある神殿らしき場所だ。


 封印されている場所でさえ限られた人しか立ち入れない場所なのに、そのさらに下に杖が隠されているのだから、普通は誰も気が付かないだろう。

 とはいえ、王笏の杖を設置することが出来たのだから、当然入り口はある。

 見つけた書類によると、その入り口は分割された胴体以外の、残り6つが封印された場所の下に建てられた神殿にある隠し通路から入れると書かれていた。


 蒼奈たちは地下神殿のひとつに入ったことがあるそうだ。トロッコが置かれていて、そこには帰還石が上からコロコロと転がってくる部屋で、神殿っぽさはなかったらしい。帰還石を回収する場所として機能しているだけの場所だと思っていたそうだけど、その機能は隠し通路が見つからないようにするための偽装の側面があったのかもしれない。


「マーキュリの地下も、入り口だけは神殿のような雰囲気でしたね」


「中はそれほど神殿って感じはしなかったよね。龍が封印されているって意味では神秘的だけど」


 蒼奈と同じく、地下へ行ったことのある萌黄先輩と黄里先輩が神殿って記述に疑問を覚えている。全く同じじゃないのかな。


「見た目が神殿ではなくても、地下の仕組みは同じだと思うから、マーキュリに行っても同じように隠されているとは思います。ただ、確実なのはマアズ」


 マアズの城から見つけた図面だから、間違いなくこの地下にはあるだろう。マーキュリも同じ仕組みだとは思うけど、全く違うかもしれない。確実に見つかる方を探すか、探索時間の短縮を選ぶか。


「マーキュリ王国に行きましょうか。今の時点で杖を見つけることは重要ではないのよね。それより、マーキュリ王国がこの図面と同じ構造であることがわかれば、他の5か国も同じ確率が高くなるから、図面を入手する手間も省けると思うのよ」


「それはそうだな。この時代じゃなくて戦争時代の杖を抜いたほうが効果ありそうだし、地下の仕組みさえわかればそれで十分か」


 この廃墟時代は情報集めに来ているのに近い。龍がいなくなった状況を、この時代だけでどうにかできるとは思えない。過去を変えればこの時代もよくなるかもしれないから、実際に何か事を起こすのは別の時代だ。

 方針も決定したので、それぞれ帰還石を使用してマーキュリ王国へ移動する。



 いつもの見慣れた噴水――と言うには、魔法で破壊されているから面影しか残っていない。周囲の見慣れた建物も壊れているため、見ていてなんとなく悲しい気分になる。


「こっち」


 蒼奈を先頭に、地下への入り口へと移動する。お城へ続く坂道を進み、城内にある建物付近へと向かう。

 建物には入らず、すぐ手前の瓦礫を蒼奈が動かすと、下に降りれそうな穴が見えた。ここが蒼奈が言っていた地下への入り口か。


「上の建物が斜めに崩れて、この穴部分が露出したのか」


「地上からは完全に隠された地下ですね。あまり人が出入りすることを想定していない場所だと思います」


 穴の下に飛び下りるときだけ萌黄先輩の腕から降りて、下の部屋に到着したらまた抱えられる。こうして抱えられるのもずいぶん慣れた。

 見回してみると、古いテーブルや外された絵画など、いくつか物は残されているが使えそうなものはない。他の場所でよく見るような、武器を収納する傘立てのような棚を見かけたので、兵士としての仕事がここにあったんだろう。机や絵画があるから、倉庫ではなく詰所のような雰囲気を感じるけど、窓もないためずっとここに待機する仕事だとしたら気が滅入るかも。


 蒼奈が先頭で部屋の奥へと進み、扉の先へ進む。その先には話に聞いていた通り、金属の階段が下へと続いている。10段ちょっと降りてから踊り場で向きを変えては降りることしばらく、整備された通路に出た。


「この場所が、恐らく龍の体の一部が封印されている場所の真上」


 その後、通路を真っすぐ進んで曲がり道に出ると、今度は緩やかなカーブを描きながら下る道を進む。


「それじゃ、この通路は内側の龍の体を避けて下ってるってことだな」


「わざわざ周囲を回るように降りなくても、さっきみたいに真っすぐ下へ伸びる階段を作るんじゃだめだったのかな」


「封印の強度に問題が出るのではないかしら? この通路も封印を強固にする機能の一部になっていそうよね」


「あからさまに螺旋だもんね~」


 中央の封印された龍を避けて地下へ向かうのであれば、長い距離をとるようなこの構造は無駄が多い。物を運搬するために坂道となっているのであれば、途中で上下に移動する階段を作らずに、螺旋の道を地上まで伸ばす方が便利のはず。


 移動する通路としては遠回り過ぎるし、運搬としての用途が中途半端ときたら、この螺旋の通路はみんなの推測通り、封印の機能の一部かも。


 通路の作りを眺めると、過去に利用していた人が壊したのか、綺麗に装飾している石畳などは壊れたり外れたりしている。話に聞いた、帰還石を引き上げるときに壊れたのだろうか。


 興味深く上下左右を見ながら抱えられていると、天井や地面に穴が開いているのが見えた。封印用の通路なのに、壊れてても問題ないのかな?

 私がその穴を眺めているのに気が付いたのか、蒼奈が穴の一部を指さす。


「このあたりの隙間から地面の大穴に入れるよ」


「そういえば、アオナって初期地点がこの地下だったんだよね?」


「そう。地上で消されていない魔物は、地下に沢山いる。逃げるヒントにもなった」


 地上に生物はほとんどいないが、地下やダンジョンは普通に生物が存在する。その違いから、地下に逃げ込めば黒い影――ガイアから逃げられると予想できたそうだ。


 やがて、通路の終わりに祠が現れた。扉が石に挟まれたまま開いた状態になっているのは、前に蒼奈たちが来たときに出入口が閉じないようにしたのだとか。ここから外へ出たときは、別の出入口を利用したらしい。


「まだ普通に機能しているのね」


 部屋の中に入ると、自動的に部屋の明かりが点いた。人を感知して勝手に作動する仕組みがまだ動いているようだ。


「入り口以外は神殿要素が無いな」


「マアズは神殿のような造りをしているのかもね」


 飾り気のない壁で囲まれた、部屋と通路があるだけの空間。神殿として使われているのなら、もう少し装飾があってもよさそう。マーキュリとマアズは地下の造りが違うのかも。


「これがトロッコで、あの上から帰還石が落ちてくるのか」


「どこかに、中央へ向かう入り口があるんだよね~。さっきの資料に場所は書いてないんだよね~?」


「うん。図も簡易的にしか書かれてないから、探索するしかない。記述上では入り口があると書かれているから、マアズの地下と同じなら必ずある」


 違う国の資料のため必ずあるとはいいがたいけど、封印されているこの地下が各国でそれほど大きな違いはないはず。入り口があると信じて全員で探索を開始した。

 初期地点が蒼奈みたいに地下になった人がどれだけいるかは不明ですが、職業がヴァンパイアとしての判定で光が届かない場所になっています。蒼奈は日光も大丈夫ですが、そうでない人もいるための措置です。

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